●教えてドクター |
名古屋大学 医学部附属病院 化学療法部教授
安藤雄一 先生
がんゲノム医療が抱えている課題ですが、現在遺伝子パネル検査が適用となる患者さんは標準治療の効果が無くなって、他の治療も無い方となります。10人に1人あるか無いかと言うと、とても少ない印象ですが、実は治療が無い方にとっては、10人に1人であっても、治療につながる可能性があるというのは朗報だと思います。課題を大きく二つ挙げたいと思います。一つ目の課題は、見つかった遺伝子の異常や変化に対して効果を期待できそうな候補薬があっても、それが今の保険制度では使えない場合があることです。開発中の治療であったり、他のがんでしか承認されていなかったり、そういった制度上の問題です。治験に入れれば良いのですが、適用外の使用になる場合には色々な制度がありますので、そのような制度を使ってなんとか薬を使いたいと考えます。二つ目の課題は、遺伝性腫瘍です。がんに関係する遺伝子の変化のはずのものが、実は生まれながらにして持っている遺伝子の変化で、それががん細胞にも含まれているため、パネル検査で同時に見つかることがあるのです。これは、患者さんだけにとどまらず、患者さんの親やお子さんやご兄弟といった親族の方にも関係します。ゲノム情報は個人情報ですから、こういった情報をどのように管理していくか、どのように伝えるかといった点が問題になります。そういった遺伝子を持っていると全員ががんになるわけではなく、がんになりやすいという性質という意味なのですが、その患者さんや親族の方にとっては重要な意味を持っています。がんゲノム医療を行う病院には遺伝カウンセラーといって、カウンセリング専門の方がいらっしゃいますので、そういった方にカウンセリングをしていただくこともできます。