若狭敬一のスポ音

洪水に備えたハザードマップ。一度は見ながら歩いた方がいい理由

東海豪雨から20年。9月11日と12日、CBCラジオの各ワイド番組では「防災特集 東海豪雨から20年」と題して、防災や減災に役立つ情報を放送しました。

12日の『若狭敬一のスポ音』では、「水害に対して私たちにできることは?」をテーマに、気象予報士の沢朋宏アナウンサーに聞きました。

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東海豪雨の時の空模様

沢「あの時は、秋雨前線が日本列島にかかっていて、沖縄の辺りに台風があったんです。普通の台風ならばそこまでのパワーはないんですが、大型で非常に強い勢力のせいで、名古屋にまで暖かく湿った空気を流れこませるパワーがあったんですね」

そのため断続的に入道雲が発生して雨が降り続きました。積乱雲が線のようにどんどんと並んで、次から次へやってくる「線状降水帯」が発生した状態だったそうです。

「20年前、『線状降水帯』という言葉はなかったんです。なので、東海豪雨は、なんだこれは?とずっと言われてたんですよ。もしその言葉が20年前にあれば、注意喚起の方法がもっと変わっていたかもしれません」
 

20年で設備も充実

大きい川に小さい川が合流する場所で、小さい川の方が、大きな川の高い水量に負けて水が逆流して溢れることを「バックモーター現象」と呼びますが、この言葉も20年前は一般的ではなかったそうです。
当時の水害の一部は、このバックウォーター現象によるものでした。

「あの時にはなかったものが、20年の間にどんどん言葉が名付けられたり、もしくはいろんなことが改良されたり、変わってまいりました」

気象現象の解明だけでなく、防災設備も変わりました。例えば庄内川と庄内川水系の新川では、堤防を強くしたり川底を掘り下げるなどの工事が行われました。
また、道路や公園の地下に貯水池も建造されているんだとか。

「名古屋市のホームページにある貯水池一覧を見ると、スクロールするほど多いんです」

これらの貯水池は、降った雨を一気に庄内川に流すのではなく、いったん地下のタンクに溜めて、じわじわ流すための設備なんだそうです。
 

自助・共助・公助

最近与党幹部が話したことでも注目を集めている「自助・共助・公助」という考え方があります。
沢アナによれば、近年では防災の「備え」にも当てはまるのではないか、と言われているそうです。

「自助」は自分でできること。
「共助」は町内会や近所の人たちと手を繋ぎあってできること。
「公助」は自治体などの公の機関にしてもらうこと。

公助は水害対策工事がこれにあたるでしょう。
では「自助」、つまり自分でできる備えはなんでしょう?

代表例として、非常用持ち出し袋がありますが、沢アナは、この20年で大きく変わったというハザードマップに注目しました。
 

意外と気づかないのが職場周辺

沢「自宅の近辺のハザードマップは見たことがあるとして、職場の周りのハザードマップって、恥ずかしながら見たことがなかったんです。
よく言われるのが職場近くの駐車場に停めておいた車が冠水しちゃったなんてこと」

自宅近辺に加えて、職場近辺のハザードマップを見ておくことを勧める沢アナ。
その例として出したのは、CBCラジオがある名古屋市中区のハザードマップ。

白がベースになって浸水の深さによって色分けがされています。黄色なら50センチ 、緑なら1メートルの浸水。そこからは1メートル刻みに5メートルまで、水色、紫、ピンク、濃い紫とかなり詳細に示されています。

沢「例えば5mだと3階建てでも逃げなあかんよねとか、3mだと2階でも厳しいなぁとか、そういう目安にしてもらおうということなんです」

名古屋市中区は街の真ん中というイメージがありますが、ハザードマップを見ると意外に50㎝の浸水エリアが広がっています。

若狭「もう勤め20年以上ですから、CBCの場所もわかってるんですが、びっくりしたのは、すぐ横の東新町の交差点辺りが緑で塗られてるんですね」

若狭敬一アナが驚いたように、東新町交差点付近は1m浸水するとあります。東海豪雨の時もかなり早く冠水したポイントでもあります。
 

ハザードマップは毎年更新される

このような浸水想定区域や避難場所を示したものが、洪水ハザードマップです。

沢「これ実は、相次ぐ水害を受けて、今から15年前に水防法という法律が変わりました。それから5年かかって、今から10年前に今の浸水想定ができました」

しかしそれ以来、浸水想定は変わっていないそうです。それでもハザードマップには「令和元年8月現在」の表示。つまり浸水想定は変わらないのに、毎年ハザードマップが作り替えられているんです。

毎年ハザードマップを作り替える理由を、名古屋市の防災危機管理局地域防災室の伊藤さんに聞きました。

伊藤さん「色の塗られた想定自体は法律の改正がないので変わらないんですけれども、避難所の情報が載っておりまして、名古屋市ですと避難所が毎年増えております。そういった情報を、毎年毎年更新しております」

名古屋市では、各地域の施設管理者との承諾を得ながら、避難所の拡充を進めているそうです。
 

必ず最新版を

名古屋市中区のハザードマップを見ると、右下あたりに避難所一覧があります。
中区の場合、23までナンバリングされた各避難所が地図上に表示されています。これが毎年更新されるのです。
名古屋市はホームページにアップして、誰でもダウンロードできるようになっています。

沢「毎年更新するほど、そんなに避難所が増えるのって思いません?例えば私立の学校さんが校舎を建て替えて、お願いしたらOKで増える。
でも逆に減ることもある。例えばコミュニティセンターが老朽化のために閉鎖になったり」

しかも建物がなくなるならわかりますが、避難所としての指定が解除されただけで、老朽化した建物がそのまま残っている場合もあります。

古いハザードマップを見て避難すると、その場所が閉鎖されていることもあります。
だからこそ、常に最新版のハザードマップを用意することが重要です。
 

実際に歩いてみよう

名古屋市防災危機管理局の伊藤さんは「冷蔵庫に貼っておいたりとか、いつでも目に付くところに置いていただくのが一番いいかなと思います」と語ります。
ハザードマップは家の中の一番目に付くところに貼っておいて、こまめに確認しましょう。

沢「私からの提案としては、ハザードマップを手に、家の周りを1回散歩していただくと良いかと思います」

自宅に一番近い緊急避難所を知っていても、実際ハザードマップを見ながら歩いてみると、ここは黄色で表示されているから大雨の時は通れない、ということに気づくこともあります。

沢「いつまた東海豪雨の再来があってもおかしくありません。時間がある時に、そういうことを確認しておくことが、私たちができる備えなんじゃないかなぁと思います」

ハザードマップは名古屋市では各区役所で配布されています。その他の地域の方は、各自治体へお問い合わせください。  
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2020年09月12日15時17分~抜粋

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