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【エッセイ】草創期のテレビマンが語る「仕事の醍醐味」と最新放送機器の話。

こんにちは、放送作家のコウノです。
千葉・幕張メッセに「Inter BEE 2017」に行ってきました。放送機器の一大展示会です。
今日はこのページで最新の放送機器事情を克明にお伝え…しません。というか、私にそんなことはできません。

放送作家はザックリ申して、企画を考えて、台本を書く商売。
じゃあなんでそんなところに行くんだオマエ暇なのかって話ですが、会場には全国の放送事業に携わる方々がお越しになり、時にお話をする機会に恵まれることもあります。
今年は特に、様々な方にお会いでき、お話を伺うことができました。

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冷やかしで、サーセン。


ただ、メインはあくまで放送機器の展示です。
だから「Inter BEEを観に行く放送作家なんて、聞いたことがない」と言われます。企画を考え、書く作業において、必要なのは紙とペン、スマホ、パソコン…皆さんもお持ちであろう品々で事足ります。

でも、一応見るのです。目の前で展示されている機材がどんな仕事をしてくれるのか。本当に見るだけ。そこに説明員の方はいますが、よほどの事がない限り、パンフレットをいただくに留めます。だって、購入の決定権はないもん、俺には。そんなヤツ相手にご説明いただくのは申し訳ないのです。限りなく冷やかしに近い放送事業従事者です。

中には、アンケートに答えて記念品を下さるブースがあるのですが、設問の最後に「あなたに機材導入の決定権は、ある/ない」みたいなのがあると、もう、それだけでウルトラ申し訳なく思いつつ、記念品をいただくのです。

大事なことは「軽いか」


広い広い幕張メッセの中を申し訳ないなと思いながらも歩く。
ただ、ラジオ中継機材だけはしっかり見ておく。テレビと違って小規模で動き回ることの多いラジオ中継。時にはデイバッグに入るような小型の機材を背負って、電車で移動するなんていうのは当たり前になってきています。
が、私はそれで腰を痛めた。ゆえに大事なのは「軽いか」。ラジオの未来に「軽さ」を求めたい。

でも、軽いって大事です。
携帯電話回線をつかった簡易型ラジオ中継機材が、ラジオ各局に導入された時、開発者と放送局の間では「朝のワイド番組で、女子大生のレポーターがお天気中継をやる時、重さを感じずに外へ出られること」を合言葉につくられたと聞いたことがあります。そのために、メーカーの方は苦労されていたと思います。

「技術の進歩にどれだけ自分が関われるか」


放送作家にとって機材は常に密接というわけではないけど、いつも仕事の場で目にするもの。だから、知らないより知っていたほうがいい。
でも、知見があるわけではないので、見てもわからない。つまりは技術に携わる皆さんはすげぇと思いながら、様々なブースを見ているのです。

テレビ草創期に数多くのテレビバラエティーを生み出した、井原高忠という人がいます。
まだ日本人の海外渡航が大変だった時代に、テレビ先進国だったアメリカに行き、最先端の制作技術を学んで、それを日本のテレビに導入した人です。

撮影・音響技術といったものだけでなく、スタジオのセットが倒れないように裏で支える重石や砂袋まで、ノートにスケッチして(写真ですらなかったんですね)日本に持ち帰ったといいます。

「自分の仕事の技術進歩に、自分がどれだけ関われるかが、仕事の醍醐味だ」と、井原高忠さんは周囲に言っていたそうです。さぁ、どんな進歩に関与できるか。

目をキラキラさせて「ラジオには可能性があります!」と言うよりも「どうすっかね~?」なんて気楽に考えながら、面白いことを探していきたいとは思うのです。軽いをこえて、チャラく。

河野虎太郎
放送作家。Inter BEE 2017の会場で一番びっくりしたのはハイスピードカメラの会社のブースで、その実力を示すために、空手となぎなたの形の演武をやっていたことでした。初めて見たけど、昨年も実施していたようですが、なるほど、動きで実力がわかる。
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