健康ライブラリー

健康ライブラリー 2018年12月2日

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●教えてドクター 

★12月のテーマ「心不全」

名古屋大学医学部 循環器内科
室原 豊明 先生


心臓は元々ポンプ機能を有していますので、非常に強く動いていますが、従来のポンプ機能を果たせなくなった状態を、総称して心不全と呼んでいます。例えば心筋梗塞や心臓弁膜症、あるいは心筋症、不整脈といった病気の最終的な像が心不全です。現在全国に25万人から30万人くらい心不全の方がいらっしゃいます。正確な統計が無いため診断されていない方を含めると100万人近くいらっしゃると予想されます。急性心筋梗塞は心臓を養っている冠動脈という動脈が急に血栓で詰まる病気です。これに対して救急車で病院に運ばれてカテーテル治療を行い詰まった血管をバルーンで開く治療を行います。しかしながらこのような治療を行っても多少の心機能の低下はおこります。こういったことで最終的に心臓が動かなくなって、心不全になるということがあります。また、心臓の中には4つの弁膜があり、弁膜の機能は心臓の中の血液の逆流を防いでいます。この弁膜が狭くなって開放が悪くなったり、閉じきれなくなったりして血液が逆流する心臓弁膜症という病気になることにより心不全がおこることもあります。こういった病気の結果として心臓がだんだん動かなくなって、心不全になります。心臓には4つの部屋があると申しましたが、左右2つずつあります。左は左心房と左心室です。これは肺から血液を受け取って、左心室から全身に血液を送ります。一方、右側は右心房と右心室で全身から血液を受け取って、肺に血液を送ります。こういう循環を繰り返しています。心臓の動きが悪くなると、全身に血液がいかなくなるための倦怠感がでてきます。また肺から血液が左心房に戻りにくくなると息切れや咳、夜中に呼吸困難で目が覚めてしまいます。一方、右側の心臓が悪くなりますと、全身の血液の戻りが悪くなりますので、全身にむくみが生じます。
 

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

澤田 景子 さん(名古屋学院大学 教員)

<力を入れて取り組んでいる事>
現在私は名古屋学院大学で教員をしていますが、それまでは長年介護施設、病院等においてソーシャルワーカーとして支援の現場に携わってきました。その過程で子育てと介護が同時に直面するダブルケアという状況にある方達のひっ迫した姿を目の当たりにしました。少子高齢化、晩婚化、晩産化の進展によってダブルケアという状況になる方は今後増加していくと推察されます。ダブルケア当事者の方は子育てに介護、家事、仕事と大変多くの役割を担って、負担の大きい中必死に頑張っておられます。現在は名古屋ダブルケア研究会を立ち上げる等、ダブルケアやケアの複合化に対応できる支援のあり方を模索しています。

<心に残るできごと>
長年、同居の祖父を介護していたダブルケア当事者の方が話して下さったエピソードです。祖父が亡くなった時、親戚の子達は亡くなった祖父を「怖い、早く帰ろう。」と言って近寄らなかったそうなのですが、自分の子は「90年も生きてきてすごいね。今日はおじいちゃんと一緒に寝たい。」と言って、祖父の横で家族4人川の字になって寝たそうです。彼女はダブルケアを子どもの気持ちや経験を共有できたかけがえのない時間だと語ってくれました。その他にも介護が先に始まった独身の方や介護に追われる生活が続くシニア世代の人達にとってダブルケアを選択できることは、望みでもあることがわかってきました。こうした経験からダブルケアを家族の選択肢の一つとして、前向きに位置付けられるような制度や社会環境や支援の体制の整備が必要であると感じています。

<現場の課題>
ダブルケアを取り巻く環境は非常に厳しいものがあります。縦割り制度の弊害や大きな経済的負担、また相談できる場が無い、情報が手に入りにくいといったサポート体制の不十分さ、子育て世代の介護経験者が少なく孤立しやすい現状等、課題は山積しています。また仕事においても育児休暇と介護休暇を続けて取得することは言い出しにくく、なんとかやりくししているのが現実です。このような状況を改善するために一部の自治体ではダブルケア相談窓口が設置され横浜市を中心に各地にダブルケアカフェが広がりをみせる等、支援に向けた取り組みが進められています。しかしまだまだ部分的な活動であって今後はケアの複合化を見据えた制度設計、領域を超えた地域での包括支援システムの構築が必要であると考えています。
 
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