特集記事

【エッセイ】無駄と挨拶。

女性パーソナリティー「交通情報、情報センターから○○さんです」
男性パーソナリティーと女性パーソナリティー「おはようございます!」
情報センターの人「おはようございます。それでは朝一番の道路情報をお伝えします。名神高速道路は…」

昨今、声を揃えて「おはようございます!」なんて言うのを聞くのは滅多にない環境で生きていますので、ラジオからそう聞こえると実に清々しい。

自分はというとだ。まず朝一番の挨拶が、つボイさんが喋り出すより遅い。それどころか、近石真介さんが「こんちわ」って言った後の時間に、エネルギーを使わないトーンで「ウィース!」と言う生活。
とはいえ仕事のパートナーが少林寺拳法部出身なので、私は体育会系な挨拶を心がけます。

[この番組の画像一覧を見る]

声を合わせての呼びかけ


で、意外となんですけど、全国のラジオ番組を聴いてみると、交通情報センターや気象協会などの外部のスタジオに向かって、パーソナリティーが声を揃えて挨拶する例って少ないなぁと思っております。

全国主要都市の朝ワイド番組をradikoタイムフリーで聴いてみましたが「交通情報・天気予報(のふり)はアシスタント」という例が多いですね。だけど、東海地方は比較的、男女パーソナリティーが揃って挨拶をする番組が多いような気がします。

別にいい悪いではなく、それこそパーソナリティーのうち一人は、その時間にニュースの下読みをしたり、次のコーナーのゲストと打ち合わせをしたりと、やることがあるのです。
あと、お菓子

"ただいま or まもなく"問題


そして朝の番組に多いフレーズといえば、時間告知です。
いや、朝に限らず、ラジオの場合は交通情報や天気予報の前に一言「時刻は7時51分、交通情報です」なんてことを言いますね。

洋の東西を問わずのようで、アメリカのラジオでも「The time soon will be 7:20~」みたいなことを言ってますね。が、何をもってして「ただいま」と「まもなく」に分かれるのか。
7時20分35秒なら「ただいま7時20分」でしょうが、7時20分45秒なら「まもなく7時21分」なのか。

この「ただいま・まもなく問題」はラジオ業界では、生ワイド番組草創期の1960年代から解決していない永遠の課題として、一部では「TDMM問題」と呼ばれるほどの業界内の懸案事項とされ、かつては関係者同士が掴み合いになるほどでした。すみません嘘をつきました。

そして掴み合いになった2人のラジオマンは仲直りし、芝生の上で寝っ転がりながら、これが青春だよなと話をしたと言われています。表へ出ろ、俺が。

しかし、独特の言い回しによる時間告知に、時折びっくりすることもあります。
「時計の針は10時35分に向かっています」。言いがちです。このあたり、アナウンスメントに厳しい方だと「時計の針は指しているもんだ」という仰るかもしれません。

あとは時間に限らず言いがちな「○○の方」という言い方。「時刻の方は8時28分です」。じゃあ、時刻じゃない方は何時だっつーんだと、悪態のひとつでもつきたくなるものです。

名司会者の無駄のない言葉と無駄


じゃあ、どう言えば違和感がないのか。
友人のディレクターは「そこは素直に『7時16分です』『まもなく7時17分です』でいいんじゃね?」と。シンプルこそ、伝わるのです。「ただいま」とか「時計の針は」とかはいらない。

名司会者・福留功男さんは、テレビ局の喫茶店でディレクターと話している際に「ちなみに」という言葉を連発。その言った回数を、ディレクターは傍に紙ナプキンを切りながらカウント。そして話し終わった時に「床を見ろ」と。そこには無数に散らばったナプキンの切り屑。

ディレクターは「何をそんなに因んでんだよ!俺たちの商売は(テレビCMの)15秒で何百万の世界なんだぞ。お前が因んでる間に何百万の金が動くんだよ」と。厳しいけど、無駄のない言葉が的確な情報になるのです。

その一方「無駄なしゃべり」をも芸にしたのが、福留さんの好敵手・徳光和夫さん。その活躍はご承知の通りですが、その徳光さんが初代司会を務めた「ズームイン!!朝!」(1979-2001 日本テレビ)を見ていたある朝。
私はずっこけましたね。各局からの中継やニュースを捌いて、CMに入る直前、徳光さんは言いました「時刻は7時…お宅の時計をごらんください」。

フロアディレクターの笑い声とともにCMへ。ズルいよ、徳光さん。

河野虎太郎
読むのが怖かった、燃え殻・著「ボクたちはみんな大人になれなかった」読了。僕がいた場所・時代とあまりにも近い場所の話。90年代後半のテレビの世界の断片も窺える部分。とりあえず20年、僕もなんとかやってきたことを確認できた。
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報