健康ライブラリー

健康ライブラリー 2017年12月3日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 

★12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」 

名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師 
名古屋逓信病院 老年内科  
廣瀬 貴久 先生 

健康寿命については約10年というのがキーワードになると思います。男女共に健康で自立した生活ができる健康寿命と平均寿命の差が大体10年であり、この10年は裏を返せば介護が必要な状況である年数ということです。その人らしくという言葉がありますが、自立して楽しく過ごすためには、この年数が短いほどいいだろうということで「介護予防」も重要なキーワードになってくると思います。介護にいたる要因というのは高齢者の中でも前期高齢者と後期高齢者では少し差があります。高齢者でも前期高齢者の介護要因は脳血管障害の割合が多くなっています。歳があがるにつれて介護要因は認知症あるいは転倒、あるいは衰弱の割合が多くなります。特に衰弱というのは80歳以上になってくると、その割合が大きく、介護にいたる主要因となっています。 
転倒は高齢者にとって身近なことですが、転倒するとどのようにして要介護状態になるかというと、2つ理由があります。1つは頭部外傷です。転んで頭を打ち、脳障害の後遺症が残り、要介護状態になることもあります。また、転倒時に頭を打ってその場は何ともなくても、そのまま外っておいてしばらくしてから血の塊がじわじわじわじわと頭の中で膨らんできて自分の脳を圧迫してしまうことがあります。そうなることで認知機能低下が急に進んだように意識が悪くなったり、徐々に歩けなくなったり、おしっこを自分の意に反して漏らしてしまうということがあります。転倒後にこれらの症状が現れる慢性硬膜下血種という病気になっている場合もありますので、短期間で認知症、歩行障害、排尿障害が診られるようになった時は、過去に転倒したかどうかということを周囲のひとが覚えていることも診断の参考になることがあるのです。また、転倒後に要介護状態になるもう1つの理由は骨折です。骨折にも色々な骨折があるのですが、足の付け根を折ってしまう大腿骨頸部骨折という骨折があります。転倒後にその骨折を発症してしまうと大体4割位の方が寝たきりになり、その後、約1年でその1割ほどが亡くなっています。高齢者は、転倒することで自立度が落ちる可能性が高く、転倒は、高齢者の健康寿命を考える上で重要なテーマなのです。

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

及川 弘美 さん(美幌町立 国民健康保険病院 医療ソーシャルワーカー) 

<力を入れて取り組んでいる事> 
私は医療ソーシャルワーカーとして患者様やご家族の心配事等に対し、一緒に考え支援していくことが主な仕事です。業務内容の中で大部分を占めているのは退院支援です。患者様、ご家族の退院後の生活を見据え意向を確認し、院内でカンファレンスを行い目標を確認しあいます。その中で院内でできる支援を行いながら院外の介護事業所や社会資源と結び付けています。一言で言うと退院支援になりますが、その言葉は退院すること自体が目標というイメージが強いです。それだけではなく患者様が住み慣れたその地域で生活を継続できるということを目標として支援していきたいと考えています。そのためにも地域の専門職の方々ともよく話しあい、お互い患者様へ向かった支援が必要です。 

<心に残るエピソード> 
この地域で生まれ長年ここで暮らしてきた90代の患者様が入院していました。疾病により車椅子生活になってしまい、元々の一人暮らしが難しくなり施設を探すこととなりました。本当はご兄弟やお友達が多い町内で探したかったのですが、町内の施設はいっぱいで待機者も多いため遠方に住むお子様の近くの施設を探しました。施設が決まり遠方へ出発する日、同じ地域に住むご兄弟の方が「もう会えないと思うけど」と握手をしたり声をかけあったりしている姿が非常に印象に残っています。この方以外にも長年一人もしくは夫婦で暮らし続けてきても、住み慣れた自宅で暮らすことが難しくなり遠方に住むお子様の所へ行く方はいます。高齢になって見知らぬ土地へ行くことは非常に勇気や覚悟が必要だと思います。このようなことがある度に、「患者様が住み慣れた地域で生活を継続するためにもっとできたことはなかったか?」と思うと同時にその方の生活を支援することの難しさを感じます。 

<現場の課題> 
患者様は一人一人考え方や価値観、意向等が違います。そのため常にそれぞれの患者様に向き合いアセスメントを重ねる必要があります。入院から退院までの短い期間で何でも話していただける関係を築くことは非常に難しいですが、その限られた期間の中で支援をしていく必要があります。その時に忘れてはいけないことが、自分の価値観で考えるのではなく、それぞれの患者様を中心に支援を考えていくということです。相談・援助職としては当然のことですが普段の業務の中で、それができているか結果が見えづらいということもあり「本当にこの支援で良かったのか?」と自分で自分に問いかける日々が続きます。ただ退院された患者様が元気に外来に通っている姿を見たり、引き継いだ先の専門職の方に順調に過ごしていることを聞いたりすると私も嬉しくなり、仕事のやりがいを感じることができます。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報