健康ライブラリー

健康ライブラリー 2017年12月17日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 

★12月のテーマ「介護予防・・・たかが転倒されど転倒」 

名古屋大学医学部附属病院 地域包括医療連携センター 病院講師 
名古屋逓信病院 老年内科  
廣瀬 貴久 先生 

フレイル(虚弱)のイメージで大事なところは、フレイルは慢性の病気と違って、元気な状態に引き戻すことができる状態ということです。フレイルというのは介護状態とはいえないが、元気であるとも言えず、その中間の介護が必要となる少し前の状態と考えられています。このフレイルの状態を改善できれば、要介護に至るのを防ぐとともに、自立度を高くすることができると期待されています。具体的には栄養をしっかり摂って運動をすることで、フレイルではない自立度の高い状況まで回復できることが可能であると多くの研究で示されています。運動に関しては下肢の筋力アップとバランス能力の改善ということが重視されています。必要に応じて補助を使いながらバランス能力を改善し、下肢の筋力を鍛えていくようなことを地道に怪我無くやっていくと、いずれバランス能力と筋力はついてきます。お年寄りになっても、年齢に関係なく筋肉はつくということは最近よくわかっていることであり、積極的に安全に注意しながら運動していただくことが重要だと思います。また、栄養面では、ほとんどのフレイルと診断されるお年寄りが、栄養状態があまりよろしくないことが調査でわかっています。在宅で生活しているお年寄りもそうですし、施設にいるお年寄りはさらに悪いということもわかっています。これまで、このフレイルと診断されるお年寄りに栄養障害が存在するという事実に皆様があまり注目されていなかったことも、お年寄りのフレイルを促進している一つの要因であります。今後は、積極的に高齢者の栄養評価をして栄養状態を改善していく試みがこれからの高齢社会の課題の一つとなっています。また、食欲がなくなる原因には、フレイルサイクル以外に精神的な問題もあります。案外お年寄りには、鬱という状況が多くみられます。また、鬱もそうですが認知症があって意欲がなくなることもあります。体はもちろんなのですが、精神的に盛り立てる目的で、社会参加を促したり、その人に関わるふれあいを持ったりといった、物理的な面ではなく精神的な面でのサポートも食欲を増すことに関しては重要なポイントになっています。

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

高守里香さん(名古屋逓信病院 管理栄養士) 

<力を入れて取り組んでいる事> 
 管理栄養士として高齢者の低栄養の問題に取り組んでいます。今、社会問題にもなっていますが、一人暮らしの高齢者が増えているということが原因の一つにあると思います。まず体力的に毎日買い物に行くのが大変になります。そして1人分の食事を作るのがおっくうで食事を簡単に済ませてしまい、食事を決まった時間にせず、1日2回しか食べないという方も多くなります。食べる物も固い物が噛めなくなり、食べやすくて好きな物しか食べなかったり、味を感じにくくなり何を食べても美味しいと感じられないと訴える方もいます。加えて、若い頃肥満やコレステロールを指摘されたことがある方は、肉、卵、乳製品といった動物性たんぱく質を控えてしまう方もいて、益々低栄養になってしまいます。最近疲れやすくなって風邪をひきやすくなったとか、体重が減ってきたことに気付いたら、歳のせいにせずに低栄養を疑うことが重要です。 

<心に残るエピソード> 
外来の栄養指導で関わった患者さんが印象に残っています。当院では糖尿病の方を対象にローカーボ食の指導をしています。ローカーボ食とは糖質を制限して血糖をコントロールする食事療法です。この患者さんは単身赴任をされている50代のサラリーマンの方です。お酒が大好きで仕事のお付き合いで飲み会も多く自炊はなかなか難しいという方でした。長年カロリーと栄養バランスを重視した従来の食事療法を続けてきましたが、なかなか結果が出ずに悩んでおられました。その方にローカーボ食の食事療法をすすめたところ、3か月程度で検査値が正常値にまで改善して、大変喜んでいただけたことを思い出します。方法はとても簡単で、糖質を控えれば基本的にカロリーは気にしないで食べて良い、というもので、控える糖質は主食となるごはん・パン・麺、それらを半分または1食抜く等、患者さんの血糖値にあわせて制限する量を決めます。お酒は基本的に蒸留酒ならOKとします。ただ注意点があり、元々痩せている方や特定の病気がある方、血糖値を下げる薬を飲んでいる方は注意が必要です。 

<高齢社会の課題> 
入院患者さんで誤嚥性肺炎のため食事がとれなくなったり、入退院を繰り返したりする方が多いことです。これを防止するために当院では口腔内のケアに力を入れて取り組んでいます。誤嚥性肺炎の予防には口の中の細菌を増やさないことが重要になります。口の中を清潔にしていれば、たとえ誤嚥をしても肺炎に至るリスクは少なくなります。これは口から食べられない人も同じですので、すべての患者さんが対象です。取り組みとしては東区歯科医師会の先生と連携して、入院患者さんの歯と口腔内の審査をしています。当院の歯科衛生士さんが口腔内をチェックしてスタッフの教育もしています。こういった取り組みは、多職種のチームですすめることが重要です。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報