若狭敬一のスポ音

家族とは?国家とは?映画『スープとイデオロギー』を見て思うこと

ダイノジの大谷ノブ彦が、7月2日放送の『若狭敬一のスポ音』(CBCラジオ)で、「ずっと取り上げたかった」という日本と韓国の合作映画『スープとイデオロギー』を紹介。

在日韓国人のヤン・ヨンヒ監督が撮ったこのドキュメンタリー映画、その見応えについて語ります。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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エンターテイメント輸出が国策

若狭「韓国映画は、大谷さんに散々教えられているにもかかわらず、私の中の韓国映画と言えば『猟奇的な彼女』です」

大谷「古い!」

『猟奇的な彼女』は2001年の映画。日本で初めて大ヒットした韓国映画。

ヒット作品としては、2020年のアカデミー賞を取った『パラサイト 半地下の家族』が記憶に新しいところ。
韓国は映画やKポップなどのエンターテイメントを海外に売ることを国策としています。

大谷「専門学校や才能のある人に対してはどんどんお金を費やしていく。そのやり方が成功したのが『パラサイト 半地下の家族』やBTSなどのKポップ軍団だと思うんです」

歴史の闇を映画化

大谷「韓国映画が世界でなんで人気があるかというと、自分たちの国の歴史の恥部や暗部を、しっかりエンターテイメントに落とし込むんですね」

韓国は、朝鮮半島を北朝鮮と二分することによって、同じ民族が二つの国に分かれてしまいました。
2019年の『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』という映画は、韓国の闇を描いた映画です。

韓国は、北朝鮮の核兵器開発を疑い、スパイを潜入させます。
それでわかったのが、韓国の軍事政権が国民から支持を得るために、北朝鮮にオーダーして、ミサイルを撃ってもらっていたという衝撃の事実。

大谷「昔、韓国はそういうことをやってたんだということを、いま映画にしちゃうんですよ」

済州島4.3事件

大谷「さらに軍事政権と言うのは、民衆の意見とかデモが嫌ですから、こっそり封殺、弾圧、虐殺をしてた。
これも光州(クァンジュ)という街でやってたことを『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2018年)という映画になってます」

大谷曰く、まだ劇映画で取り上げられていないタブーが1つあり、それが『スープとイデオロギー』に出てくるエピソードだそうです。

「韓国のハワイ」とか「韓国のグアム」と言われているリゾート地、済州島(チェジュド)。
1948年4月3日、この地で数万人の民間人が虐殺されたのが「済州島4.3事件」です。

母がタブーをカミングアウト

1948年、朝鮮半島が分断され韓国ができました。
当時は米ソ冷戦の時代、北朝鮮のバックにソ連が、韓国のバックにはアメリカがいた時代です。

大谷「その時の李承晩(イ・スンマン)大統領が民衆のデモ運動を鎮圧するために、この済州で、とんでもない虐殺事件を起こしてるんです。これだけは、まだ映画にできてない」

『スープとイデオロギー』は、ヤン・ヨンヒ監督のお母さんの話。
大阪に住む認知症のお母さんが、急にカミングアウトしたのが、済州虐殺事件から日本に逃れてきたという、監督も聞いたことのなかった過去。

ヤン監督は、母親を済州島に連れていくことを決意。それを追ったドキュメンタリー映画が『スープとイデオロギー』です。

戦争に思いを馳せてみよう

大谷「そうは言っても『スープとイデオロギー』は家族同士の話。
戦争で一番切ないのは、家族が引き離されること。大きな国家の力によって、小さな共同体が引き離される。
スープは、その国のご飯を一緒に食べるってことの象徴らしいんですよね」

鳥を煮込んだサムゲタンという韓国のスープ料理を、家族で一緒に食べるシーンがあるんだとか。
家族とは何か?国家とは何か?を描いたドキュメンタリーなんだそうです。

大谷「戦争で最も惨たらしいことは、個人や小さな共同体は、大きな力に対しては全く抵抗できないこと。目に見えない悲劇はたくさんあるんじゃないかな。おそらく日本にもあっただろうし。
戦争というものに、思いを馳せて欲しいな、という映画になっています」

若狭「日本にもまだまだ表に出ずに、エンターテイメントに消化されていないタブーがたくさんあるんでしょうね」

大谷「それができるようになれば、海外にもしっかり名作として出せると思うんです。海外では社会問題でも客が入るので、日本でもどんどん作るべきだと思いますね」
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2022年07月02日12時46分~抜粋

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