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民放ラジオ番組史5・第一次深夜番組ブーム

1951年(昭和26年)に民間放送局が誕生して67年。
このシリーズではCBCラジオの番組を中心に、黎明期から60年代までの民放ラジオ番組について触れてきました。

今回は、60年代中頃に起こった深夜番組ブームについて紹介します。

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深夜番組は若者向けに

明確に若者をターゲットとした最初の深夜番組は、1965年(昭和40年)8月に始まった文化放送の『真夜中のリクエストコーナー』と言われています。
土居まさるアナウンサーによる「ドヒャーっと行こうぜ、お前ら!」に代表される刺激的なトークは、多くの若者たちを魅了しました。

この成功を受けて、翌66年にはABCラジオ『ABCヤングリクエスト』をはじめ、全国各地で若者向け深夜番組が始まります。

『ABCヤングリクエスト』でDJを務めた道上洋三(現・朝日放送テレビエグゼクティブ・アナウンサー)によれば、当時の深夜帯には成人向けのお色気路線の番組が多かったことから、差別化を図るためにシモネタ厳禁が徹底されていたようです。

真打ち登場 オールナイトニッポン

さらに翌67年になると、TBSラジオで『パックインミュージック』がスタートし、先に『オールナイトジョッキー』をスタートしていたニッポン放送も含め、在京AM局はすべて終夜放送体制となります。

そして67年10月、そのニッポン放送がスタートさせた『オールナイトニッポン』により、深夜番組人気は一気に高まりました。

『オールナイトジョッキー』からスピンオフした糸居五郎をはじめとする局アナ勢に混じり、入社6年目の制作スタッフ「カメ」こと亀淵昭信(のちのニッポン放送代表取締役社長)が人気DJとなりました。

全国各地で始まる深夜番組

さらに1969年(昭和44年)になると、文化放送が『セイ!ヤング』を開始し、前述の土居まさる、みのもんた、落合恵子などの局アナが人気を博しました。

一方でTBSラジオ『パックインミュージック』では野沢那智、白石冬美、田中信夫、野村道子といった声優を起用し、やや高めの年齢層のファンを獲得。
名古屋で68年に開始した『ミッドナイト東海』(東海ラジオ)では、天野鎮雄や森本レオなど、名古屋の俳優が起用されていきます。

なお『オールナイトニッポン』では、69年頃からDJの呼称を「パーソナリティ」に統一しています。
「パーソナリティ」なる呼称の始まりには諸説ありますが、深夜番組の人気が、音楽から喋り手の個性へ移ったことを示す、象徴的な出来事と言えるでしょう。

つボイノリオのラジオ初登場

CBCラジオでは『オールナイトニッポン』の開始と同じ67年10月から、島津靖雄などの男性局アナ陣による『CBCヤングリクエスト』を開始します。
69年4月には、後続番組として女性DJによる『オールナイトCBC』が始まり、連続4時間の終夜放送を実施、この時からCBCラジオは24時間放送となりました。

そして69年秋、『CBCヤングリクエスト』の公開収録に、ギターを持ったひとりの学生が現れます。
彼の名は坪井令夫。後のつボイノリオです。

坪井は愛知大学で所属していたフォークソング研究会の活動の一環で友人と出演し、後に「本願寺ぶるーす」となる楽曲を演奏して一躍人気者となりました。

この時の模様は東芝からリリースされた番組LPにも収録され、これを機に坪井は「スリー・ステップ・トゥ・ヘブン」名義でテイチクレコードからデビュー。
さらに1972年(昭和47年)5月には『ミッドナイト東海』(東海ラジオ)で起用され、ラジオパーソナリティとしての道を歩みはじめます。

フォークシンガーへの注目

実は当時のラジオ界隈では、このようなことが全国で同時多発的に起こっていました。
1970年(昭和45年)前後、若者たちに支持されていたのはフォークソングでした。

作詞家や作曲家といったプロの作家によって作られた歌謡曲とは異なり、歌い手自身が詞も曲も書く、いわゆる「シンガー・ソングライター」は言葉を操る術を持っていたと言えるでしょう。
またラジオ業界にとっては、音楽出版などを支援するなどビジネス面のメリットもありました。それゆえ、各地で地元のフォークシンガーを育てる機運が生まれたのです。

この頃に深夜番組に起用された代表的なフォークシンガーには、よしだたくろう(吉田拓郎)や泉谷しげるらがいます。

話し手のバトンタッチ

各地で生まれた深夜番組ですが、やがてアナウンサーの勤務問題等が発生します。また深夜放送がブームになってから数年ともなると、リスナーの世代交代によって求められるものが変わっていくようになりました。

CBCラジオでは一貫して局アナの起用を続けてきましたが、こうした事情により番組を終了し、72年の秋改編でニッポン放送『オールナイトニッポン』のネット放送を開始します。

その『オールナイトニッポン』も、73年夏に局アナ中心だったパーソナリティ陣を一新し、フォークシンガーや放送タレントを起用していきます。

こうして深夜番組の顔は、局アナ・声優・俳優という喋りのプロから新たな才能にバトンタッチされていったのです。
(編集部)

※文中敬称略
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