健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年9月29日

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●教えてドクター 
★9月のテーマ「強迫症」

名古屋大学大学院 医学系研究科 精神医学分野 准教授 
木村宏之 先生

抗うつ剤による薬物療法と認知行動療法との2本柱で申し上げましたが、きちんと治療しても10年で6割位の方は治癒し、4割の方が再発しています。治療は苦しいですが、再発した4割の方には諦めずに治療を続けて欲しいというのが私たちからのお願いです。もし治療を途中で止めてしまうことがあっても、症状がまた出てきたらなるべく早く受診していただきたいです。「治療を中断してしまったので申し訳ない」とはあまり思わずに、元々診てもらっていた先生に受診するのが良いと思います。その先生とその患者さんとの今までの関係性の中で、その患者さんについての理解が一番深いことが多いからです。近い将来、診察でなくスマートフォン等で、心理社会的な治療が受けられるような時代が来るでしょう。精神科というものに抵抗感があっても、スマートフォン等の使用により身近な形で患者さんに治療が提供できるのではないかと期待しています。日本では、精神疾患の治療を受けることに、敷居が高くなりがちですが、その敷居が少しでも低くなれば良いかなと思います。実際に精神科受診をためらう方が多いですが、治療を受けることは大切です。迷われた場合は、勇気を持って足を運んでいただければと思っております。
 
医療コラム ~データが裏付ける医療の進歩
論説室 後藤 克幸

日本の医療の進歩を裏付けるデータが先月発表されました。がんと診断された患者さんの3年生存率が72.1%、10人中7人にのぼっています。そして5年生存率でも66.1%、3人中2人にのぼっています。これは、がんと診断されても、まだまだしっかりと人生と向き合いながら長く生きられる時代に入ってきたことを表しています。この調査は国立がん研究センターが全国でがん治療を行っている、277の病院の患者さん56万人あまりの膨大なデータを分析した結果です。5年生存率のがんの部位別の統計を見てみますと前立腺がんでは、5年生存率は98.6%、女性の乳がんも92.5%、大腸がんは72.9%、胃がんは71.6%ととても長く、年々のびています。生存率が向上している要因としては、もちろん治療技術の進歩が挙げられます。それプラス健康診断やがん検診への一般社会の方の関心が高まりと、検診が普及していることも大きな要因です。検診でがんを早期発見し、早期治療に入ることがとても重要です。それを裏付けるデータもあります。早く見つかって早く治療した場合の生存率をみてみましょう。今回発表されたデータの中で、食道がん全体では5年生存率が44.4%とあまり高いようにはみえませんが、第1期(初期)の段階でがんが見つかった患者さんでは5年生存率が80.9%です。肺がんについても肺がん全体の5年生存率は40%あまりなのですが、第1期(初期)の段階でがんが見つかった患者さんの5年生存率は81%です。早期発見がいかに大切かを改めて確認できる調査になっています。医療の進歩は日本人の平均寿命ののびにも貢献しています。日本人の平均寿命の最新データも先ごろ発表されましたが、女性が87.3歳、男性が81.2歳で共に7年連続で過去最高を更新しました。終戦直後の昭和22年の平均寿命は女性が53歳、男性が50歳でした。日本は今や素晴らしい長寿国となったわけです。その上で今後の課題を見てみましょう。平均寿命から病気になったり要介護で寝たきりになったりする時間を引き算した、健康寿命が注目を集めています。厚生労働省によりますと、健康寿命は現在、女性が75歳、男性が72歳ですから平均寿命との間には10歳前後の開きがまだあります。健康寿命を平均寿命にどんどん近づけていくことが課題です。そのためには生活習慣病の予防や、高齢者が生きがいを持って働けるような環境や様々な支援策が求められています。年を重ねても元気に歩いて美味しい物を食べて働けるうちは、生きがいを持って働く、そうした社会がこれから実現していくと素晴らしいと思います。
 
 

 
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