競歩日本代表・丸尾知司選手が10/14放送の『若狭敬一のスポ音』に出演しました。
今年の世界陸上の競歩で入賞した丸尾選手は、愛知県東海市在住。2020年の東京オリンピックなど今後の活躍に注目が集まっています。
今回の放送では競歩の面白さ、難しさ、そして自身の選手歴を振り返りました。聞き手はCBCの若狭敬一アナウンサーです。
東京五輪の先も見据える競歩日本代表・丸尾知司選手
丸尾選手はこんな人
丸尾知司選手は1991年11月28日生まれの現在25歳。
京都出身で、洛南高校から、びわこ成蹊スポーツ大学、そして去年から愛知製鋼に所属し、現在は愛知県東海市に在住。8月に行われた世界陸上ロンドン大会では5位入賞しました。
洛南高校というと、男子100メートルで日本史上初の9秒台に突入した桐生祥秀選手の先輩ですか?
「入れ違いなんですけど、私が教育実習に行った時に、ちょうど桐生君がいました」
丸尾選手、実は中高の保健体育の教員免許を持っているそうです。
そんな丸尾選手が陸上を始めたきっかけは?
「父親と一緒にマラソン大会に出たんですけど、それがすごく楽しくて。それからずっとその大会に出てました。父親と一緒に走ったのがきっかけです」
高校時代は怪我の連続
箱根駅伝に憧れて、京都の名門・洛南高校に入りますが、怪我の連続でした。
「ずっと怪我で、走れた日なんて数えるぐらいです。痛いと思わなかった日がなかったです」
そして高校2年生の12月、手術を要する大怪我をしてしまいます。
「怪我の連鎖が続いてて、最後に左膝の分裂膝蓋骨という、左膝のお皿の骨が欠けてしまって、それを摘出したんです。当時は本当に辛くて、歩くこともできずに車椅子生活でした。手術後は何もできなかったので、本当に辛かったですね」
やっぱり競歩はイヤ
当時は駅伝で走ることを考えていた丸尾選手。競歩と出会ったのは、大怪我をする半年前、高校2年生の5月のことでした。
「箱根駅伝に出たいという夢があったせいで、競歩に前向きにならなかったんです。顧問の先生に『歩き方が綺麗だから、競歩をやってみたら?』って言われたんですけど、やっぱり駅伝で活躍したい、という思いが強くて」
とりあえず競歩は始めたものの、前向きになれないままやらされてる、という感覚で過ごしていたそうです。
そこで先に書いた大怪我をしてしまったわけです。
陸上の神様が教えてくれた
恩師から、ある言葉を貰ったという丸尾選手。
「膝を手術して、松葉杖をついて高校に行った時に『枯れても腐るな』という言葉をいただいたんです。木は枯れても、また生えてくるけど、腐ったらもう生えてこないんだよ、という風に。まだ丸尾の根は腐ってないからって、元気をいただきました。
歩くことさえもできなくなって、初めて気づいたんですね。自分が競歩を嫌がってたのが、本当に恥ずかしいことだって。スポーツができるありがたさを身をもって感じました」
これは陸上の神様が教えてくれたのかもしれない、と語る丸尾選手。
「本当に、なんか突き刺さりましたね。それから競歩がすごい好きになって、もう競歩で戦いたいと思って。そんな始まりがあります」
ここから、丸山選手の競歩人生が始まりました。
競歩ってどんな競技?
競歩とは歩く速さを競う競技です。オリンピック競技としては男子が50キロと20キロ。女子が20キロの距離が採用されています。
この夏、丸尾選手が世界陸上ロンドン大会で出たのは50キロです。
どちらかの足が地面に着いていなければならない。
接地した脚は地面と垂直になるまで膝を伸ばさなければならない。
この二つが競歩のルールです。マラソンと違い、これを見ている審判がいます。
抜け目のない6人の審判
競歩は審判が必要なため、2キロの周回コースで行われます。レッドカードを3枚出されると失格となります。
「審判はトラックの場合、6人立っています。本当に抜け目ないぐらいの勢いで立ってるんで怖いですよ。
自分の見られる範囲が決まってて、100メートルの地点にいて、遠くにいる選手が失格の歩きをしていると思っても、そこでは警告が取れないんです。
判断する範囲が決まっているので、自分のところに近づいてこないと、警告は取れないんです」
審判には3段階のレベルがあります。それぞれ、英語の試験と、動きを見て判断する試験があるそうです。
レベル1は、国内大会。世界大会や国際大会ではレベル3の審判がジャッジします。
レベル3ともなると、ジャッジが厳しくなるようです。
「レベル3まで行くと、普段取られてないのに取られてしまったりとか。今回のロンドン世界陸上でも、私、久しぶりに警告が1枚出ました。あと2枚出ると失格なので、凄く動揺しました。
20キロ行く手前ぐらいなので、どうしようかと思ってドキドキしますね。逆に2枚出てしまうと、割り切るしかないです。もう、ゆっくり歩いて何もしないか、割り切って攻めるか、どっちかです」
警告の前にイエローカード
「警告の前に注意のイエローカードを出されるんですよ。イエローカードがあっての警告なので、『ちょっと悪いよ』って言われた時は『確かに悪いのかな?』って思う時もありますし、『悪くないよ』って思う時もあります」
サッカーと異なり、競歩のイエローカードは何枚出てもレッドカードにはならないそうです。
「赤が3枚出ると失格なんですけど、その前にイエローカードが何枚も出されるってことは、赤が出る可能性が高いんです。気をつけないと失格になるよっていうサインです」
後半がきつい
例えば20キロぐらいで、3枚目のレッドカードが出されたとすると仕方ないですが、50キロの手前で出された日には、もうガックリですよね?
「本当にそうですね。半年以上かけてトレーニングをして、その日に向けて積み上げてきてるので、それが失格で終わるってなると、もう切なくて。後半の方が疲れてきて、フォームが乱れがちなので、失格になってしまう選手は多いですね」
逆に言えば、見る側は後半に注目と言うことですね。
競技中の選手は
世界陸上ロンドン大会で金メダルを獲得したフランスの選手(ヨアン・ディニ選手)は、かなり楽しそうにぶっちぎってましたね。
「そうなんです。あの人、我々も落ちてくるって思ったんですけど、全然落ちてこなくて。勢いで行ってしまったっていうケースですよね」
陽気に歩いてる感じがしましたが。
「スタートして、いろんな選手に話しかけて『今日、一緒にペース上げようぜ』みたいなことを言ってました。
スタートしてすぐは、外国人の選手は『行こうぜ』みたいな感じで、よく話してますね。 私はそんなテンションじゃないので、止めてくれよって思ってますけど…」
淡々と自分のペースを刻むタイプの丸尾選手です。
1周2キロを50キロ走るということは25周。試合中の心理として、途中であと何周って考えるものなのでしょうか?
「絶対考えないですね。わかってはいるんですけど、思わないようにしてます。あと20周とか思っちゃうと、辛くなるので」
東京オリンピックの先まで
3年後に控えた東京オリンピックに向けての意気込みはいかがですか?
「メダルっていうものをターゲットにして、トレーニングを積み上げて行きたいなと思います。表彰台がゴールではないですけど、目指すべきところだと思いますので、なんとか挑戦したいですね」
ゴールでないということは、東京の次も見据えているんですか?
「東京オリンピックは、まだ年齢としても28の年になるので、まだまだ、そこで引退する気はありません」と力強く言う丸尾選手でした。
(尾関)
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