若狭敬一のスポ音

日本人で初めてアメリカ野球殿堂に?山田久志が語る山森雅文のスーパープレー

ニューヨーク州クーパーズタウンにある野球殿堂博物館。
ここに日本人として初めて展示された選手をご存知でしょうか?
それが阪急ブレーブス(現・オリックス・バファローズ)の山森雅文さん。

山森さんはメジャーリーグに渡ったわけではなく、日本における阪急時代のファイン・プレーが本場アメリカで注目されたのです。

3月14日放送の『若狭敬一のスポ音』(CBCラジオ)では、チームメイトだった野球解説者の山田久志さんが、「塀際の魔術師」と言われた山森さんのエピソードを語りました。
聞き手は若狭敬一アナウンサーです。

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塀際の魔術師

「おぉっ、山森ぃ~!」

山森さんのプロフィールを聞いて感嘆の声を上げる山田さん。
山森さんは1960年11月26日生まれの山田さんの後輩。
1978年のドラフト会議で阪急ブレーブスに4位指名され、熊本工業高校から入団しました。

人呼んで「塀際の魔術師」。フェンス際でのプレーが際立った選手でした。

「話がちょっとそれて申し訳ないけど、そろそろナゴヤドームもやるべきじゃない?」

山田さんは「塀際の魔術師」山森さんの話題に入る前に、ホームランテラスの話題に。
どういうことでしょう?

野球の醍醐味がない

「(スタンドへ入らずに)跳ね返るのが多いこと多いこと!」

ナゴヤドームは広すぎて、ホームランを打つのは外国人だけ。ホームランを狙えないと、ホームランバッターが育たないんだとか。

「ホームランがないと野球の醍醐味がない。そういう面では、私はナゴヤドームを少し狭くする派」

ホームランテラスの中は、ブルペンにしてピッチャーの投球を見せるもよし、観客席を作るのも良し、だそうです。

そして、フェンス際のホームランかどうかの微妙な当たりを外野手がジャンプして捕る「見せ場」にも繋がります。
 

完全に上がってる

まさに、その「見せ場」でアメリカ野球界が注目したのが、1981年9月16日に行われた阪急対ロッテ戦です。

1回の表、ロッテの2番、弘田澄男選手が打った打球はレフトへ。
この打球を山森さんがなんと、金網によじ登り、半身の体勢でキャッチしたのです。

山田「半身じゃないのよ。逆シングルで捕ってるから、右足をポッとフェンスの上にあげて、手を伸ばして、もう(スタンドに)入ってる打球を捕ったの」

右投げで左手にグローブをはめていた山森さん。
正確には、捕球は逆シングルですが、フェンスの上にあげた脚は左足でした。弘田選手の打球は見送れば完全にホームランでした。

このプレーのフェンスが実は当時の呼び名で「ラッキーゾーン」。現在のホームランテラスなのでした。
 

アイツ、何やってんだ?

「金網に引っ掛けたんじゃないのよ。完全に上にあがってるの…それがすごいっていうの!」

実はその試合で登板していた阪急のピッチャーが、誰あろう山田久志さんだったのです。

「あ、弘田にやられた、と思ってバッと見たら、山森が追っかけてるんで、何やってんだ?アイツと思った」

打たれた感覚で完全にホームランだと思って諦めていたそうです。

「やられたわと思って見たら、アイツがフェンスにあがってて、こう上にあげてんのよ。マウンドからはよくわからなくて、何やってんだ?と思ったら、捕ってたんだよ」
 

山森さんだけじゃない

山森さんは、阪急の本拠地・西宮球場で、どれぐらいの歩幅でフェンスに近づくか、金網の構造上、どこか引っ掛けて登ることができないか、を練習していたそうです。

実はその練習を指示していたコーチがいたのです。

「大熊(忠義)コーチ。大熊さんがコーチになって、どこの球場行っても、みんなに練習させてた」

あの世界の盗塁王、福本豊さんもフェンスにあがって捕球するプレーをしていたそうです。
西宮球場で行われた1974年のオールスターゲームでのこと。
福本さんは田淵幸一選手(阪神・当時)のホームラン間違いなしの打球をフェンス際で捕っています。

「あれ、練習のおかげだよ」
 

忍者みたい。アホやなぁ

東京ドームの前身、後楽園球場で練習していた時には、傷がつくので怒られたそうです。

山田「あそこは、コンクリート系でちょっと硬かったの。それが危ないという理由で変わったんですよ」
若狭「ラバーっぽくなったんですよね」

山田「だから、それで練習しだした」
若狭「よじ登りやすくなったんだ」
山田「俺らから見たら忍者みたい。そんな打球、1年間に1本や2本もないのにアホやなぁって思ってた。でもそれをやる。だから阪急ってチームは面白かったのよ」
 

フェンスに上って殿堂入り

山森さんのこのフェンス際のプレーは、なんと日本人として初めてアメリカ野球殿堂で展示されています。

「捕ったその一球の大ファインプレーで、今、クーパーズタウン行ったらあるんだよ。私も見てきたけど。そこに『ピッチャー山田』って書こうと思った。それだけすごいプレーなんだ。ホントにすごいプレーなんだ!」

興奮気味に語る山田さん。

「よほど普段からタイミングとか打球とか練習してないことには、そういうプレーは生まれない。山森…思い出すね」

3~4年に一度飛んでくるかどうか?という打球のために積み重ねる練習。それが球史に残るスーパープレーを生むんですね。

「一番惨めなの知ってる?よじ登ったけど、ボールが前へ落ちるってやつ(笑)」

ちなみに前述のナゴヤドームのホームランテラスについては、導入が検討されているそうです。
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2020年03月14日13時16分~抜粋

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