若狭敬一のスポ音

ものづくりの原点を問う話題作『映画大好きポンポさん』

映画好きでもあるダイノジの大谷ノブ彦が、現在公開中のアニメーション映画『映画大好きポンポさん』(平尾隆之監督)について語りました。

「2021年を代表するアニメーション作品」と絶賛する大谷です。
7月10日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』から。

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ボソッと言われた一言

開口一番「ものを作るということはどういうことか?」と問いかける大谷。

若手時代に、銀座七丁目劇場で初めて単独ライブが決まり、その告知をした時のことが忘れられないそうです。

銀座七丁目劇場は、吉本興業が東京進出のため1994年から1999年、東芝銀座セブンビルの中に作った小劇場で、若手芸人がしのぎを削る場でした。

大谷「毎晩寝ないで稽古してます。こんだけやってるんで、面白いと思うんで来て下さい、みたいなことを言ったら、その時司会だったぐっさん(山口智充)が『練習の量は関係ないよ』みたいなことをボソッと言ったんですよ。それがすごい残っちゃって」

「頑張ったこと」=「面白いもの」ではないということです。

大谷「それに費やした時間は、結局作り手のエゴであって、できたものがどうか?という非情なものなんですよ。この感覚を、七丁目のちっちゃい劇場で体感できたのは良かったと思います」
 

作り手側から見た映画

近年、映像作品を作る側を客観的視点で描く作品が増えています。
例えば『カメラを止めるな!』(2017年 上田慎一郎監督)は映画を作る側の話。
また大童澄瞳原作のアニメ『映像研には手を出すな』は、アニメーションを作る側の話で映画化もされました。

『映画大好きポンポさん』は杉谷庄吾さんの漫画が原作の90分の作品。
舞台は、架空の国の架空の場所、ニャリウッドというところ。ポンポさんは映画プロデューサーの女性です。

大谷「ポンポさんの助手みたいので、ジーンという監督がいるんですね。このジーンがほぼ主役です。
ポンポさんから言われ作った15秒のCMが評価されて、『MEISTER』という映画の監督に抜擢されるんですよ」
 

深いテーマ

ジーンが監督となり、『MEISTER』の撮影が進んでいきます。
伝説の俳優が復帰したり、新人女優を抜擢したりと映画制作あるあるみたいなエピソードがありつつ、仲間と一緒に撮りあげた『MEISTER』の「シーン」が溜まっていきます。

大谷「この映画の肝は後半、ジーンが一人で編集するシーンなんですよ。仲間と一生懸命作った素材を切っていかなきゃいけない。お客さんは、ジーンが仲間とどう撮ったなんて知らないわけですから」

話を聞いていた若狭敬一アナも「これは深いな~」と思わず唸ります。

大谷「物を作るっていうことは?誰に届けるのか?ジーンが確信して成長していく話なんです。面白いです」
 

ミニシアターで見た映画

大谷が東京へ出てきた1990年代はミニシアターが流行っていたそうです。
旧ソ連、フィンランドなど世界中の映画が上映されており、これって誰か理解できるの?というほど作家性が強い映画が多かったんだとか。

大谷「デヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』を見た時に、これを良いと思ってる奴は地球にいるんか?でもデヴィッド・リンチは、それを撮りたくて撮りたくて、たまんなくて作ってます」

『イレイザーヘッド』は、デヴィッド・リンチ監督が仲間たちと資金を出し合って、5年がかりで制作した作品です。

大谷「こういう映画を受け止めている時に思ったのが、この映画を面白いと思っているのは世界で監督だけじゃない。俺もいるということ。
監督に、ひとりぼっちじゃないと思わせてるのって、俺なんじゃね?」
 

震災後に受けた衝撃的な言葉

ここで大谷は東日本大震災で、卒業式が中止になった立教新座高校のことを思い返します。

卒業生へ向けた渡辺憲司校長のメッセージが忘れられないという大谷。

大谷「『海に行きなさい』と最後にメッセージを出すんです。海に行って一人ぼっちになりなさい。自分がひとりぼっちだって認識した時に、横のひとりぼっちに気づくでしょうって。

つまり、人は全員一人ぼっちだって認識できた時、ひとりぼっちじゃない、みたいなことに、どえらい感動したんですよ。
それって東日本大震災以降の、日本のカルチャーとか文化的なものにものすごく影響を及ぼしてる気がします」

さらに震災後のビートたけしさんの考え方を紹介する大谷。

大谷「2万人死んだから悲劇なんじゃない。1人が2万件あったんだ。そう考えないと、俺達もうダメだって。1件が2万件あって、そこには物語がいっぱいあったんだっていう考え方に、すごいドキッとしたんですよ」
 

是非、劇場へ

最後に話は『映画大好きポンポさん』に戻りました。

冒頭で大谷が問いかけた「ものを作るということはどういうことか?」。

監督となったジーンが、「ポンポさんからもらった言葉で印象的なものはありますか?」とインタビューされる場面があるそうです。

大谷「その時に、すごく印象的な言葉を言うんですよ。2021年という時代を象徴する作品『映画大好きポンポさん』、ぜひ多くの方に見て頂きたいと思います」
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2021年07月10日12時47分~抜粋

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