健康ライブラリー

健康ライブラリー 2018年2月4日

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●教えてドクター 

★2月のテーマ「アドバンス・ケア・プラニング」 

国立長寿医療研究センター 地域医療連携室長  
西川 満則 先生 

看取りの医療について語るときにキーワードとなっている「アドバンス・ケア・プラニング」という取り組みがあります。「アドバンス・ケア・プラニング」とは頭文字をとって「ACP」となります。「A」のアドバンスというのは、自分で判断できなくなったり、意思決定ができなくなったりした時に備えて「前もって」という意味です。「C」は直訳するとケアです。わかりやすく言うと、人生の最期に向けて自分が大事にしていることや、気がかりに思っていることや「この医療は受けたくないな」とか「こういうケアは受けたいな」とか自分が判断できなかった時に家族の誰にその判断をまかせたいか等を考えることがケアの意味になります。「P」というのは計画ですが、計画してそれを自分だけではなく周りの人にきちんと伝えておくことまで含めて「プラニング」といいます。わかりやすい言い方でよく言われているのが、「もしバナ」という表現です。「もしもの時に備えてあらかじめ話し合って伝えておきましょう」ということが「もしバナ」です。「もしバナ」とは「もしもの話しあい」のことです。「もしバナ」とは1回きりではなく、繰り返し長い期間をかけて行われる対話とその過程そのものだと思います。看取りに関する他の言葉と「もしバナ」との違いですが例えば「リビングウイル」であれば、どんな生命維持治療を受けたいとか受けたくないとかということを書くことが主体です。「もしバナ」の場合は継続的に対話していくという意味が加わっています。遺言というのは自分だけで書けるといイメージだと思いますが「ACP」は一人だけではなく誰かと対話を重ねながら、対話をしたことの中に大事なことがあったらそれを書き記していきます。対話が中心となるのが「ACP」です。「ACP」の対話の内容としては「ごはんが口から食べられなくなった時にチューブで栄養を摂りたいですか?」といったものもあります。もう少し広がりがあり、「将来もしもの時がきても痛みが無いように過ごしたい」とか「最後までお風呂に入って清潔に過ごしたい」とか「望んだ場所で過ごしたい」等、医療の選択だけではなく生活にまつわる内容も含まれます。また自分の考え方や大事にしていること等も含まれます。
 

●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪 

日比野 正範 先生(第2どうとく薬局) 

銘苅 尚子さん(国立長寿医療研究センター 副地域医療連携室長) 

<力を入れていること> 
患者様とそのご家族に対して退院に向けてのサポートを行っています。今の状況を受け止めて今後のことを考えていくことに戸惑うご家族も多くおられます。専門職としてその気持ちに寄り添いながら、ご本人や家族が退院先を決めていけるようサポートしています。 
<心に残るエピソード> 
80代後半の男性で食事が食べられず、寝たきりとなって入院された方がおられました。介護者が高齢者の妻で、入院後に鼻の管が入って、そこから栄養剤が注入されました。もともと自宅介護を希望されていたのですが、急に「自宅では看られない」と言われているというので妻にその理由をお聞きしました。すると「病院の看護師さんがあまりにも立派で、私はとてもあんな立派な介護はできない。鼻の管も本当は希望していなかった」と言われました。妻は病院の医療に圧倒されていて、自分で介護をしてはいけないと思われたようでした。そこで「そうではないですよ。病院の看護が本人にとって良いとは限らず、残された時間を夫婦で過ごしたいという考えが決して間違えではないですよ。」とお話ししました。妻は「それならば家に連れて帰ってあげたい。」と言われました。栄養剤を入れて状態が改善する状況ではなかったということもあって、主治医に相談して、本人と妻の希望を尊重して鼻の管を抜くことになりました。その後はケアマネージャーさんに連絡をとって介護のサポート体制を整えながら在宅医や訪問看護にも介入してもらっての退院となりました。 
<今後の課題> 
急性期の医療を行っている病院には長く入院することができません。病気になって初めて介護について直面することになりますが、戸惑いのある中で色々なことを短い時間で決めていかなければなりません。ご本人は意思が伝えられない状況になっていることも少なくありません。やはり事前に家族を交えて自分がどのような希望なのかを伝えておかれると、それを参考にご家族が決断できます。それが家族にとっても後悔のない選択につながると思います。
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