●教えてドクター
★5月のテーマ「緩和ケア」
名古屋大学医学部 化学療法部
杉下 美保子 先生
私たちが日常臨床に携わっている際に、患者さんから「まだ緩和ケアの時期ではないです。」と言われたり、「緩和ケアということは、もう終末期ですね。」と言われたりすることを時折経験します。まだ患者さん側の抵抗感、医療者側の抵抗感が大きいのが現状です。WHOが出しているデータからも、諸外国と比較して日本での医療用麻薬の消費量が、まだまだ適正使用量に達していないことが示唆されています。医師の中でもまだ痛みを過小評価している場合もあるかと思いますし、患者さんの抵抗感もあるのがその大きな要因と考えています。やはりモルヒネと言われると最期の手段と思われていて、「最期ですか?」と言われることもありますし、ご家族ががんで最期にモルヒネを使って亡くなられたというお辛い経験から、ためらいを感じる方もいらっしゃいます。実際には痛みのある状態で適切に医療用麻薬を使用すると、中毒にはならないということがわかっています。また麻薬の使用量と寿命には相関が無いこともわかっています。私たち医師は痛みがある状態で使えば中毒にはならないということと、安心して安全に使えるということを患者さんやご家族にご説明し、何のために医療用麻薬を使っていくかということを説明して共有しています。医療用麻薬の副作用に対しても、様々な薬や対処法が開発されていますので、十分に対応できるようになっています。緩和ケア病棟というと「退院できずに亡くなる場所ではないか?」という誤解がありますが、実際にはそうではありません。苦痛がコントロールされて自宅療養が可能になれば、緩和ケア病棟から退院して自宅療養に戻られる場合もあります。緩和ケアは生きるための医療です。患者さんがより豊かな人生を送ることを支える医療だと考えております。学会としても全国的に市民公開講座を開催したり、メディアによる広報を行ったりして緩和ケアの普及啓発に取り組んでいます。しかしまだまだ緩和ケアに対する誤解があるという現状を認識しています。
名古屋大学医学部 化学療法部
杉下 美保子 先生
私たちが日常臨床に携わっている際に、患者さんから「まだ緩和ケアの時期ではないです。」と言われたり、「緩和ケアということは、もう終末期ですね。」と言われたりすることを時折経験します。まだ患者さん側の抵抗感、医療者側の抵抗感が大きいのが現状です。WHOが出しているデータからも、諸外国と比較して日本での医療用麻薬の消費量が、まだまだ適正使用量に達していないことが示唆されています。医師の中でもまだ痛みを過小評価している場合もあるかと思いますし、患者さんの抵抗感もあるのがその大きな要因と考えています。やはりモルヒネと言われると最期の手段と思われていて、「最期ですか?」と言われることもありますし、ご家族ががんで最期にモルヒネを使って亡くなられたというお辛い経験から、ためらいを感じる方もいらっしゃいます。実際には痛みのある状態で適切に医療用麻薬を使用すると、中毒にはならないということがわかっています。また麻薬の使用量と寿命には相関が無いこともわかっています。私たち医師は痛みがある状態で使えば中毒にはならないということと、安心して安全に使えるということを患者さんやご家族にご説明し、何のために医療用麻薬を使っていくかということを説明して共有しています。医療用麻薬の副作用に対しても、様々な薬や対処法が開発されていますので、十分に対応できるようになっています。緩和ケア病棟というと「退院できずに亡くなる場所ではないか?」という誤解がありますが、実際にはそうではありません。苦痛がコントロールされて自宅療養が可能になれば、緩和ケア病棟から退院して自宅療養に戻られる場合もあります。緩和ケアは生きるための医療です。患者さんがより豊かな人生を送ることを支える医療だと考えております。学会としても全国的に市民公開講座を開催したり、メディアによる広報を行ったりして緩和ケアの普及啓発に取り組んでいます。しかしまだまだ緩和ケアに対する誤解があるという現状を認識しています。