若狭敬一のスポ音

遅咲き・小平奈緒選手と早熟・高木美帆選手の活躍が変える未来

スポーツライター小林信也さんが、3月3日『若狭敬一のスポ音』に先週に続いて出演しました。

先週は羽生結弦選手と宇野昌磨選手の活躍について辛らつな発言もありましたが、今回の話題は平昌オリンピックでも注目されたスピードスケート女子について。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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オリンピックは金がかかる

冬季オリンピックは今回が韓国の平昌、次が2022年北京、そして夏季オリンピックは2020年東京と、アジアに集中しています。
それにはこんな問題があるそうです。

「ひとつはお金がかかりすぎるようになって、ひところプロ化、あるいは商業化することで独立採算を取っていたのに、それでも追いつかなくなっちゃった。だから開催国があまり手を挙げられなくなっちゃった」

そこでIOC(国際オリンピック委員会)はスノーボードなど"X系"と言われるエクストリームスポーツを新種目として追加していきます。

新種目はどうなる?

「Xゲームとかが、ものすごく人気になっちゃって、オリンピックを超えるスポーツになりそうだということを心配したIOCが抱え込みに入った。それに対する抵抗は、実は今もあるし、前はもっとあったの」

例えばショーン・ホワイトのような選手には「何で俺がオリンピック出なきゃいけないんだ?Xゲームでいいじゃん」という雰囲気の方が強かったそうです。

「ところがオリンピックのエネルギーとか、ビジネス的な可能性を考えると、これは出ない手はない、ということで、今はお互いが歩み寄った形です」

夏季オリンピックの開催種目にも、同じようにスケートボードやサーフィンがあります。

北朝鮮参加=安全の担保

平昌オリンピックのトピックとして、北朝鮮の参加がありました。

「本来のオリンピックムーブメントの目的で言えば、オリンピックに参加したんだから、もう北朝鮮には平和に向かう以外の選択はありませんよ、っていうぐらいIOCは強く主張して良かった」

平昌オリンピック開催中の安全を担保するためには、折り合いをつける必要があったのだろうと推測する小林さんです。

「政治の方は、別の現実的なことをおっしゃるでしょうけど、僕はスポーツの側の人間ですから、スポーツの祭典であるオリンピックから、ポジティブなスパイラルに変えていきたいなと思います。それが夢ですからね」

小平奈緒に素直になる

スピードスケート500メートルで小平奈緒選手が金メダルを獲得しました。
その後の韓国選手とのコミュニケーションは、今回のオリンピックを象徴するシーンとして何度も報道されました。

「小平選手は、僕は今回の大会で、最も感銘を受けたし、心から応援した選手の一人です。500で金メダル獲れなかったら、どうしようって、斜めからものを見ると言われてるスポーツライターが、こんなに素直な気持ちになりました。僕は斜めに見てませんけど」

ぞっこんな小林さんに異を唱える若狭アナ

「それは疑います。羽生結弦をめちゃくちゃ斜めから見てます。氷の裏から見てるんじゃないかって言うぐらいの見方でした」

これには「羽生君が斜めになってんだよ」と対抗する小林さんです。

小平選手の伝えたかったこと

「彼女がこう言ったんですよ。『金を獲って伝えたいことがある』っていう表現をしたんですよ」

これが小林さんが小平選手に惚れるきっかけでした。

「おそらく、金が欲しいとか一番になりたいじゃなくて、金メダルを獲るにために自分は何をしたのか、何を得たのか、そういったことを伝えたい。でも、勝たないと誰も聞いてくれない。ある意味アーティストとして、自分に与えられた使命を、表現するっていうことを見事にやった」

小平選手は前回のオリンピックの後にオランダに2年間留学しました。これで強くなったという人もいますが、小林さんによれば、それはきっかけに過ぎないとのこと。

「彼女も言ってるんですよ。その後、日本に帰ってきて、改めて日本の良さを感じて、日本人として日本的なトレーニングをやったことが、本当に強くなった。
それと同時に、金メダルを目指す過程の中に、やる意味のある深みがある。だからスポーツって素晴らしい、そう伝えたかったと思うんですよね」

女子スポーツを変えた二人

「スピードスケートの高木美帆さんと小平さんって、日本のスポーツ、特に女子のスポーツの歴史をある意味変えたと思います」

まずは小平選手について。小平選手がソチオリンピックで活躍できなかった27歳。これまでであれば、27歳の女性なら競技から離れるきっかけとなったはずです。

「27歳から金メダルを獲れるような選手になるというのは、あまり今までの例ではなかったですよ。でも彼女はハッキリとそれを求めていたし、実現した」

早熟の悲劇

一方の高木美帆選手は、15歳の時に「天才少女」と呼ばれバンクーバーオリンピックに出場しています。しかし1,000メートルは35位、1,500メートルは23位と良い結果を残せませんでした。

「最近、僕もそうだなあと思っている表現があって、10代で野球でもなんでも、すごいっていう選手を『天才』と言うのはやめましょうっていう声があるんです。
早熟って場合があるんです。早く大人になった分だけ、同世代の中でやってたら、すごいと言われる。野球なんか、そういう選手の例が多いですよね」

野球はボールが重いので、同世代より身体が先にできて筋力がついた方が有利なスポーツです。
逆に卓球はボールが軽いし、卓球台の上での勝負なので、卓球台から上半身が出るようになれば、あとは公平だといいます。

挫折への希望、高木美帆

早く大人になっただけで、18歳とか20歳になった時に、同級生と同じ背の高さ、あるいは同級生の方が高くなった、という子も多くいます。

「それで言うと、高木美帆さんもスケートだけじゃなくて、女子サッカーもやって、ヒップホップ・ダンスも上手かったり、身体的にはズバ抜けている中で、結局、前回のソチオリンピックは出られなかったじゃないですか。
つまり、早熟だった少女が、ある程度、頭打ちになったという可能性もあったの。そこから、もう一回、這いあがるっていうのなかなかない。多くの早熟と呼ばれて伸び悩んでいる人たちに、希望を与えたんじゃないかなと思う」

ひとしきり語ったところで「こうやって熱く語ってしまうといいですよね。なんだかんだ言って、僕はスポーツに燃えてるんですよ」と言う小林さん。

あきれて「斜めに見すぎでしょ!」と突っ込む若狭アナに、「早く世の中が真っすぐになってくれないかな」と答える小林信也さんでした。
(尾関)
若狭敬一のスポ音
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2018年03月03日14時17分~抜粋

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