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革新的な決定!名古屋家裁が同性パートナーと同じ名字への変更を認める

2024年05月18日(土)

ニュース

愛知県内に住む30代の男性が、30代の同性パートナーと戸籍上同じ名字に変更することを求めた審判を名古屋家庭裁判所に申し立て、変更が認められました。

こうした事例で名字の変更が認められたのは異例です。

5月16日放送の『CBCラジオ #プラス!』、「ニュースにプラス」のコーナーでは、「名字の変更」について、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に伺いました。

「やむを得ない事情」の場合のみ

名字が自動的に変わる手続きは「結婚」「離婚」「養子縁組」「養子縁組の解消」の4つ。

自分の希望で名字を変える手続きもありますが、そのハードルはかなり高く「やむを得ない事情がある場合」のみ。この場合は、裁判所の許可をもらって名字を変えることができます。

この「やむを得ない事情」とは、名字の変更をしないとその人の生活で著しい支障をきたす場合のこと。

戸籍のベースである名字を簡単に変えることができると、社会的な混乱をきたしてしまうため、変更はかなり難しくなっているそうです。

つまり「気に入らない」「姓名判断が悪い」という理由では、名字の変更は基本的には認められないということです。

「おおなら」さんに「大工」さん

個人の希望で名字の変更が認められるケースは、離婚後にこどもを旧姓に戻さず、結婚時の姓を名乗らせる「婚氏続称」。

また、離婚後に結婚時の名字を名乗りたかったものの、3か月以内という期間を過ぎてしまった場合。

そして、長年使用している「通称」に変えたい場合。

さらに「難しい」「変わっている」という場合なども。実際に「おなら」を連想する「おおなら」さん、特定の職業を連想させる「大工(だいく)」さんは、改名が認められました。

過去には、性的な虐待を受けていて、氏名を呼ばれることに対して耐え難い苦痛を覚えているという方が改名を認められた事例もあるといいます。

婚姻に準じる関係

現状、同性カップルの結婚は認められておらず、婚姻届けを出しても不受理となります。

ただ、同性婚に関しての裁判はかなり増えていて、今も争っている方はたくさんいるそうです。
現時点では7件判決が出ていて、うち6件は「違憲」という判断を裁判所が下しています。

今回、同性パートナーが名字を変えることを裁判所が認めた背景には、この2人が「婚姻に準じる関係にある夫婦」と判断されたことがあります。

2人は長く同居し、里子の2人を育て、2人の名義で自宅を購入。

公正証書を作成し、法律上の結婚している場合と同様の内容を定めていて、裁判所が「子育てを中心とした安定した生活を継続している」「異性婚同士の夫婦と実質的に変わらない状態にある」ことを認めています。

名字が違うことによる不利益

「やむを得ない事情」と考えられるのは、例えばこどもが医療機関に行った場合。

名字が違うと、こどもとの関係性を証明することが難しく、医療手続きへの関与をさせてもらえない可能性があります。

また、保育園で名字の違いを尋ねられた時に「性的な嗜好」というかなりプライベートな情報を明らかにしなければならず、著しい支障が生じてしまいます。

性的嗜好が少数派に属する方は、さまざまな日常の場面で差別感情や偏見に基づく不利益な取り扱いを受ける可能性に置かれています。

異性婚であればあり得ないような、意味沿わないカミングアウトを強いられる状況自体が著しい支障になるということで、今回裁判所は変更を認めました。

今後の判断はいまだ不透明

事実婚も同じですが、「家族だけど名字が違う」というのは、その理由を説明させられる多くの場面に出くわすことになります。

もし誘拐であれば当然名字は違うため、やはりその関係性を疑われることは一定程度あり得ること。

家族の証明が難しいということで、差別や偏見を受けたり、意図しないカミングアウトをさせられたり、医療機関で生死に関わるような判断場面で関与ができないといった、さまざまな不利益に直面する可能性があるということです。

過去の事例を考えると、名字の変更を同性パートナーに対して認めるのは稀なこと。

しかし、今回この判断が出たことで、今後の申し立てに対して裁判所や裁判官への影響は考えられます。

ただこの裁判に拘束力があるわけではないので、これに反する判断が下ることも十分あり得ること。今後についてはまだ不透明な状況といえます。

夫婦別姓が認められない理由

一方で、「夫婦別姓」が認められないのは保守派の反対が大きいため。

「家族の一体感や家族の絆が薄まる」「親子間で名字が違うことがこどもに対して悪影響」「通称使用で良いのでは」という反対意見が根強くあるそうです。

裁判で争った方もいますが、2015年と2021年には「夫婦同姓は合憲」と判断され、国会が急いで別の制度を導入するという動きにはなりませんでした。

ただ、1月に経団連が「選択的夫婦別姓の導入」の声を上げるなど、社会的な要望の高まりがあるので、今後の改正に多少のスピード感が出る可能性はあると考えられるそうです。

国を動かすために大切なこと

国を動かすために一番大事なのは、我々の声。

正木弁護士によると、「自分に関係ない」と傍観者になるのが一番ダメなことだと言います。

「こういうことを認めるのがなぜ必要なのか」
「当事者がどう思っていて、何を困っていて、何が欲しいと言っているのか」
「もし認めた場合、自分たちにはどういう支障が出るのか」

差別感情を除いて、実質的な部分の議論を進めていくことがとても大切だということです。
(minto)
 
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2024年05月16日07時17分~抜粋
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