健康ライブラリー 2019年3月31日

健康ライブラリー / ライフ・ヘルスケア

●教えてドクター 

★3月のテーマ「医学会総会の市民向け企画」

名古屋大学医学部 脳神経外科 教授
若林 俊彦 先生

日本医学会総会の市民向け企画の中の、「ひろがるまち」についてお話します。日本の医療の技術は非常に優れていますので、そういった技術で発展途上国に対して貢献していきたいと思っています。その技術がどのように広がっているかを垣間見ようというのが「ひろがるまち」です。例えば日本には母子手帳がありますが、お母さんと子どもをつなぐ、この手帳の発想は日本が発祥であり、世界をリードしています。子ども達がお母さんと一緒に手帳の中に成長を記録するという技術は日本から発信されていますので、こういった物の良さを世界に広げていきたいというプロジェクトもあります。この展示コーナーではお母さんの手帳、子ども達の記録等を実際に見ることができます。各国の母子手帳を展示しています。その他、医療に関する日本のブランドが世界にどのように広がっているかを見ることができます。それはハードだけではなく医療従事者の日本での教育、そしてそれが世界にどのように羽ばたいていったかを見ることができます。また、内視鏡の技術は日本が世界をリードしているのですが、内視鏡を外に持っていくだけでなく、現地の医療従事者に使い方を教育してその地域で広めようという動きについても展示されています。さらに、様々なスポーツを体験できるコーナー、あるいは災害に対して、我々がどのように防災していったら良いかを体験できるコーナーも企画されています。是非体験していただきたいと思います。
 

●医療コラム ~医療現場の「働き方改革」

論説室 後藤 克幸 

厚生労働省は今、命を預かる医師の多すぎる時間外労働について改革を進めようとしています。医療の安全を最優先に考えた時、どのような改善が必要なのかを今月は考えてみたいと思います。

医師の時間外労働の現状は、厚生労働省の調査によりますと、年間の時間外労働が1900時間以上の医師が、病院の勤務医では10%(10人に1人)にのぼっています。年間に1900時間がどういうことかと言いますと、毎日8時間働いた上でさらに8時間以上の時間外労働を行う状況を週5日、4週間、これを12カ月行うということです。これを掛け算すると1920時間になります。こういった現状をかなり多くの医師が続けています。特に大学病院となりますと、こういった働き方の医師が88%であるという調査もあります。命を預かる医師が命を削る働き方をしています。これはどうやって改善すれば良いのでしょうか?

厚生労働省は、病院勤務医の10%にものぼる、年間の時間外労働が1900時間以上ある医師を、5年後(2024年)には0%にするという目標を定めています。厚生労働省では病院の勤務医の時間外労働の内容を具体的に分析した上で「削減可能な時間がある」と提言しています。例えば、実際の診療以外に会議や委員会の時間が多すぎるということで「会議の効率化を進めなさい」と提案しています。そのほか、外来や病棟での診療についても「医師一人で業務を行わず、他の専門職と役割を分担すれば削減できる時間がある」とも提案しています。具体的には、看護師、薬剤師、医療事務等の補佐役の人達にも業務を分担してもらえば、もっと医師の負担が減るのではないかということを言っています。

医師の仕事と一般の労働とは一緒に議論してはいけないという考えも根強くあります。公共性が高く、人の命を預かる仕事である、ということですが、働くというキーワードで考えますと、同じではないかとも考えられます。医師も、疲れる時は疲れます。問題の本質は、医療の安全の確保が一番重要であるということだと思います。医師が疲弊して医療の安全が揺らぐようでなことを私たちは望んでいません。

医療現場で、医師に負担が集中し過ぎている業務を、他の専門職の人たちにも分担してもらう「タスク・シェアリング」という考え方が重要になってきています。そのためには、医療の質やサービスの低下を招かないよう、医療チームを構成する多様な専門職全体の力量の向上が求められています。医師以外の看護師、薬剤師、その他の専門職の人達と患者家族の相互が信頼しあえるような業務分担を行うことが求められています。いかにしてそれを広げていくのか・・・今後の医療現場に求められている働き方改革の重要なポイントです。

 
 

 
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