若狭敬一のスポ音

山田久志が明かす!投手コーチは「負け」を願うことがある?

元中日ドラゴンズ監督で野球解説者の山田久志さんが、4月13日のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』に出演し、「ブルペン」をテーマに話しました。

中継ぎ投手がマウンドに出て行くまで、監督やコーチとどんなやりとりをするのか、などピッチングコーチと監督経験を持つ山田さんに、若狭敬一アナが尋ねました。

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監督、コーチの関係は?

「ベンチコーチとブルペンコーチがまず絶対仲良くなかったらダメ。仲良しで野球観が一緒」と言う山田さんに、「あ、深いな~」と若狭アナ。

例えば、監督とピッチングコーチや、監督とヘッドコーチ、ピッチングコーチとバッティングコーチといった組み合わせで、一番価値観が一緒であるべきカップルはどの組み合わせなのか。
これについてブルペンコーチとピッチングコーチを挙げる若狭アナ。

山田「私の中ではそうだと思います。監督とピッチングコーチが仲が良すぎるのも、これも考えもの。監督とピッチングコーチはやや仲が悪いと言われている方が、うまくいくケースが多い」

山田さんがオリックスでコーチをしていた時の仰木監督とは、よく喧嘩していたとか。
 

良いピッチングコーチとは?

山田「ピッチングコーチは選手側に立たなきゃダメなんですよ。
監督ってのはどんどん良いピッチャーを投げさせたいから、監督側についたらダメ」

ピッチングコーチだけでなく、監督の経験がある山田さんはこうも言います。

山田「監督ってのは143勝したいんですよ。やる試合は全部勝ちたい。勝つためにはピッチャーをどんどん使う。リードされてて、継投して繋いだらイカンと我々言うでしょ?あれ、監督はやりたいのよ」

若狭「我々も実況解説の時には『ここで浅尾はない、ここで岩瀬はないですよ。まだビハインドですから』って言いました」

山田「そうでしょ?監督はそうじゃない。岩瀬と浅尾で抑えておいて、あと一回の攻撃にかけたいと思うんだ。その時に『監督!いけません。ここは我慢しましょう』っていうピッチングコーチでなきゃ困るわけ」

監督とピッチングコーチは、こういう時にぶつかり合うぐらいじゃないとダメなんだとか。これがブルペンコーチとピッチングコーチとなると話は別です。
 

ブルペンとベンチ

山田「ブルペンコーチは、できることならベンチコーチのイエスマンが良い。少々違うなと思っても『そうしましょう』って言ってくれる方が助かる」

2009年、WBCのピッチングコーチに就任した山田さんは、ブルペンコーチに現中日監督の与田剛さんを選びました。

山田「ジャパンの選手と年齢が近い若いコーチで、人格者で、選手からも慕われるような人いないかな、と思いながら探したら与田が浮かんで来た。これから『与田』と呼べないけどね。『監督』と呼ばなきゃいかん」
 

肩作りは20球まで

話題は、リリーフピッチャーのブルペンでの肩の作り方へ。

山田「これは一人一人全部違う。3~4球のキャッチボールでいける人もいれば、少なくとも30は投げなくちゃいけない人もいる。でもリリーフピッチャーで30はもう駄目だね」

肩を作るまでの投球数は、10球からせいぜい20球までだそうです。

山田「で、今のピッチャーは2回ぐらい作るんですよ。あれが無駄だと思ってんだけどね」

ベンチコーチとブルペンコーチが意思疎通して、1回で済ますのが理想だそうです。
そうすると選手の負荷もかからず、登板数は65試合、70試合となっても、肩の消耗は少なくなるということです。
 

投手のやりくりに自信

山田「私はそういうのではコーチとして自信があった。やりくりに自信あったし、そのピッチャーの、3連戦のうちのローテーションまで作ったからね」

例えば岩瀬。3連戦の頭。原則は1イニング。1イニングでもピンチを救って、結局、25~30球まで行ってしまったら、翌日はなしだったそうです。

山田「25球ぐらい投げたら次は休ませたい。それで中1日置いて3戦目に活かす。もし、そこが負けゲームだったら、上手く休ませること。次また、連戦になったら2連投OK」

ここで「負けゲームなら上手く休ませる」が気になった若狭アナは…。
 

大きな声で言えないこと

「極端な変な話でいくと、ピッチングコーチ、ブルペンコーチは『このまま負ければいいのに』と思ってることもある?」と質問する若狭アナに、声を落として答える山田さん。

山田「小さい声で言うけど…しょっちゅう『今日は負けてもいい』と思ってる」
若狭「もう逆転しなくていいよって」
山田「このピッチャーで終わってくれって」

しかし当然ながら監督は違います。

山田「9回のツーアウトからでも勝てると思ってるから。こっちは『よし、今日はピッチャー、明日に残せたなあ』と思ってるんだけど」

若狭「ファンは毎回、勝ちたいんですよ」
山田「わかる。ファンも監督も一緒」

ところがピッチングコーチだけは違います。
そこで、また当然勝ちたいバッティングコーチとも揉めるんだそうです。
 

裏方昔ばなし

山田「よう喧嘩したもん。『あそこ抑えたら、お前勝てるんだよ』って。『相手は打順悪いんだからいけたんだよ。あそこであんなピッチャー出すからダメ押されるんだよ』とか」

星野監督時代のドラゴンズでは、山田実雄さんがバッティングコーチ、山田さんがピッチングコーチの時がありました。

山田「そういうチームにならなきゃ勝てないんだよ。あのコーチ室で、そういうことがなかったらダメだよ。それを抑えるのがヘッドコーチ。
島野さんが『山ちゃん、まあ抑えて』『実っちゃんも抑えて』ってそういう話にならなきゃいけない」

島野育夫さんは星野仙一さんと、監督・コーチのコンビでドラゴンズとタイガースを優勝に導きました。
 

あらゆる組織に共通する

若狭「これ、戦国時代の戦もそうなのかもしれませんね」

山田「そりゃそうだよ。負け戦なんか誰でもイヤだもん。でもピッチングコーチは負ける時の退散の仕方知ってるから」

若狭「これ、例えば怒るお父さんと優しくするお母さんと、話を聞いてあげる兄弟とか、いろんな組織に共通するかもしれないですね」

最後に「そういうのをね、講演でしゃべるわけだ。そしたら皆さんが『あ~なるほど、山田の話は素晴らしい』となるわけ!」と自画自賛する山田久志さんでした。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2019年04月13日13時17分~抜粋

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