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ハザードマップを冷蔵庫に貼るだけじゃダメ?大災害への確実な備え

先月8日に宮崎県の日向灘で大きな地震が発生したことを受けて、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報 (巨大地震注意)」を初めて発表。
その後1週間、地震への備えなど注意や呼びかけを継続しました。

また、先週から日本を横断した台風10号の影響で、全国的に風や線状降水帯による豪雨の被害が起こり、これまでに死者や多数のケガ人が出ています。

9月2日放送『北野誠のズバリ』(CBCラジオ)では、NPO法人 レスキューストックヤード代表理事の栗田暢之さんが登場し、災害現場での実体験を交えながら、巨大地震や豪雨などの被害から自らを守る方法について、解説しました。

聞き手は北野誠と大橋麻美子です。

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南海トラフ巨大地震の予測規模

甚大な被害を受けると言われる南海トラフ巨大地震、最大規模である震度7が広範囲で起こり、津波の高さは九州から東海までという広い範囲で10m以上、四国に至ってはなんと34mが想定されています。

この地震により全壊あるいは全焼する家屋は238万6千棟にも及ぶと予想されています。
阪神・淡路大震災では10万棟、東日本大震災で12万棟と言われています。

また死者も阪神・淡路大震災で5,522人、東日本大震災では行方不明者を含め1万8千434人でしたが、広範囲に被害が及ぶ南海トラフ巨大地震では、32万3千人と桁違いの予測となっています。

南海トラフ地震の範囲は、北は茨城や千葉あたりから西日本のほぼ全域にあたるため、栗田さんは「スーパー広域災害」と表現します。

避難所に入れない事態も

巨大な地震が発生した場合、まずは命を守ることが最優先ですが、これだけ被災者が多いと避難所に行っても生活がかなり大変そうです。

栗田さん「国の予測では、1週間後がピークで全国で950万人の避難者が出るっていってるんですよ。
950万人という数字は桁が全然違っていて、阪神・淡路大震災では都市型ですから(人数が多く)約32万人といわれました。

東日本大震災では広範囲だったんだけど、人口密度の関係で47万人といわれていて、(南海トラフ巨大地震は)1桁も2桁も違うような。ちなみに、愛知県だけで180万人と言われているんですよ」

想定を超えるほど多い人数のために避難所に入れないことも考えられ、場合によっては路上や公園で生活しなければならないかもしれません。

栗田さんは「『食べる、出す、寝る』という人間の基本も脅かされて相当厳しい状況に陥るのではないかと想定されている」と語りました。

どのように備えたら良いのか

避難所での生活が難しいとなると、できる限り自分たちで生活できるようにする必要がありますが、どのような備えが必要なのでしょうか?

栗田さん「単に避難所に行くということではなくて、津波や土砂災害の心配がない地域の人たちは、まず自宅にいる方が安全性が高いと思いますね。

自宅にいるためには自分の家が壊れちゃいけませんので、耐震性の高い家に住みましょうとか、ケガしちゃいけないので(タンスなどの)転倒防止をしましょうということは必須ですね。

あとは備蓄で、どれぐらい備えたら良いのかという話ですが、南海トラフの場合はやっぱり1週間ぐらいといわれてますね」

最近広がっているのは、あらかじめ水や食料を多めに買っておいて、賞味期限切れになる前に日常で使う「ローリングストック」という考え方。

栗田さんによれば、防災用に買ってしまっておくと忘れてしまい、いつの間にか賞味期限切れになってしまうということがありますので、普段から使うのが良いそうです。

用意しておくと良いもの

最近、南海トラフ地震臨時情報が報じられ、スーパーなどの店頭から飲料水が消えたという現象が起こりました。
栗田さんは「ちょっと過剰みたいなところもありましたけど、結果的にはいい訓練になったんじゃないかなと思います」と評しました。

食料や水以外で必要な物といえば、最近ではポータブル電源が必需品といわれています。

そして、栗田さんが他に必要なものとして挙げたのが、カセットコンロ。
強化されたビニール袋に前日に残ったごはんと焼き鳥の缶詰を入れ、袋の口を縛ってお湯でぐらぐら煮ると、簡単に温かい料理ができます。

冷蔵庫がダメになると限られた食材を有効活用する必要があり、栗田さんは「カセットコンロさえあれば作れる」と語りました。

水害の避難はスピードが大事

先日の台風10号の際にも発生しましたが、ここ数年「線状降水帯」という言葉を耳にするようになりました。

2019年の熊本豪雨の際は1時間あたり100mm近い雨が11時間も続き、最近はよく1日で1か月分の雨が降ったというニュースも見かけます。これは温暖化の影響といわれています。

先日、栗田さんは大雨の被害があった岐阜県大垣市や池田町を視察しましたが、住民は口を揃えて「水が一気に来た、あっという間だった」と語ったそうです。
そうすると、いかに早く避難するかが大事ということになります。

栗田さんは「今はレベル3とかレベル4とか、高齢者等避難指示とか早めに出されるようになりました」と語りつつも、「出す方は必死なんだけど、受け止める私たちの方がそれをどうするかが大きな問題ですね」と、警報を聞く側の問題を指摘しました。

ハザードマップをよく確認

水害などへの対策として、行政では「ハザードマップ」の配布などを通じ、住んでいる場所の危険性を伝えています。

このハザードマップを冷蔵庫など、見やすい場所に貼っている家庭もあるようですが、「実はそれだと不十分」と栗田さんは指摘します。

栗田さん「冷蔵庫にハザードマップが貼りっぱなしの人もいてよく確認しないとか、世帯主は見るんだけど、20代以下はほとんど見てないとか。家族会議をするとか、みんなで確認し合わないといけないですよね」

最後に栗田さんは私たちが注意すべき点として、「大雨特別警報や線状降水帯という言葉を聞いたら、危険が迫ってるんだとしっかり認識して、早めに避難行動を取らないと命にかかわりますよということをお伝えしたいですね」とまとめました。
(岡本)
 
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2024年09月02日13時14分~抜粋

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