●教えてドクター
★12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」
名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師
名古屋逓信病院 老年内科
廣瀬 貴久 先生
高齢者の転倒予防の研究は古くからあり、20世紀の後半くらいから日本でも研究が始められていて、研究成果の蓄積があります。そのため、今日までに指摘された転倒危険因子は、50を超えると言われています。それらの転倒危険因子を大きく分けると個人的な要因と環境的な要因に分かれます。個人的な要因はバランス障害や筋力低下、内服薬の影響などがあり、環境的要因は、滑りやすい床とか暗い照明、滑りやすい靴や靴下といった様々な要因が指摘されています。個人的な要因の場合はその人の歩行能力が衰えないように対策をたてることが必要になります。最近ではフレイル(虚弱)サイクルという言葉が聞かれるようになりましたが、このフレイルサイクルは古くからある概念で、健康なお年寄りでもだんだん歩行能力と関連が強い筋肉が落ちていくことに着目して、その概念が確立されてきました。お年寄りになると筋肉が衰えるのは当たり前だと考えられるかもしれませんが、そのメカニズムは、お年寄りになると様々な理由から活動量が低下し、また様々なホルモンの分泌量の変化があって、高齢者の体は筋肉がなかなか成長しにくい環境になることが原因と理解されるようになってきました。この環境の中では、筋肉が少しずつ小さくなってきて、その人が自分の筋肉を維持するのに必要とするエネルギー量も少なくなるような状況になってきます。そのため、本人は気が付きませんが食欲自体が落ちてきて、筋肉量が多い時と比較して少ししか食べなくなります。その結果、筋肉を維持するには栄養不足になり、筋肉がさらに小さくなります。そうなると維持する筋肉が小さくなったのでさらに食べない、そしてもっと筋肉が小さくなるという負の循環で、徐々に筋肉量が少なくなると考えられています。一般的にはこのフレイルサイクルに介入するためには二つのポイントがあると考えられています。一つは栄養、もう一つは運動です。この二つに介入してフレイルサイクルの負の循環を止めることが、歩行能力に関連が強い筋肉量が落ちていくことに対する予防になり、転倒の予防につながることが期待されています。そこで昨今、全国の自治体で栄養指導を含めたリハビリ的な運動プログラムが展開されています。
名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師
名古屋逓信病院 老年内科
廣瀬 貴久 先生
高齢者の転倒予防の研究は古くからあり、20世紀の後半くらいから日本でも研究が始められていて、研究成果の蓄積があります。そのため、今日までに指摘された転倒危険因子は、50を超えると言われています。それらの転倒危険因子を大きく分けると個人的な要因と環境的な要因に分かれます。個人的な要因はバランス障害や筋力低下、内服薬の影響などがあり、環境的要因は、滑りやすい床とか暗い照明、滑りやすい靴や靴下といった様々な要因が指摘されています。個人的な要因の場合はその人の歩行能力が衰えないように対策をたてることが必要になります。最近ではフレイル(虚弱)サイクルという言葉が聞かれるようになりましたが、このフレイルサイクルは古くからある概念で、健康なお年寄りでもだんだん歩行能力と関連が強い筋肉が落ちていくことに着目して、その概念が確立されてきました。お年寄りになると筋肉が衰えるのは当たり前だと考えられるかもしれませんが、そのメカニズムは、お年寄りになると様々な理由から活動量が低下し、また様々なホルモンの分泌量の変化があって、高齢者の体は筋肉がなかなか成長しにくい環境になることが原因と理解されるようになってきました。この環境の中では、筋肉が少しずつ小さくなってきて、その人が自分の筋肉を維持するのに必要とするエネルギー量も少なくなるような状況になってきます。そのため、本人は気が付きませんが食欲自体が落ちてきて、筋肉量が多い時と比較して少ししか食べなくなります。その結果、筋肉を維持するには栄養不足になり、筋肉がさらに小さくなります。そうなると維持する筋肉が小さくなったのでさらに食べない、そしてもっと筋肉が小さくなるという負の循環で、徐々に筋肉量が少なくなると考えられています。一般的にはこのフレイルサイクルに介入するためには二つのポイントがあると考えられています。一つは栄養、もう一つは運動です。この二つに介入してフレイルサイクルの負の循環を止めることが、歩行能力に関連が強い筋肉量が落ちていくことに対する予防になり、転倒の予防につながることが期待されています。そこで昨今、全国の自治体で栄養指導を含めたリハビリ的な運動プログラムが展開されています。