北野誠のズバリ

まだまだ理解が少ない「統合失調症」。正しい知識を学ぼう

統合失調症の患者と家族を記録したドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』(監督・撮影・編集:藤野知明)が話題になっています。
『シネマトゥディ』によれば、昨年12月に4館で公開されたあと興行収入が1億円を超え、24日から全国100館以上に上映規模を拡大すると発表されています。

統合失調症は100人に1人がなる病気といわれる身近な精神疾患のひとつですが、まだまだ十分に理解されていないのが実情。

そこで1月25日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が、統合失調症について解説しました。聞き手は北野誠と加藤由香アナウンサーです。

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統合失調症の症状

人間の脳は思考力や感情、行動について無意識のうちに統合していますが、その脳の働きについての統合性が損なわれて症状が出るため、「統合失調症」という病名がつけられています。

症状を大きく2つに分けると、神経の活動が過剰になりすぎて必要のない脳の働きが生じる陽性症状と、逆に必要な脳の働きができなくなる陰性症状があります。

陽性症状は「誰かが自分を監視している」と思い込んだり、「自分は神様の遣いだ」と思い込んだりするような妄想や幻覚、聞こえていないはずの声が聞こえるという幻聴が多いそうです。

陰性症状は感情が乏しくなったり、意欲が低下して引きこもるといった症状があります。

多いケースとしては、強い陽性症状が出てひと段落した後、陰性症状の時期がやってきて、また陽性症状が現れるといった、2つの症状が交互に出ることがあるそうです。

どのようにして診断される?

では、統合失調症はどのように診断されるのでしょうか?

吉田先生によれば、「問診と観察が最も重要」で、妄想や幻覚があるかどうか、行動などの変化などについて患者本人から聞くのはもちろんのこと、家族から聞いて情報を集めるのも大事だそうです。

ただ、薬物やストレスで似たような症状が出ることもあるため、医者も誤診がないようにしっかり見極める必要があるとのこと。

「早期に治療すると症状の重症化を防ぐことができ、仕事に復帰できる可能性もあるため、何よりも早期の診断が大事」と、力説する吉田先生。

ごくごく初期には軽い無気力や不眠、不安感などを覚えることがあるため、家族や周囲の人が異変に気づくことで、早期の受診につなげるのが重要とのことです。

病気になる原因

病気の原因はまだ完全に解明されていないものの、いくつかの原因は見つかっていて、環境やストレス以外では遺伝も多いそうです。

統合失調症の発症率は全体ではだいたい1%ですが、親や兄弟が発症していると10%、一卵性双生児の片方が発症していると50%にまで跳ね上がるという研究結果があるとのこと。

具体的な遺伝子の研究も進んでいて、脳の発達に関わる遺伝子が統合失調症の発症に関与しているという間接的な証拠が見つかっているそうです。

また、精神医学では脳の奥にある中脳辺縁系という部分でドーパミンの活動が過剰になることで陽性症状が出ますが、一方でまったく別の場所にある前頭前野ではドーパミンが不足することで、陰性症状が出るという間接的な証拠もあるそうです。

有効な治療法

治療法としてはドーパミンに関与する薬が有効とされ、セロトニンの神経に作用する薬も有効といわれています。

ただ、薬を飲んで効果が出るまで数週間かかることや、改善しても長期的に服薬することが大事なため、「飲んでも治らない」「治ったから飲むのをやめる」と勝手に判断して服用をやめてはいけないとのことです。

また、規則正しい生活を行なう生活療法や、カウンセリングや仕事のリハビリなども有効とされ、精神科医だけではなく心理士、看護師、ケースワーカーなど、さまざまな職種の方々や家族など、多くの方と協力して治療にあたることが効果的とのことです。

なお、統合失調症の症状が完全になくなるという患者は一部に限られるそうです。
一方で症状がコントロールされている期間、寛解を維持することで実質的に治癒に近い状態で生活できる方は、適切な治療により50%まで達します。
つまり決して対処ができない病気ではないとのことです。
(岡本)
 
北野誠のズバリ
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2025年01月25日09時46分~抜粋

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