北野誠のズバリ

運動しながらラジオを聴くと、認知症の予防になる!?

物の名前が出てこなかったり、鍋を火にかけっぱなしにして焦がしたり、ふと「これは認知症のサインかな?」と不安になることはありませんか?

7月10日放送の『北野誠のズバリ』の「中高年よろず相談室」では、「ふたつのことを同時にできない」という悩みが取り上げられました。

北野が、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生に伺いました。

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「同時進行」ができない

59歳の女性Aさんからの相談です。

「いつもラジオを聴きながら仕事をしています。以前ならなんということもなくできていたのに、近頃、放送の内容が全くわかりません。聴きながらの作業ができなくなっているように思えます。

その他にもテレビを見ながらの読書、料理をしながらラジオやテレビなど、同時進行ができなくなってきました。

ふたつのことを平行して進める機能の低下ってあるのでしょうか。以前のようにできるには、どうすればいいでしょうか?」

確かにある年齢がくると、そういう能力は落ちる気がします。理由や解決方法について吉田先生に伺いました。
 

脳の老化とデュアルタスク

まず、ふたつのことをする時、脳の状態はどうなっているのでしょうか?

吉田先生「種類の違うふたつのことを同時にやることを脳科学ではデュアルタスク(ふた通りの作業)と言います。これは、今すごく注目を集めています。

なぜかというと、脳が老化すると真っ先にデュアルタスクが苦手になることがわかってきたからです。
脳の老化は、デュアルタスクができるかどうかが大事なチェックポイントになります」

「デュアルタスクが苦手」は脳の老化のサインのようです。
 

認知症?

年齢から考えても認知症の心配が出てきているということですか?

吉田先生「デュアルタスクが苦手になっても、そこからすぐ認知症になるということはあまりないです。

脳の老化がさらに進むと、次の段階として、軽度認知障害に進みます。それが進むと本物の認知症になります」

脳の老化は、デュアルタスクが苦手→軽度認知障害→認知症、と進むようです。
 

チェック方法

軽度認知障害とは医学的にどういう状態を指していますか?

吉田先生「これは認知症の一歩手前で、この段階で気づくことがすごく大事です。
ぜひご相談者の方もご自分でチェックしていただきたいです。

料理に専念しても手の込んだ料理が作れなくなる。途中でよく鍋を焦がす。多いのが、調味料を正しい順番で入れることができなくて、すごくまずい料理になる。
軽度認知障害になると、ものごとを順序だてて、実行することができなくなります。

チェックポイントの二つ目は、外出することがすごく億劫になる。外見にもこだわらなくなって、髪の毛はぼさぼさで着る服もなんでもいいとなる。

これは脳が衰えて、まわりのものごとに対する興味や意欲を脳が作りだせなくなるからです。

これに思い当たる人は軽度認知障害になっている可能性があるので、ぜひ病院の認知症外来で診察をうけていただきたいです」

・ものごとを順序だてて、実行することができなくなる。
・ものごとに対する興味や意欲がなくなる。

軽度認知障害にはふたつのポイントがあるようです。

軽度認知障害は治る?

軽度認知障害は、何か努力することで元に戻ることは可能なのでしょうか?

吉田先生「本格的な認知症になったら、脳をもとの健康な状態に戻すのはほとんど不可能で、現在の医学では進行を遅らすことしかできないです。

なぜ軽度認知障害が注目されているかというと、この段階だとちゃんと対策をとれば、最大41%の人がまったく元の状態に戻るからです。そうでなくても、認知症に移行するのを大幅に防ぐことができます」

軽度認知障害の段階で発見し、対策をとることが大事なのです。
 

デュアルタスクでトレーニング

では、具体的にどうすればいいですか?

吉田先生「すでに軽度認知障害になってしまった方は専門の医者の治療をうけてください」

相談者のようにそれ以前の、デュアルタスクが苦手な人はどうすればいいでしょうか。
実は、効果的な方法が解明されたそうです。

吉田先生「デュアルタスクをトレーニングとして行うということです。デュアルタスクは脳の老化に気づくチェックポイントであると同時に、脳の老化を防ぐ有力な手段でもあります。

その時大事な条件があります。日本の国立長寿医療センターが行った研究です。運動と頭を使うという組み合わせのデュアルタスクがとても効果がある、というデータが出ました。

頭と運動を使う、まったく種類が違います。異なる二つの方向から脳が刺激を受けるので脳の働きが改善します」
 

ラジオを聴きながら運動

ラジオを聴きながらの作業が集中できないそうですが、動く方がいいのですか?

吉田先生「ラジオを聴きながら軽い運動。具体的には足踏みをする、部屋の中をうろうろ歩く、をやっていただきたいです。

ご相談者は、ラジオを聴きながら料理(仕事)をどう進めるのか。これはふたつとも頭を使うデュアルタスクだから今、できなくなっています。

ラジオで頭を使って、足踏みで運動するという組み合わせだったら絶対できるはずです。もし、これもできないようなら、それは軽度認知障害になっています」

ラジオを聴きながら足踏みする、これだけの作業が、チェックにもなり、老化防止のトレーニングにもなるのです。
 

「ながらラジオ」がいい

ラジオを聴きながらウォーキングするのはいいですか?

吉田先生「すごくいいですが注意点があります。軽度認知障害まで行ってしまっていると、ラジオに意識が全部いってしまって、まわりの安全の確保ができなくて交通事故に遭うことがあります。

『私はちょっと心配』という方は、家の中をうろうろ歩く、足踏みをする方がいいと思います」

身体を動かしながらラジオを聴くと、認知症の予防になるようです。心当たりのある方はぜひ始めてみてはいかがでしょうか。
(みず)
 
北野誠のズバリ
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2020年07月10日14時13分~抜粋

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