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【エッセイ】ラジオ好きにこそ知ってほしいテレビの話。

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このエッセイの2回目で、スタジオのケータリング(主にお菓子)について書きました。

そうなると次は弁当をと思ったのですが、一応私も放送作家で、放送界隈の歴史・現状・未来を書くことも生業としている以上、そろそろお菓子がどうしたラーメン店がどうした、そんな話ばかりを書いているのはいかがなものかという声を、私が上げました。

「これって、ラジオ」


ここにお集まりの皆様におかれましては、ラジオ大好き、ラジオファースト、ラジオこの道しかないみたいにお考えの方もいらっしゃるかと存じます。
「テレビなんか見ない!」とおっしゃる方、あるいはテレビは置いてない、ラジオだけ!なんて方もいらっしゃるかと存じますが、今日はテレビのお話です。あー、ちょっとブラウザの「戻る」ボタン押さないで。

テレビを見ていて「これってラジオじゃん!」と思うこと、皆さんありません?
様々な事情で、トークを主体としたテレビ番組が増加している昨今。出演者のトークを生かす番組になると、どこからともなく、ラジオが滲み出てくることが多いです。

では、どんな番組が「ラジオっぽいテレビ」なのか。
1.トークを主体にした番組
2.低予算を売りにした番組
3.ひとつのテーマ(話題)を長い時間かけてやる番組
4.ラジオ出身、またはラジオで名を馳せた人が中心にいる番組
5.ラジオブース(スタジオ)風のセットを組んだ番組
6.視聴者からのハガキ(メール)を読む番組

ざっと、こんなところでしょうか。

あの長寿番組は「ラジオ」の要素だらけ


そしてこれらは複合的に組み合わさっていることが多いですね。
思えば『笑っていいとも!』(1982-2014 フジテレビ)の「テレフォンショッキング」。芸能人がお友達を紹介して翌日出演するというシステムですが、これはもともと『いいとも!』開始前に、TBSラジオがやっていた番組(しかも同じ昼の番組)のコーナーを、そのまま使わせてもらったそうです。
もちろん「いいとも!」の名物プロデューサー、故・横澤彪さんが挨拶に出向いたそうです。

そして、番組のホスト・タモリさんもラジオ出身。
『オールナイトニッポン』で人気者になりましたが、決して万人受けするタレントではありませんでした。昨今は自分の若い頃を「今でいう、江頭2:50のようだった」と振り返るタモリさんですが、80年代、ニッポン放送は夕方の時間にタモリさんを起用。
ここで初めて、主婦層に受け入れられることで、その後の『笑っていいとも!』につながったといいます。
つまり、出演者・企画に「ラジオ的」な要素を、昼のテレビにがっつり持ち込んだ番組として『いいとも!』が始まったのです。

「トークを主体とした番組」は、単に芸能人がお喋りをする番組以外も、ラジオの匂いがするもの、いっぱいありますよね。BS局の報道番組も約2時間、政治家、財界人といった方々をお迎えして、じっくり話を聞く番組があります。地上波テレビの番組とは違った方向性が、BSの報道番組にはあるように思えます。こうした番組はテレビに背を向けていても、話の流れがわかります。

「時計代わりのテレビ」=ラジオ


見てもらってナンボのテレビではありますが、常に画面を見続けていなくてもいい。それも「ラジオ的なテレビ」といえます。
そんな思考から生まれた番組は、朝のお出かけ前の時間に数多く生まれました。そのうちのいくつかは長寿番組として君臨しています。

かつて『ズームイン!! 朝!』(1979-2001 日本テレビ)は、80年代中盤の一時期、キャスターの徳光和夫さんのテーブルに「時刻をしゃべる時計」が置かれていました。中継先を呼び出す前などに、徳光さんが時計を押すと「シチジ、ジュウキュウフンデス」という具合。これもまた、テレビをつけていれば時間教えるよ、というサービスだったのでしょう。
こうした試みは、今でもエレクトーンを演奏する女性が時間を告知する『おはよう朝日です』(大阪・ABCテレビ 1979-)もそうですし、TBS系の『おはよう700』(1976-1980)でも、チャイムの音とともに時間を伝えていました。

そう考えると、テレビの中にあるちょっとした部分に、言うなれば「ラジオのエキス」があるのかもしれません。

シャレオツ先行とあの番組。


逆に「見た目がラジオ」というのが「ラジオブース(スタジオ)風のセットを組んだテレビ番組」です。この連載の初回にも書きましたが、80年代後半から90年代、民放FM第2局が開局した頃は「FM=オシャレ」のイメージが根付いていました。
とはいえ、ラジオスタジオというか、アメリカ西海岸のカフェのようなスタジオセットといった雰囲気の番組も多かったと思います。まぁ、シャレオツ先行だったのでしょう。

「ラジオのサテライトスタジオ風」にセットを組むテレビ番組もありました。2000年代初頭まで、いや、最近でもそんな番組を見たような気がしますが、そういうヴィジュアルが流行した時代もありましたね。
ガラス張りのスタジオの後ろに街の風景が映って、そこに司会者がいれば……あ!思い出した。そうですよ、ねぇ、この地方の皆さん!
 

河野虎太郎(放送作家)
徹夜仕事になると某ブランドのスーツケースのことを考える。「この年齢なら、買ってもいいでしょう」とか独り言も多くなるが、今の所は踏みとどまっている。
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