健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年5月19日

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●教えてドクター 

★5月のテーマ「緩和ケア」

名古屋大学医学部 化学療法部 
杉下 美保子 先生

緩和ケアチームの役割としましては、痛みや体の症状の緩和、精神症状や心理的な問題、ご家族のケア、治療・療養に関しての意思決定支援、療養場所の相談、医療者への緩和ケア教育を行っています。名大病院では化学療法部に緩和ケアチームを設置しています。医師、精神科医、薬剤師、看護師、作業療法士で構成され活動しています。多職種の視点で患者さんを診察して、幅広い治療やケアを行っています。具体的には、病棟の担当医や看護師から相談を受けた患者さんを診察して、チームで相談したうえ、担当医、看護師にそれぞれの患者さんにとって、適切な治療や薬やケアを提案します。入院患者さんだけでなく、外来の患者さんの診察も行っており、退院した患者さんも外来で引き続きケアを受けることができます。最近では化学療法も外来で行うことが多くなっており、外来化学療法室の医師や看護師から、症状コントロールに困る場合に、緩和ケアチームに依頼があることがあります。患者さんの悩みや痛みというのは、体の痛みだけではなく精神的な痛み、社会的な苦痛、金銭的な不安等、多方面であります。様々な職種の専門家で支えていくことが重要です。チームでは多職種の連携を行っており、学習会等を通じて緩和ケアについて知ってもらう取り組みも継続的に続けています。患者さんの苦痛というのはトータルな痛みですので、多面的な方向から患者さんを多職種間で評価して支えていくのが重要だと考えています。
 

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

井上順貴さん(国立病院機構 帯広病院 栄養管理室 管理栄養士 )

◆力を入れて取り組んでいる事
食べて動いて元気になって退院してもらうことに力をいれています。私が担当している心臓血管外科、呼吸器外科では、医師が手術を行い、看護師がケアをして薬剤師が薬の調整をし、理学療法士がリハビリをして体力をつけて、最後に管理栄養士である我々が食事で栄養と元気をつけてもらい、退院してもらえるようスタッフ一同で取り組んでいます。当院の先生からも「食べてもらわないことには何も始まらないから、とにかく食べるように支援しください。」と普段から指示を受けています。積極的に患者さんの元へ行き介入し、食べられるような食形態や食事内容で提供できるように精いっぱい頑張っているところです。退院後は外来で引き続き栄養指導を行い、再発予防や合併症予防に注力しています。本人の生活を尊重しつつ、一つか二つ継続して気をつけていくことが重要だと思い取り組んでいます。

◆心に残るエピソード
1名とても印象的な方がいらっしゃいました。北海道というのはかなり広大な土地でして、隣町が150kmほど離れています。その隣町から救急搬送されて心臓手術をした方がいました。術後の回復があまり良くなく、なかなか食事も摂取できない状況で、本人の元に何度も足を運び介入しました。初めはゼリーを一口食べるのも精いっぱいで、ぐったり疲れてしまうような感じでしたが、徐々に食事ができるようになって退院する頃には食事をスムーズに摂取できるようになりました。当院では退院する時に必ず栄養指導を行なっているのですが、「こんなに来てくれる栄養士さんは初めて。おかげ様で良くなりました。本当にありがとう。」と言っていただき、A4用紙1枚にぎっしりお礼の気持ちを書いたお手紙をいただきました。その時はこの仕事をやっていて本当に良かったなと思いました。

◆現場の課題
いかに食べてもらうかということが管理栄養士としての一番大きな課題だと思います。やはり当院では手術の後に、麻酔の影響や傷の痛みによって、なかなか食事が上手く取れない方も少なくありません。その中で栄養が不足していくと、せっかく手術しても傷の治りが悪い、いわゆる創傷治癒不全になってしまったり、ひどい場合は縦隔炎や敗血症等といった重症な合併症を引き起こしたりし、生命の危機に関わる状況にもなりかねません。そのような合併症を防ぐために病棟のカンファレンスに参加し、患者様の情報を共有して、状態に合わせた食事を提供したり栄養剤の選択をしたりするようにしています。
 
 

 
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