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【エッセイ】島と港と秋のradiko

前回の近況のところに書いた、東北の港町で飲んだ女性は、ラジオパーソナリティーにして観光物産店の店員、さらに学生ソフトボールの指導者でもありい酔っぱらいである。
前に東京の四谷で飲んだ時は、お開きの時、四谷三丁目の交差点で抱き合って別れたような気がする。

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墓参りとお供えのビールを飲む男


6年半前からこの港町に通うようになって、手伝いなのか賑やかしなのか、間違っても「支援」だ「ボランティア」でなく、遊びに来るようなその辺のおっちゃんをやってきた。

おかげさまで「何しに来た?」「いや、メシ食いに…」という会話が成立するようになりました。

旅の目的は、昨年若くして旅立った友人の墓参だった。

町の中心部から仲間の車で30分。彼の墓の前で、彼が吸っていた煙草を吸って「んじゃ、また来るわ」とだけ告げて、町の中心部に戻ってきた。

町はここ数年で中心部の開発が進み、少しずつだが、夜遅くまで酒が飲める店も増えてきた。何を話すか、この町の未来、復興の進み具合、一切してません。最初から最後まで笑っていたような気がする。

一応、ジャーナリストとして、会話の内容スマートフォンのメモに断片的に記してはみたが、東京に戻った今、それが何を意味しているのかわからないが、私の下戸に非難が集中した。いや、飲めない人に飲ませちゃいけないですよ。

私は普段家では135mlの缶ビールを飲む。あの小さい小さい缶。コンビニや酒の量販店の棚の一番隅っこに並んでいるアレで酔っ払う。実に安上がりだ。

それを酒豪の女は一刀両断する。
「あれはさ、お墓に供えるビール!」
旅立った友人には悪いが、その言葉に死ぬ程笑った。

旅先からの一枚と、島からの数枚。そしてradiko。


旅先からハガキを書くことがある。またお前は永六輔を気取るのか問題です。

ちょっと前にSNSで話題になった、スマートフォンで撮影した写真を、コンビニでハガキプリントをして、オリジナル絵葉書を旅先から送るというのは、やってみると意外と楽しかった。
世の中、絵葉書になってないけど、絵葉書にしたい風景はいっぱいあるんです。

10数年前。radikoどころか、ラジオのネット配信などごく僅かだった頃。

テレビの衛星放送チャンネルを通じて、ラジオ音声を届けている地方のラジオ局があって、仕事をしながらよく聞いていたのですが、夕方の生番組で「この番組を、全国各地でお聴きの方、そちらのお天気はいかがですか?」なんてアナウンサーが言っていたので、番組にファクシミリを送ったことがありました。

そうしたら放送でメッセージが読まれ、こっちはもうこの仕事しているから「よっぽど今日は、紹介するメッセージがないんだな」などと穿った見方をしてしまうものですが、数日後、そのラジオ局からの郵便。それも随分と分厚い封筒が届きました。

局のグッズか、まぁ番組表とか、そういうものが入っているのかと思い、封を開けると、そこにはポストカードのセット。

どれも美しい海と島の写真。使うのが惜しいようなカード。別に何かを欲しいと思って送ったわけではないのに、嬉しい贈り物が届いた。確か、何年もかけて使ったような記憶がある。

そのラジオ局の放送が聴きたくなってきた。聴けるらしい、もうすぐ。島も港町も、名古屋も。

明日にでも行きたい。radikoじゃ満足できないカラダなの。ちょっと飲んですぐ酔っ払うけど。

河野虎太郎
今回の旅は妻とともに。今後、旅先では「同伴で使われる店」や「自治体の食堂」と、相反するコンセプトの店を訪れることが決まった。夜と朝のあいだに、昼と夜のアウフヘーベン。
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