健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年9月8日

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●教えてドクター 
★9月のテーマ「強迫症」

名古屋大学大学院 医学系研究科 精神医学分野 准教授 
木村宏之 先生

強迫症の患者さんの症状には、不安が高くなって繰り返される、どうしようもない考えである強迫観念と、不安を軽減するために何度も同じ行為を繰り返す強迫行為という二つの種類があります。具体的に言いますと、不潔恐怖と言われる「自分のいる世界が汚いのではないか?」あるいは「外から不潔な菌が入ってしまうのではないか?」といった不安を感じる症状があります。これはどなたにもある不安ですが、その不安が極端に高まってしまいます。また、強迫的洗浄と言われる、何度も体を洗ってしまったり、何度も洗濯をしてしまったりする症状もあります。さらに、不潔恐怖以外にも侵入恐怖と言って「誰かが自分の中に入ってくるのではないか?」といった不安を感じる症状があります。また、不安の高まりのため自宅の施錠を何回もしたり、火の元を何回もチェックしたりする確認行為に時間をついやす症状があります。他にも加害恐怖といって運転中に「人を轢いてしまったのではないか?」とか「人に危害を加えてしまっているのではないか?」という不安の症状もあります。そのため何度もその場所に戻って実事故が起こっていないか確認することになります。このような確認行為やその他の行為が、1時間以上に及んでしまい、その人の生活に支障を及ぼすことが強迫症の診断基準の一つになります。このような確認を家族に代わりを強く求める症状もあります。こうなるとご本人もご家族も大変疲弊してしまいます。
 
●スマイルリポート ~地域の医療スタッフ探訪
谷崎由美子 先生 (おばた駅前調剤薬局 薬剤師)

★力を入れて取り組んでいる事
現在精神科の門前薬局に勤めています。メンタルの薬、精神科の薬と聞くと、「飲むのが怖い。」「一度飲み始めたらやめられなくなるのでは?」という思いを持たれる方が多いようです。心の病は多くの場合、薬を服用することで改善がみられます。安心して納得して服用していただけるよう、薬についてきちんと説明することを心掛けています。心の病の症状は様々です。今気になって苦しんでおられる症状をお聞きし、なぜそのような症状が現れるのか、薬がどのように効くのかを説明しています。また心の病は血圧のように数値化できないので、薬の効果が得られているのか不安に思われる方が多いです。患者さんのちょっとした変化に気づき、お声がけするように努めています。薬のことだけでなく心の負担等の話も聞いて、早く回復されるよう少しでもお役に立てればと思っています。

★心に残るできごと
開局して間もなく、大学に通う就活を控えた男子学生が来局しました。抗うつ剤と安定剤が投薬されていました。いつものように抗うつ剤の特徴として、効果があらわれるのに時間がかかる事を説明し、服用当初吐き気や食欲不振等、消化器症状が現れますが、薬に慣れれば数日でそういった症状も無くなることも説明しました。すると「そうだったんだ!」と言われ、「実は以前、抗うつ剤を初めて服用したところ、ひどい吐き気があらわれ、何が起きたのかわからなくなり、不安になりパニック症状まで引き起こし、救急車を呼びました。それ以来薬を飲むのが怖くなり、受診もできなくなってしまいました。副作用について何も説明が無かった。説明を受けていればパニック発作までは出なかったかもしれなかった。治療も続けられたかもしれない。」と悔やんでおられました。しかし当薬局の説明がきっかけで薬への不信感は無くなりました。薬の変更があれば、前の薬とどのような点が異なるのか?医師はこのような効果を期待しているのでは?等と話し合いながら治療を続けていきました。その後明るく元気になられ、「助けてくれてありがとう。」とお礼のお手紙をいただいた時はとても嬉しかったです。

★今後の課題
心の病は脳が関係しています。脳の働きの乱れにより現れるようです。この乱れを整えることで症状が改善します。ストレスの多い現代、脳も疲れて働きが乱れやすくなっています。決して気の持ちようでは改善されません。心の病になると物の見方が否定的になるようです。「自分は駄目な人間だ。」「同僚や家族に申しわけない。」と自分を責める気持ちも出てきます。離職や離婚あるいは自殺といった最悪の事態を招く恐れもあります。気になる症状があれば、症状が軽いうちに受診し、治療を受けて早く良くなっていただきたいです。
 
 

 
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