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【エッセイ】寝坊と関ヶ原と朝5時のニュース

この記事、冒頭に【エッセイ】ってあるんですよ。

エッセイ…

俺はエッセイストですか。よくわからないけど、玉村豊男的な。
軽井沢に居を構えたり、ワイナリーを手がけたり、今後はそういう方向を目指さないといけないわけですかここは。
そうなるとまずは何をすればいいのですか。あれですか「銀座で知られる作家」ですか、いま話題の。それは作家ですかライターですか。
俺は誰にケンカを吹っかけてるんですか。こちらはCBCラジオです。

生憎、軽井沢も銀座も縁がなく、強いて言えば十条銀座商店街(東京都北区)くらいなもので、仕方なくこうして名古屋からエッセイを発信していますが、皆さまお元気でしょうか。だからデータ入稿だよこれは。

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人の数×任意の整数nくらい寝坊がある


前回は、番組の収録時間を「17時開始」を「午後7時」と間違えてしまって、どっしゃー!ぶっしゃー!となった私のエッセイ(うん、まだ照れがある)ですが、そのどっしゃー!のぶっしゃー!の原因でもっとも多いのは寝坊だというのが、私の調べで明らかとなりました。ソースは俺!

ある地方都市でのこと。
取材を終えて1泊、朝イチの飛行機で東京に帰るように航空券を手配していたのに、目が覚めたら離陸35分前だったり、自宅から東京駅まで40分はかかるのに、目が覚めたら新幹線の出発45分前。こういう時に、本当に家の前に出た瞬間に空車のタクシーが止まるというのは、まさに私の日頃の行いの賜物だと思われることこの上ないということが想像されますがいかがでしょうか。

1日の仕事がモーニングコールから始まる日々


でもね、寝坊。仕事相手や仲間が時間通りにこないとなると、ぶっちゃけ皆さん、怒るというよりは心配しませんか?

「すすすすみませんねねね寝坊しました!」の一言に「よかったよ、寝坊で」と安堵したことは、私も幾度となくありました。もちろんその後は、たとえ若い方であってもランチの支払いをお任せします。もちろんお支払いをなさる方は、店の前で待機していただきます。放送業界、明るく楽しい職場です。

そうなると「現地合流」という時が、やはり一番不安です。
数年前の話ですが、関西での仕事の際、新幹線は名古屋をとうに過ぎ、関ヶ原に差し掛かるというところで、仕事のパートナーたるディレクターから携帯の着信。デッキへ出てかけ直したら「ね、寝坊しました、すみません」と。

つまりです。

東京から名古屋はのそみで1時間40分、そこから岐阜羽島を過ぎて関ヶ原付近まで20分程。仕事仲間の家は東京駅から30分弱、起きて着替えて約数十分……だからアンタ何時間寝坊してんだ!しかも、この日が仕事の始まり、東京と関西の往復が続きます。
ここから1ヶ月、本番当日まで、私はディレクターにモーニングコールの電話をかける日々が続きました。

自宅から、彼女の携帯へ。大阪のホテルの客室から同じホテルの客室へ。「○○ちゃん、7時20分、そろそろ…」「ふわぁぁい…」。繰り返すこと30分。俺の一日はそこから始まります。
大阪で朝から10分刻みで「7時○分です」なんて言ってるのは俺か、テレビでエレクトーン弾いているお姉さんくらいですよ。横でウサギが踊ってないくらいの違いですよ。

朝食がっつり、言い訳バッチリ?


逆に寝坊はしない、朝、ちゃんと起きるけど、生中継が始まるギリギリまで、ホテルの朝食をがっつり食べるフロアディレクターってのもいました。
「そろそろスタジオとの中継回線繋がなきゃいけないんじゃないの?」
「大丈夫ですよ、それよりご飯もう一杯食べてから」
……いや、彼女としては段取り全て頭に入ってるから、この時間までOKってことなんですけど、さすがだなぁと思いつつも、こっちの方がやきもきしてました。
あ、彼女って書いちゃったよ!よく食うけど、頼もしい。

かつて、CBCラジオ往年の昼ワイド番組『ばつぐんジョッキー』で活躍された上岡龍太郎さん。
彼に「芸人なんだから、寝坊した時、遅刻の言い訳でも面白いことを言え」と言われたのは、弟子・ぜんじろうさん。
そして実際寝坊し、遅刻を咎められることがなかったその言い訳は「向かい風が強くて」。
もはや定番となったこの言い訳、これで「そうか、ならしょうがない」と言った上司はいるのでしょうか。

ひどい奴になるとですね「こっちが怒っている以上に、怒って職場に入ってくる」、いわゆる「被害者ヅラ」、こういう奴もいます。

遅刻してきたので文句や説教の一つでも言ってやろうと思ったら、遅れて入ってきた奴の方が
「ったく、地下鉄がさぁ、15分近くホームで止まってさぁ、乗り換えの電車も来ねぇし…どうなってんだ、何考えてんだよ。本当参ったわ、頭くるよねぇ…あ、それで会議だけど」
これは効果がありますが、1人1回しか使えないです、こんなの。大人ならやめましょう、1回で。

10年近く前、私が土曜日の朝と、日曜日の夜。2つの生放送を担当していた頃です。
当時は「土日とも生放送なんて、大変だねぇ」などと言われたものです。が、これが案外ラクというか、土曜の朝の生放送を終えれば、日曜の夕方前までは結構遊べるもので、何かあっても土曜の夜には酒を飲み、日曜の昼にはプールで泳いでという生活をしていました。

そんなある冬の日、土曜日、昼間っから痛飲して、何時に帰宅したのかわからないような状態で、ベッドに倒れこみました。

頭ガンガンの状態で目覚め、壁にかかったアナログの掛け時計を見ると「5時3分」。
ヤバイ、あと3時間で生放送が始まる、その前に俺何時間寝たんだ?とりあえず起きよう、今ならなんとか間に合う…枕元のラジオをつけると、NHKラジオ第1のニュースがちょうど終わるところ。アナウンサーが最後に「5時のニュースでした」。

そして次の番組が始まって、アナウンサーが喋り出す「おはようございます…」。
朝だ…朝だった。よかった。冬場の5時は昼も夜も真っ暗です。だから、こういうことがあるんです。

朝5時に目が覚めてしまったのは、仕事に向き合う緊張感からか、それとも加齢か。もちろん前者であると信じて疑わない、いやそうに決まっている。やっぱりソースは俺です。
異論は聞くが答えを翻したりはしない、エッセイストなので。いや、エッセイストってそういうもの?よくわからないまま、エッセイが続くのです。

河野虎太郎(放送作家)
東京在住。賞罰なし。40数年生きているが「クン付け」「チャン付け」で呼ばれることの多い永遠の若手業。クン以外だと、本サイトの編集長のように『大先生!』と呼んでくるので、中間の呼称を探している。大はいらない大は。
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