若狭敬一のスポ音

「ほぼ想定通り」。ドラフト会議後、全球団ほぼ同じコメントなわけは?

プロ野球ドラフト会議が10月17日に迫ってきました。

9月28日放送のCBCラジオ『若狭敬一のスポ音』には、元中日ドラゴンズ監督で野球解説者の山田久志さんが出演。
自身の経験を踏まえ、ドラフト会議当日の監督の動き、そして心理について解説しました。

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見てるとドキドキするけど

山田「最近は、いろんなチームが自分のとこのドラフト1位を公表するじゃない。アレ、良いことですよ。シークレットもなかなか面白いんだけどね。
ああいう風に公表して、あそこにチーム代表者が並んで、誰が1位を引くかって見るのは本当にドキドキするよね」

実は現地でくじを引く当事者となるとそれほど緊張しない、という山田さん。
「あそこに行ったら、くじだからしょうがないや、と思って度胸が座るんだよ」と経験を語ります。

下着は白

山田さんのドラフト経験は,中日の監督に就任した年の2001年と翌2002年の2回。
ドラフト会議当日、監督や球団スタッフはどう動いているのでしょう?

山田「前日にスカウトの人と会って確認作業に入る。他の11球団の情報を全部集めて、照らし合わせて、これでいいな?これでいくぞって」

当日の朝はシャワーを浴びて、買ったばかりの下着に着替える、と続ける山田さん。

山田「下着は白。とにかく白!ネクタイはドラゴンズのブルーカラー。
私と一緒にやった、あの佐々木恭介。彼が監督時代、中日に入った福留を引いた時は赤褌だから」

験担ぎも人それぞれです。

不思議な縁

山田監督のもとで打撃コーチを務めた佐々木恭介さんは、近鉄の監督を経験しています。
監督に就任して早々の1996年のドラフト会議には、山田さんが語ったように赤褌で臨みました。
福留孝介選手を7チームが1位指名で競合。見事、交渉権を獲得しましたが…。

山田「よっしゃー!って言って、入ってくれるつもりだったのが、入ってくれなかったっていうね…」

福留選手の希望は中日か巨人。そのためあえなく断られた近鉄。
結局、福留選手は日本生命に入り、翌年に中日入りを果たします。

時は巡って佐々木さんは中日ドラゴンズで山田さんの下、打撃コーチに就任。当時、中日で不振だった福留選手を復活させるという不思議な縁がありました。

ドラフトは情報戦

話題は再びドラフト会議当日について。

山田「野球前日に確認して、当日の朝、もう1回確認作業するんです。それほど緻密にやってるんです。
でも朝になったら情報が変わったりする。いろんな作戦で、あっちドラフト1位、変えたらしいですよって」

そして各新聞、スポーツ新聞にも隅から隅まで目を通して、本番に臨むそうです。各球団代表が丸テーブルに着きます。テーブルの上には各球団が作ったドラフト候補者リストが置かれます。

「あれに人数どのくらい書いてると思います?」と、若狭敬一アナウンサーに質問する山田さん。

「まあ自分のところで採るのが単純計算、6人だとして、掛ける12球団ですから70~80人ぐらいはリストに上がってるんじゃないですか?」と答える若狭アナ。

ほぼ正解のようですが、球団によっては100人ぐらい上げているところもあるんだとか。

隣のリストを覗きたい

会議が始まり、選手が指名されるごとにリストに線を引いて消していくというアナログな作業。

山田「それで残った選手と、自分とこのチームの希望選手と照らし合わせて、あの会議にいる5~6人で、こっちがいいか、あっちがいいかって話し合ってる」

若狭「テーブルの距離って微妙に近からず遠からずじゃないですか。他球団の丸テーブルの会話って聞こえるんですか?」

山田「聞こえない。全くわからないです。本当はテーブルの上の紙を覗きたいぐらい。
あの時の雰囲気はなかなかいいよ。これで本当にいいんだろうか?って、みんな、最後の最後まで迷ってるもんね」

独特の緊張感が好きという山田さん。

山田「だから割り切ってる時の方がいいですよ。今年はピッチャーで行くとかね。このピッチャーを獲られたらこっちのピッチャーを獲るという、チームの方針がしっかりしてる時のドラフトは、そんなに迷いはない」

球団のコメントの意味

ここで若狭アナが質問。

「よくドラフト後の取材で、監督やスカウトの人に聞くと『今年のドラフトは良かった。ほぼ想定通りだった』と、どの球団も同じようなコメントを出すんですが、腹の中では計画と違ってたな、とか、本当にシュミレーション通りにいったとか、あるんですよね?」

山田「シュミレーション通りにドラフトがいくってことはありえない。『本当はこの選手が獲りたかったけど、私どもは全く不満はありません』って言うのは絶対ウソ。そりゃそうだよね?あれは入って来てもらう選手へのチームとしての気遣い」

しかし、良かったと言っておかないと、入ってくる選手にも失礼であり、選手だけじゃなく選手を送り出す親御さんもいれば、チームの監督、高校や大学、社会人と様々な繋がりがあります。

山田「これからのこともあるしね」
若狭「今年は残念だった、みたいなこと言うと、何だと?となりますよね」

例えば若狭というピッチャーと山田というピッチャーがいたとします。本当は若狭を1位指名して獲りたかったのですが、競合して、抽選で負けてしまいました。しかし山田が獲れた場合…。

山田「『うちのチームでの評価は、二人とも同じでした』とね」
若狭「なるほど。それよく聞く~」
山田「あれは、今度来ていただく選手に対しての気遣い。ホントは獲りたかったんだよ」

くじに負け続ける恐怖

もし抽選に負け、負け…と続いてしまうと、スカウトの背筋が凍るんだとか。

山田「慌てるんですよ。冷静に次の選手を探せなくなるっていうか、チームの方針があるんだけど、それが崩れてしまう時がある。チームにいる選手とダブってもいいから獲ってしまえ、となる」

例えば、サードには高橋周平がいるから5~6年は獲る必要はないかもしれないのに、サードを指名してしまうそうです。何やらパニック状態になるそうで…。

山田「この選手を獲られたら大変だから、うちが獲ってしまえ、となってくる。ドラフトは、これからのチームを作るために大事なんですが、作戦も大事だっていうことですよ」

とは言え、くじは運次第。監督が下着にこだわるのもわかります。
(尾関)
 
若狭敬一のスポ音
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2019年09月28日13時17分~抜粋

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