●教えてドクター
★12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」
名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師
名古屋逓信病院 老年内科
廣瀬 貴久 先生
健康寿命については約10年というのがキーワードになると思います。男女共に健康で自立した生活ができる健康寿命と平均寿命の差が大体10年であり、この10年は裏を返せば介護が必要な状況である年数ということです。その人らしくという言葉がありますが、自立して楽しく過ごすためには、この年数が短いほどいいだろうということで「介護予防」も重要なキーワードになってくると思います。介護にいたる要因というのは高齢者の中でも前期高齢者と後期高齢者では少し差があります。高齢者でも前期高齢者の介護要因は脳血管障害の割合が多くなっています。歳があがるにつれて介護要因は認知症あるいは転倒、あるいは衰弱の割合が多くなります。特に衰弱というのは80歳以上になってくると、その割合が大きく、介護にいたる主要因となっています。
転倒は高齢者にとって身近なことですが、転倒するとどのようにして要介護状態になるかというと、2つ理由があります。1つは頭部外傷です。転んで頭を打ち、脳障害の後遺症が残り、要介護状態になることもあります。また、転倒時に頭を打ってその場は何ともなくても、そのまま外っておいてしばらくしてから血の塊がじわじわじわじわと頭の中で膨らんできて自分の脳を圧迫してしまうことがあります。そうなることで認知機能低下が急に進んだように意識が悪くなったり、徐々に歩けなくなったり、おしっこを自分の意に反して漏らしてしまうということがあります。転倒後にこれらの症状が現れる慢性硬膜下血種という病気になっている場合もありますので、短期間で認知症、歩行障害、排尿障害が診られるようになった時は、過去に転倒したかどうかということを周囲のひとが覚えていることも診断の参考になることがあるのです。また、転倒後に要介護状態になるもう1つの理由は骨折です。骨折にも色々な骨折があるのですが、足の付け根を折ってしまう大腿骨頸部骨折という骨折があります。転倒後にその骨折を発症してしまうと大体4割位の方が寝たきりになり、その後、約1年でその1割ほどが亡くなっています。高齢者は、転倒することで自立度が落ちる可能性が高く、転倒は、高齢者の健康寿命を考える上で重要なテーマなのです。
名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師
名古屋逓信病院 老年内科
廣瀬 貴久 先生
健康寿命については約10年というのがキーワードになると思います。男女共に健康で自立した生活ができる健康寿命と平均寿命の差が大体10年であり、この10年は裏を返せば介護が必要な状況である年数ということです。その人らしくという言葉がありますが、自立して楽しく過ごすためには、この年数が短いほどいいだろうということで「介護予防」も重要なキーワードになってくると思います。介護にいたる要因というのは高齢者の中でも前期高齢者と後期高齢者では少し差があります。高齢者でも前期高齢者の介護要因は脳血管障害の割合が多くなっています。歳があがるにつれて介護要因は認知症あるいは転倒、あるいは衰弱の割合が多くなります。特に衰弱というのは80歳以上になってくると、その割合が大きく、介護にいたる主要因となっています。
転倒は高齢者にとって身近なことですが、転倒するとどのようにして要介護状態になるかというと、2つ理由があります。1つは頭部外傷です。転んで頭を打ち、脳障害の後遺症が残り、要介護状態になることもあります。また、転倒時に頭を打ってその場は何ともなくても、そのまま外っておいてしばらくしてから血の塊がじわじわじわじわと頭の中で膨らんできて自分の脳を圧迫してしまうことがあります。そうなることで認知機能低下が急に進んだように意識が悪くなったり、徐々に歩けなくなったり、おしっこを自分の意に反して漏らしてしまうということがあります。転倒後にこれらの症状が現れる慢性硬膜下血種という病気になっている場合もありますので、短期間で認知症、歩行障害、排尿障害が診られるようになった時は、過去に転倒したかどうかということを周囲のひとが覚えていることも診断の参考になることがあるのです。また、転倒後に要介護状態になるもう1つの理由は骨折です。骨折にも色々な骨折があるのですが、足の付け根を折ってしまう大腿骨頸部骨折という骨折があります。転倒後にその骨折を発症してしまうと大体4割位の方が寝たきりになり、その後、約1年でその1割ほどが亡くなっています。高齢者は、転倒することで自立度が落ちる可能性が高く、転倒は、高齢者の健康寿命を考える上で重要なテーマなのです。