若狭敬一のスポ音

全部全力の村田。顔で投げる東尾。昭和の投手は完投を目指した

元中日ドラゴンズ監督で野球解説者の山田久志さんが、5月7日放送の『若狭敬一のスポ音』(CBCラジオ)に出演しました。

6日に行われた阪神-中日戦で10回完封を果たした中日・大野雄大投手。
一方の阪神・青柳投手は負けはしましたが、こちらも完投しました。

先発ピッチャーが最後までマウンドを降りない完投の美学について、山田さんが語りました。

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先に降りた方が負け

先発投手は100球が目途というのが今の風潮ですが、昭和の時代は完投するタイプのピッチャーが多くいました。

元西武ライオンズのピッチャー東尾修さんをテレビで観た時のことを話す若狭敬一アナウンサー。
その時、東尾さんが語っていたのが、「我々の時代のピッチャー、特にエースは途中でマウンドを降りる、つまり完投しないことは恥だった」だそうです。

この言葉には山田さんも納得。

山田「恥っていうのは負けたってことなんですよ。途中で降りるってのは負けなんです。
例えば先発、西武ライオンズ東尾。阪急ブレーブス山田。先に降りた方が負けです」

監督に自分の気持ちを表す方法

山田さんと東尾さんがいたパ・リーグはDH制。
セ・リーグのようにピッチャーに打順は回ってきません。2対1や3対2のように僅差の投手戦になると…。

山田「監督も代えるに代えられないんですよ。代えたら、なんで代えなきゃいけないんだってグラブ投げるし」

若狭「監督に悪態じゃないんですか?」

山田「悪態じゃないです。私の気持ちを表した」

若狭「(爆笑)」

山田「その時の気持ちを素直に表現する」

それがグラブを投げることだそうです。

競り合わないと負ける

山田「東尾投手に負けたとか、村田兆治に負けたとか、次のピッチャーに代わったっていう悔しさ全てが入って、グラブをベンチに叩きつける。もちろん自分への悔しさもですよ」

東尾さんが言う「恥」を解説する山田さん。

山田「大変でしたよ。彼らと投げ合うのは。失投したり、得点されたら負けだもん」

西武の東尾投手やロッテの村田投手に、前半で2~3点取られたら、完全に逃げきられてしまうんだそうです。

山田「最後まで計算されながらやられるから、ずーっと競っていかなきゃダメなの」

下位打線はパパッと

こちらの打線を計算しながら…ということは完投を目指すピッチャーにはペース配分があるのでしょうか?

山田「ああいうピッチャーはペース配分なんかできませんよ。ただバッターによっては、とにかく一球で仕留めよう。二球ぐらいで仕留めたいということはある」

若狭が見た番組でも、東尾さんは山田さんと同じことを言っていたそうです。
下位打線の時は、三振を取るより、シュートとスライダーで早くバットに当てさせて、終わらせていたんだとか。

山田「私も一緒。長打の心配のない人は、真ん中へピュッと落とすんだ。するとショートゴロ、セカンドゴロ」

下位打線は一球で終われば最高。理想は一人のバッターを2~3球で終えることだそうです。

山田「なので、あるイニングは投球数が一桁。8球とかで終わるイニングがどっかに欲しいの。完投の多い人は、そういうペース配分は考えてるだろうね」

ちなみに4番打者の落合博満さんともなると、ピッチャーには最低でも5~6球は投げなければいけなかったそうです。

兆治の全部全力

元ロッテのエースでダイナミックな「マサカリ投法」で知られる村田兆治さんですが、非常に球数が多かったそうです。

山田「彼はまさに全力。全部全力だから。よくこんなに投げれるなっていうぐらい投げる。そして走るのも、ピッチング練習も何から何まで全力」

全部全力の村田さんはマウンドの歩幅も豪快でした。
ステップが、山田さんより靴一足分ぐらい大きかったんだとか。

東尾さんは顔も怖い

一方、最初に名前が出た元西武の東尾さんの武器はシュートボール。

山田「東尾投手の場合はね、右バッターは大変だったと思う」

右投げの東尾さんが投げるシュートは、右バッターの胸元や膝元に食い込んでくるような軌道になります。
右バッターに対してのシュートは内野ゴロで打ち取るケースが多い球種です。

山田「またシュート投げる時ね、怖い投げ方するんだ。顔で分かるんだもん」

山田さん曰く、東尾さんのシュートは「顔が向かってきそうな感じ」だったそうです。

絶妙な投球術

山田さんの説明によると、右投手がシュートを投げる場合、プレートの一塁側を踏んで、体を開きながら投げると投げやすいそうです。
最近のわかりやすい例として、阪神の西勇輝投手を挙げました。

しかし東尾さんは身体を開かず、プレートの三塁側を踏んで投げていたんだそうです。

山田「東尾君は速くて144~145キロだった。でも普通のピッチャーじゃやれないことをやってた。だから、あのスピードでも、あれほど勝てたの。スライダーも二種類投げてたね。縦にピュッと落ちるのと、滑るのとね。このコントロールがまた微妙なんだね」

スライダーがあるからこそ、逆方向へ変化するシュートが活きたわけです。東尾修さん、通算251勝。野球殿堂入りしています。

山田「シュートあるでしょ?右バッター、こうなってるから、そこへピュッと。そんで顔がカーッと来るから、おおおーっとなる」

最後は、東尾さんの投球術のすごさを擬音で表現する山田久志さん。
個性の強い昭和の大投手たち。それぞれに完投ができるだけの武器があったのでした。 
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2022年05月07日12時45分~抜粋

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