北野誠のズバリ

死亡例も。若者に広がる「市販薬のオーバードーズ」問題

京都市の女子高生が、SNSで知り合った男女に滋賀県内のアパートに連れ込まれ、薬の中毒で死亡する事件がありました。3人は「薬を摂取する仲間」で、室内からは睡眠薬や咳止めなど、100錠分の空の包装が見つかりました。

近頃、悩みから逃れる目的などで、市販薬のような身近な薬を大量に飲む依存症が若者らの間に広がっています。

12月25日放送の『北野誠のズバリサタデー』では、「市販薬のオーバードーズ問題」について、本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生に、お話を伺いました。

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警察が取り締まれない

市販薬は基本的には安全な薬ですが、吉田先生いわく「どんな薬でも、飲みすぎたら危険なのは当たり前」

現在、一部の薬を大量に服用した場合に、覚せい剤や麻薬に似た作用が現れることが問題になっています。

薬が切れると禁断症状が出たり、依存症状が強くなったりします。よりたくさん使用することで、今回の事件のように死亡してしまうケースもあるのです。

「市販薬は違法薬物ではありませんので。警察が取り締まれないというのが大きな矛盾点」と吉田先生。

正しい使用量を守っていれば、もちろんこういった症状は出ません。これが臨床試験のデータとして証明されているので、市販薬として認められているわけです。
 

覚せい剤や麻薬と構造がほぼ同じ

実は市販薬の中には、覚せい剤や麻薬などと化学構造が似ている成分が含まれているものがあります。

吉田先生によると、覚せい剤に似ているのは風邪薬に入っている「メチルエフェドリン」。これは気管支に作用して、咳を鎮めて痰を排出してくれる効果があります。

風邪薬としては有効な成分ではありますが、吉田先生は学生時代、授業でこの化学式を教わった時に驚いたそうです。

「エフェドリンは、いろいろな薬に入っているありふれた成分なんですが。覚せい剤のメタンフェタミンと、ほとんど化学式おんなじ!」

この吉田先生の言葉に、「ええー!」と驚く大川豊総裁と加藤由香アナウンサー。

「メタンフェタミンに水酸基(-OH基)が1個くっついてるだけなんですよ。だから大量に飲んだら、快感を得たり、幻覚が見えたりするというのは、化学構造からしたら当然のこと」と吉田先生。
 

脳が快感に慣れてしまう

市販薬の咳止めに入っている「リン酸コデイン」は、脳の中にある「咳を出す中枢を麻痺させる」作用があります。

しかし、このわりと身近な成分であるコデインは、化学構造がモルヒネとほとんど同じなんだそう。

「だから大量に飲んだら、やっぱりモルヒネなどの麻薬と同じような感覚になる。これも当然のこと」と吉田先生。

こういった成分を大量に飲むことで、依存性が出てしまうそうです。

どちらの成分も、大量に体内に入ることで、脳が快感を覚え、その快感を再現するためにまた欲しくなります。しかも脳が慣れてしまうため、前回と同じ快感を得るには、よりたくさん飲む必要がある。これでどんどん使用量が増えてしまうというわけです。

「これは、覚せい剤や麻薬と構造が同じですよね」と吉田先生。
 

脳のシステムが破壊され異常行動に

こういった市販薬は、1か所の薬局で大量購入することはできませんが、これは薬局をいくつか回れば解決する問題。さらに、インターネットを使えばもっと手軽に入手することができます。

吉田先生によると、オーバードーズを続けると、覚せい剤や麻薬と全く同じで、脳のシステムが破壊されてしまうといいます。

通常の生活で得られる快感よりも、薬で得る快感の方が大きいため、何に対しても無気力になってしまうのです。

さらに脳の情報伝達が薬物で遮断されてしまうため、幻覚が見えたり聴こえたりする。このことで錯乱し、異常行動を起こしてしまうというわけです。
 

死亡しやすさは違法薬物よりも上

オーバードーズを続けると、今回のように死に至るケースもあります。
死亡しやすさという点では、むしろ違法薬物よりも危険といえるんだそう。

市販薬に入っているいろいろな成分が原因で、死亡してしまうこともあるといいます。

例えば風邪薬には、眠気を抑えるためにカフェインが入っています。カフェインを大量に摂取すると、不整脈が起き、死亡に繋がってしまうこともあるそうです。

「安全なものでも、たくさん飲んだら危ないってことですね」と吉田先生。

 

まずは心の傷の共感から

若者のオーバードーズは、増加しています。

若い世代は心がデリケートで過敏ということもありますが、これ以上に大きいのがインターネットの存在です。

吉田先生によると、インターネットを通じて市販薬のオーバードーズを知る機会が増えていることや、仲間同士が繋がりやすくなってしまったことが大きな原因のひとつなんだとか。

「我が子がオーバードーズかも…」と思ったときに、いきなり叱りつけたり、説教話を始めるのは絶対に×。

「ほとんどの場合、なんらかの心の傷を持っているので、まずはその悩みを聞いてあげて、その部分については共感をしてあげること」と吉田先生。

その上で病院に連れて行き、まずは内臓に異常が出ていないかの検査を受けさせることが大切です。

薬物の依存症については、愛知県や名古屋市でも電話相談の窓口があります。

「困ったら電話して相談をすることが、まず行うべきこと」とアドバイスを送った吉田先生でした。
(minto)
 
北野誠のズバリ
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2021年12月25日09時44分~抜粋

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