健康ライブラリー 2019年5月5日

健康ライブラリー / ライフ・ヘルスケア

●教えてドクター 

★5月のテーマ「緩和ケア」

名古屋大学医学部 化学療法部 
杉下 美保子 先生

緩和ケアとは重い病を抱える患者さんや、そのご家族一人一人の体や心の様々な辛さを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケアです。緩和ケアの対象はがんというイメージがあるかと思いますが、生命を脅かす病気すべてが対象です。緩和ケア病棟、ホスピス、一般病棟における緩和ケアチームの活動が広がっております。現在では様々な場面において切れ目のない適切な緩和ケアを行っております。緩和ケアはがんと診断されたその時から開始されます。学術的な報告によりますと、早期からの緩和ケアは生存期間を延長する可能性があるとのことです。早期から緩和ケアを受けた患者さんは生活の質が良くなり、心の負担も改善し、さらに寿命が長くなったというかなりインパクトのある結果がでました。実際には、2015年にがん拠点病院で遺族の方に対する調査を行わせて頂いたところ、「苦痛なく過ごせたか?」という問いに対し、半分しか「苦痛が取れた」という答えが返ってきませんでした。現実にはまだまだ痛みをこらえながら闘病してらっしゃる患者さんも多いと認識されております。
 

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

宮嶋 真理 さん
(名古屋大学医学部 化学療法部 緩和ケアチーム がん性疼痛看護認定看護師)

◆力を入れて取り組んでいる事
緩和ケアと言いますと今まではがんの患者さんのみが対象だったのですが、今は心不全など非がんの患者さんも対象になりました。また対象年齢は小児から高齢者まで広範囲となっています。痛みやだるさや息苦しさなど体の症状だけでなく、不眠や不安、落ち込みや気持ちの辛さなど様々な症状にも対応できるよう、当院の緩和ケアチームは多職種で取り組んでいます。また患者さん本人だけでなく子供や配偶者など家族関係にも注目して、地域連携患者相談センターやチャイルドライフスペシャリストなど他部門との連携を取りながら関わるようにしています。

◆心に残るエピソード
その患者さんは3人の子供さんの母親であり、かつ夫を支える奥様でもありました。徐々に状態が悪くなっていく中で、常に子供達とご主人のことを心配されていました。またその患者さんを心配されるご両親もいらっしゃいました。緩和ケアチームとしては患者さん本人だけでなく、不安を抱える家族への支援も必要と考え、ご両親やご主人との面談を何度か行いました。本人が自宅療養を希望された時には地域連携患者相談センターと協力して家族の理解や協力体制サポートなど、少しでも本人が安心して過ごせるよう話し合いを持ちました。家族の共同作業としてチャイルドライフスペシャリストの協力も得て手形によって一つの作品を作ることができました。その時の家族みんなの笑顔は本当に素敵でした。他にも患者さんは子供達に誕生日プレゼントを考えられていましたが、体力的に買い物に行く事はかなわなかったので、他の手段での買い物の手伝いをして無事に プレゼントの準備ができました。患者さんの状態が悪くなっていくにつれてできなくなることが多くなり、出来ることは少なくなっていきます。全て望み通りにすることは難しくてもその望みに近い形で叶えることができると思いました。患者さん本人だけでなくその後の家族へつながるケアにもなると感じました。

◆現場の課題
緩和ケアはがんの診断時に早期に介入することを推奨されています。そのことは医療者の中でも徐々に浸透してきています。新規依頼件数は昨年から増え1ヶ月の介入中の患者数も増加していますが、診断時からの介入については昨年度の診療実績では3%と低くて、早期からの介入はまだ少ないというのが現状になっています。また介入中の患者数の増加に伴い患者さんの状態によっては緩和ケアチームとして速やかな対応を求められますが、中にはタイムリーにかかれないこともあります。その場合は病棟など現場の力が必要になってきます。今後病棟においてタイムリーな対応ができるよう、教育や指導が必要と思われますし、その際チームとしても支援体制を整えていく必要があると考えています。
 
 

 
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