●教えてドクター |
名古屋大学医学部 薬剤部長
山田 清文 先生
アルコール依存症の生涯経験者は日本では約100万人、さらには依存症ではないけれども問題のある飲酒者は590万人以上と推定されています。しかしそのうち治療を受けている患者さんはわずか5万人程度と推定されています。アルコール依存症の患者さんの場合はどうしても自分のことを軽く考えがちということがあるかもしれません。しかしお酒を毎日大量に飲むと依存症の問題の他に、肝炎や肝硬変等の肝機能障害、高血圧、脂質異常症、がん、認知症等の身体的疾患のリスクも高くなります。アルコール依存の疑いがある場合には専門機関を受診する必要があります。ニコチン依存に関連して、2017年の調査では日本人の喫煙率は約10%で減少傾向にあると言われています。WHOによりますと喫煙者の7割はニコチン依存症であると言われています。喫煙は肺がんや喘息、気管支炎、心臓病等のリスクを高めることが知られており、そのために多くの喫煙者は実は禁煙を希望していて実際に禁煙を試みますが、ニコチン依存のために失敗してたばこを吸い続けていると思われます。たばこを最初から美味しいと感じる人はほとんどいないと思いますが興味からたばこを吸い続けると、いつの間にか食後のたばこが美味しく感じられ、リラックスできると感じるようになります。しかし一旦そういった状態になってしまうと、禁煙しようと思ってもたばこの成分の一つであるニコチンに対する依存症から禁煙が難しくなるというのが現状です。アルコールについては、アルコールの作用から例えば気持ちが良くなったり、ストレスから解放されるような気分になったりしますが、やはり繰り返し大量にアルコールを飲み続けますと、次第に効果が少なくなり飲む量が次第に増えてきます。このように快感が得られにくくなりますのでお酒の量がさらに増えて乱用、依存症へと続きます。自分の意思ではどうにもならない状態になった場合、いち早く専門機関を受診することが大切です。