健康ライブラリー

健康ライブラリー 2018年8月5日

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●教えてドクター 

★8月のテーマ「在宅医療の最新事情」

あいち診療所 野並
野村秀樹 先生

在宅医療が注目される大きな理由の一つに、高齢化の進展に伴う患者さんの増加や病気の種類の変化があります。例えば昨年の我が国の統計では、65歳以上の高齢者の方は3,514万人で全人口の27.7%です。また病気が増えてくる75歳以上の後期高齢者の方も1747万人で全人口の13.8%になっています。高齢化に伴って患者さんの数も増えてきますが、患者さんがかかる病気は脳卒中のような後遺症が残るもの、嚥下機能が低下したり筋力が低下したりする治りにくいものや、治るために長期間のリハビリが必要なもの、あるいは進行したがんのように、治療をしても短期間で進行して死に至るもの等が多くなってきます。このような変化にあわせて病院や施設をどんどん作っていくというのは、人口減少社会の今の日本では財政的な面でもスタッフの面でも難しくなっているのが現状です。

高齢の方の場合は治りにくい病気が増えてくるということもあり、どうしても入院期間が長くなる傾向にあります。入院すると色々な生活制限がかかってきます。例えばベッドの上で安静にしているように求められたり、あるいは決められた時間に決められた食事を食べなければいけなかったり、あるいは家族との面会時間が制限されたりします。高齢者の中には、入院している間に足腰が弱って、元気に歩けていた方が肺炎は治ったが寝たきりで退院するとか、あるいは認知症の方がその症状を入院中に悪化させるということも決してめずらしくはありません。つまり入院して病気を治すということはもちろん大事で重視されるべきですが、その間に体力の低下あるいは生活の質の低下がおこりうるということも、十分考えておかなければなりません。国民の方々に、介護が必要な状況になったらどこで過ごしたいですか?というアンケートが行われております。これによりますと自分が介護を受けたい場所として、自宅もしくはそれに類する介護付き有料老人ホームと答える方が半数程おみえになります。また、がんなど治る見込みのない病気になった場合どこで最期(死)を迎えたいかということに関しても半数以上の方が自宅と回答しています。

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

皆本昌尚さん
(名古屋市認知症介護指導者、認知症ケアラボラトリーあつまるハウス駒方所長)

<力を入れて取り組んでいる事>
認知症を抱えているご本人はもちろんですが、認知症を抱えている方を支える家族の方が今、大変心身共に疲労しています。特に認知症を抱えているご本人が関わりを拒否されたり抵抗されたりすることにより、介護のサービス等になかなかつながることが出来ていないケースがあります。そういった非常に孤立した状態で苦しんでいる方の支援に一番力を入れて取り組んでいます。

<心に残るエピソード>
お一人暮らしの女性のケースです。認知症が原因で同じ物をたくさん買ってきて、それによってお金を使い果たしてしまい、生活に困っている状態に陥っていました。子どもさんがおられないという事情から、家族としては妹が時々関わる程度で、主には民生委員をはじめご近所の方がサポートしていました。人に迷惑をかけることを好まない気丈な方だったこともあり、周りの好意を受け入れられず孤立した状態に陥っていきました。ご近所からの連絡を受け専門職としてできるだけ早くとあせってしまったことがご本人にとっては無理強いと捉えられてしまい、関わり自体を拒絶されて糸口が見つからないまま介入が出来ないという状態が半年以上にも及んでしまっていました。その間も孤立が深まりご近所や外出先(お店など)のトラブルも増えていきました。原点に立ち返り本人が心情的に私たちを味方として受け入れていないのに、あれこれ進めたことが原因だったのではと考え、私たちはその方の味方になる存在なのだと思ってもらえるように、まずは本人の気持ちを聞いていこう、警戒心を少しでも和らげてもらおう、ということに全力を注ぎました。その方の頑なさは「お金を失ってはいけない」、「騙されてはいけない」、という気持ちが周りに対する警戒心を強くしていたということがわかりました。私たちに信頼感をいだいてもらえるようになってからは、色々な提案を前向きに受け入れてもらえるようになりました。今ではご自身からこのサービスを使いたいという意思を示されて、周りの方にも心を開かれて、本当に穏やかな生活を今取り戻したという状態になっています。

<現場の課題>
困難な状態に陥っている方を支援するときに、丁寧に関わるという姿勢は絶対に欠かせません。しかし忙しさに追われてしまうと、手間を惜しんで成果をあせってしまいこちらのペースで進めようしてしまうことがあります。しかし、急いだ結果が逆にこちらの都合をみすかされてしまったように、相手の方から「だったらいいわ。」と開きかけた心の扉が閉ざされ暗礁に乗り上げる事も少なくありません。当然人手も不足していて忙しいということは事実としてあるとおもいますが、自分自身が忙しい気分になってしまうと、気持ちや感情をおもんばかる心の状態を無く(亡く)してしまってることに気付けなくなると思うのです。できるだけ柔軟にその瞬間に動けるように、時間的にも精神的にも余裕を持った状態で対応できるように常に心掛けておきたいと思っています。
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