若狭敬一のスポ音

ピッチングコーチは投手クラスの担任?

野球解説者の山田久志さんが9月5日放送の『若狭敬一のスポ音』に出演し、「ピッチングコーチがマウンドに行くタイミング」について語りました。
予想を超えるピッチングコーチの仕事に、スポーツ中継のベテランでもある若狭敬一アナウンサーも感心します。

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ピンチにできるマウンドの輪

プロ野球を見ていると、ピッチャーがピンチになるとピッチングコーチがマウンドに行き、内野の輪ができるという光景をよく目にします。
ピッチングコーチの経験があり、監督の経験もあり、もちろんピッチャーの経験もある山田さんに、若狭アナが尋ねます。。

若狭「ピッチングコーチは、どのタイミングでマウンドに行くか決めてたんですか?」
山田「全く決めてません」

まずは、ピッチングコーチの仕事から説明する山田さん。
各球団、支配下選手が70人。その中で35人前後がピッチャー。ピッチングコーチの仕事は、それらピッチャーひとりひとりの性格を把握していくことなんだそうです。
 

投手の全てを把握

山田「極端なことを言えば、今までの生き方であるとか、どういう過程でプロ野球に入ってきたかとかね、そういうことまで、把握しておく」

ピッチングコーチの仕事は、クラスを任された学校の先生のよう。とにかく一人一人接し方を変えるんだそうです。

山田「ブルペンに行くのも、やたらと行けばいいというものではなくて、その人の性格的なものを考えながら行く。最近見てたら、非常に無駄なコーチが多い」
 

熱い男、川上憲伸

山田さんがドラゴンズのピッチングコーチを担当していた頃のエースは川上憲伸さんでした。
当然、川上選手もピンチを背負うことはありました。そういう時にはどう接していたのでしょうか?

山田「ほとんどマウンドには行きません。憲伸の場合は、おそらく行ったことはないと思います。言っても聞くタイプじゃない。放っといたらなんとかしよる」

山田さんは川上さんのことを、自身と同じ「ピンチになるほど燃えるタイプ」だと見ていたそうです。ピンチは気迫で乗り切るタイプ。

山田「だから憲伸は、いいバッターが来るほど、燃えて向かって行った。松井(秀喜)や金本(知憲)や高橋由伸になると、お前そこまで頑張らんでもいいのにっていうぐらい行くんだ」
 

エースにかける言葉

山田「憲伸が気を付けなくちゃいけない時は、憲伸自身が予想してないことが起きた時。例えば味方がちょっとミスしたとか、思いがけないフォアボールを出してしまったとか、そういう時は点差関係なく行かなくちゃいけない」

3~4点リードでエラー1つぐらいなら大丈夫、という考え方ではダメだったそうで、山田ピッチングコーチはこういう場合即マウンドへ向かったそうです。
そういう時は、何を言うのでしょうか?

山田「『エラーは野球につきもんだよな。この回、何とか頑張れ』って。ここはお前に任せたという意味で、それはエースに対する褒め言葉ですよ」

他は何を言っても耳に入らないんだとか。
 

分かりやすい山本昌

続いて山本昌さんの場合。

山田「昌は仕草で動揺してるってのがすぐわかる。ロージン1つ持つので『こりゃダメだ。一呼吸置こう。マウンドに行こう』って」

いつも持たないロージンをパタパタさせたり、マウンドを降りてセンターを見たり、レフトに目をやったり、ベンチをチラッと見たり…。
そんな仕草が出ると精神的に参っている証拠なんだとか。

山田「今のピッチングコーチは小走りにスーッと行くけど、そういう時はゆっくり行った方がいい」
 

相手が嫌がることを

ゆっくりとマウンドへ行く山田さんは、以前野村克也さんとこんなやり取りをしたそうです。

野村「お前、もうちょっと早くマウンドへ行け。遅い」
山田「あれが私の作戦なんですよ」
野村「それをわかってるから早く行けって言ってるんだ」

野村監督もわかっていたという山田さんの心理。
こちらのピンチは敵にとってはいい流れ。妙な間を作られるのが嫌なわけです。
山田さんは自身の哲学を語ります。

山田「うちのコーチにも言ったんだけど、慌てて行ったら大ピンチに見えるだろう?相手が、早く行かんかい、と思うぐらいがちょうどいい。ピッチングコーチは堂々とゆっくり行ったらいいの。そういうこともやれるようになってほしいよ」
 

若手ピッチャーの扱い方

山田さんがオリックスのピッチングコーチ時代、若手のピッチャーが多く、今のドラゴンズと似ていたそうです。
若手のピッチャーがピンチの時、マウンドでどう対処したのでしょうか?

山田「『ランナー、いま何人いるんだ?』とか聞くんだ。例えば、ツーアウトランナー、一二塁で、1点リードしてるとして。おい、いま何アウトだ?」
若狭「ツーアウトです」

山田「そうツーアウト。ちゃんとわかってるな。それなら大丈夫だ。ランナーは?」
若狭「一二塁です」

山田「よし。そのくらい冷静なら大丈夫だ。普通に投げて来い!と言うわけ」
 

精神状態を戻す仕事

素人考えだと、低めに投げろとか、バッターの弱点などアドバイスをするのかと思いきや、そういう事は一切なし。

山田「そんなピンチになって投げられるわけないじゃないの」

ある時、何回かを聞いたら、8回なのに7回と答えたピッチャーがいたそうです。それだけピッチャーは興奮状態になっているわけです。

山田「ピッチングコーチの役割りは、グワーッと入り込んでしまっているピッチャーの精神状態を、フラットに戻してやるのが仕事」
(尾関)
若狭敬一のスポ音
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2020年09月05日13時12分~抜粋

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