健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年5月26日

●教えてドクター 

★5月のテーマ「緩和ケア」

名古屋大学医学部 化学療法部 
杉下 美保子 先生

病気がわかってもお子さんに告げられない、またはどのように告げたらいいかと悩まれて緩和ケアチームにもご相談があるケースも多々あります。当院にはチャイルドライフスペシャリストというお子さんやご家族が抱える心の負担を軽くして治療に臨めるように支援するという専門家が3名おりますので、専門家と連携しながら対応しております。親御さんががんになった子どものためのサポートプログラムという活動もしております。その活動の中のアンケートで、「自分のせいで親が病気になったのではないか?」と誤解しているお子さんもいて、実際誰にも相談できず悩んでいらっしゃるお子さんがいることがわかりました。病気は誰のせいでもないということを正しく伝えて、理解していただくという活動をしています。がん対策の推進基本法でも、子どもの頃からがん教育を受けることの重要性や、がんに対する正しい知識や認識を深めることの大切さが強く言われております。実際、がんの患者さんへの理解や命の大切さやがんの経験者の声を伝えていくのも重要だと考えております。重要な活動だと考えておりますので、今後も継続していきたいと考えています。小学校や中学校にも専門のドクターや看護師さんが出向いて授業をする活動が広がっております。
 

●医療コラム ~身近な場所で、気軽に受けられる、開かれた「緩和ケア」の拠点を!

論説室 後藤 克幸

人生最期の時が近づいても、体の痛みや心の不安が無く、穏やかに旅立てるようサポートしてくれる「緩和ケア」は、ぜひとも充実して欲しい大切な医療分野です。「緩和ケア」は、1950年代のイギリスで、当時看護師だったシシリー・ソンダースによって提唱されました。当時の医療現場で、医師たちの主流だったがんの治療法は「がんの手術は、大きく切って、しっかり取る」「薬は、強い薬で徹底的にたたく」というものでした。しかし、ソンダースさんは、患者に寄り添う看護師の立場から発想して、「それで本当に患者は幸せなの?」と異を唱えました。「痛ければ痛みは取りましょう」「食べられなければ、食べられるように工夫しましょう」と主張したのです。

痛みは体の痛みだけではありません。心の痛み・・・不安になったり鬱状態になったりしてしまうこと。また、魂の痛み・・・死の恐怖や生きる意味への苦悩。そして、社会的痛み・・・仕事上の問題や家計・経済的な問題などです。さまざまな、トータルな痛みに対応する癒し、それが「緩和ケア」です。シシリー・ソンダースは、この新しい医療の考え方を世界に広める運動に尽力しました。彼女は、いろいろな場所での集会や医療関係者の会議の席で、「Start with people!(人々と共に始めましょう!)」とよく語りかけたそうです。「緩和ケアが、患者・家族・市民の生活の中に、当たり前の医療として根付いて欲しい」そんな願いをこめて「Start with people!(人々と共に始めましょう!)」と多くの人に呼び掛けたのです。それが、多くの人々の共感を呼んで、今では、「緩和ケア」は、世界中に広まっています。そして、「緩和ケア」発祥の地であるイギリスでは、身近な住宅街の中に何げなく、「緩和ケア」を提供するサービスセンターがたたずんでいます。

私は、イギリスの医療を視察した時に、朝、ホテルで少し時間があったので、周辺の街を散歩してみました。普通の住宅街の中に、平屋建ての品のいい建物があって、そこに「Cancer Support」という看板が掲げられていたのです。その看板にはさらに、「ここではカウンセリングが受けられます・・・家族をサポートします・・・がんに関する様々な情報ライブラリーがあります・・・痛みを緩和するための治療も受けられます・・・そして家族や子どもさんたちが宿泊できます」と書いてありました。

日本では、「緩和ケア」は、病院で受ける医療・・・というイメージですが、イギリスでは、市民が身近にアクセスできる場所で、市民に開かれた拠点として「緩和ケアセンター」が存在していました。

日本でもぜひ、気軽に立ち寄れる、身近な場所で「緩和ケア」が受けられる環境を整備してほしい・・・開かれた「緩和ケアセンター」が増えてほしい・・・と願っています。
 
 

 
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