健康ライブラリー

健康ライブラリー 2018年7月29日

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●教えてドクター 

★7月のテーマ「すい臓がん」

名古屋セントラル病院 院長
中尾 昭公 先生

すい臓がんの治療は特にこの5~10年は進歩してきています。ただ治りきるというのは難しいです。今でも早期発見ができないために、手術ができるのは2割か3割と思われます。手術がうまくできた方々は術後、補助療法と言って抗がん剤を使うことにより、5年生存率がかつて10パーセント前後でしたが、今では40パーセント位まで上がってきています。かつては切除できないという症例も、最近では手術を目指して抗がん剤治療や放射線治療を行い、がんを小さくして手術しやすくし、半年後位に手術をするということもあります。これは全く新しい治療法です。それからかつては、2,3か月または数ヶ月でお亡くなりになるような症例も抗がん剤を使うことによって、1~2年近く延命が達成できるようにもなっています。名古屋大学で治療を始めた頃は転移がある患者さんに対しては、ご家族と本人は別々の部屋でお話をしなくてはなりませんでした。余命が2,3か月とはとても患者さんには言えないのでそういう配慮が必要でした。今は残りの時間に少し余裕が持てるようになりました。しかしなかなか薬では治りきりませんし、切除をうまく行いその後補助療法として抗がん剤を使うことにより、5年生存率が徐々に上がってきています。今はセカンドオピニオン外来が、名古屋でも数か所で行われています。私のところもたくさんの患者さんが訪ねてきますので、是非そういうものを利用されるといいと思います。

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

渡邉和子さん(常滑市民病院 訪問看護ステーション「きずな」 所長)

<力を入れて取り組んでいる事>
2月から常滑市民病院訪問看護ステーション「きずな」を開設しました。「きずな」のある常滑市も他の町と同じで、少子高齢化が進んでいます。病気になっても入院できる資源は限られているので、病気や障害を持った状態でもご自宅で過ごされる方が増えています。訪問看護では病気や障害を持った状態でも、利用者の皆さんが住み慣れた場所でその人らしく過ごせるように支援をしています。そんな中で私が最も大切にしている事は、利用者様の「尊厳」を守ることです。在宅医やケアマネジャーさん等、関わる人々との連携を大切にきめ細やかな対応で、質の高い看護を提供しながら、その人の暮らしを支えることができるようスタッフ一同でがんばっています。

<心に残るエピソード>
訪問看護を始めて在宅でお看取りをされた方の支援を何度かさせていただきました。その中でも「きずな」の第一号の利用者様との関わりがとても思い出に残っています。その方は病院で末期がんと診断され、手のほどこしようが無い状態でした。「最期の時をどう過ごしたいですか?」とうかがうと、「大好きな庭を見て過ごしたい。ダイヤモンド婚は絶対にやりたい。」と希望され、退院しました。自宅に帰り庭の見える特等席にベッドを置いて、ご本人、ご家族、在宅医や私たちもダイヤモンド婚を目指して、痛みのコントロールや点滴を行いながら過ごしました。そしてついに目標としていた、ダイヤモンド婚を無事に迎えることができ、ご家族一人一人に感謝とお別れの言葉をかけていました。その3日後本当に穏やかに眠るように亡くなられました。死後、ご主人に見せていただいた彼女のエンディングノートには弱々しい文字でしたが、「我が人生に悔い無し」と記されていました。

<現場の課題>
最近は在宅でお看取りを希望される方が増えています。しかし利用者様、ご家族の不安はとても大きく「やっぱり病院がいいかな」と心が揺れたりします。私のこれまでの経験の中で在宅でお看取りをするために大切なことは、アドバンスケアプランニング(頭文字をとってACP)だと思っています。ACPとはもしもの時のことを、前もって大切な人たちと話し合い文書に残しておくということです。私は覚えやすいように「あなたの心のプランです」とお伝えしています。縁起でもない話ですが、だからこそもしもの時は、「どこでどのように過ごしたいか」元気なうちから考えていいただきたいと思っています。在宅での生活は本人の選択と本人、家族の心構えが基本と言われています。私たちはその選択を様々な職種で力を出し合って支えていきたいと思っています。
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