ジャーナリストの池上彰さんが、6月18日放送のCBCラジオ『石塚元章 ニュースマン!!』に電話出演しました。
愛知学院大学経済学部特任教授、名城大学教授として現在3コマの講義を毎週行われているため、名古屋とゆかりがあるという池上さん。
いま最も注目するニュースについて、CBC論説室の特別解説委員である石塚元章が話を伺いました。
池上彰がいま一番注目するニュース、ウクライナ情勢と中国党大会を解説
ウクライナの形勢が不利に?
まず最も気になるのが、ウクライナ情勢。
ロシアが侵攻した直後は、ウクライナ軍の善戦が報じられていました。
しかし池上さんによれば、実はウクライナ軍は被害を公表しておらず、最近になって甚大な被害について認め始めているとのこと。
特にウクライナ東部では毎日兵士が1千人亡くなっていて、これまでに1万人が亡くなっているとのことです。
これまでは「ウクライナが頑張っている」というところをアピールしていたのですが、被害が大きくなってきたため、「とにかくアメリカやEU、NATO(北大西洋条約機構)に支援をしてほしい」ということを訴えるように、ウクライナの方針が変わってきたと言えます。
ロシアが侵攻した直後は、ウクライナ軍の善戦が報じられていました。
しかし池上さんによれば、実はウクライナ軍は被害を公表しておらず、最近になって甚大な被害について認め始めているとのこと。
特にウクライナ東部では毎日兵士が1千人亡くなっていて、これまでに1万人が亡くなっているとのことです。
これまでは「ウクライナが頑張っている」というところをアピールしていたのですが、被害が大きくなってきたため、「とにかくアメリカやEU、NATO(北大西洋条約機構)に支援をしてほしい」ということを訴えるように、ウクライナの方針が変わってきたと言えます。
戦争は長期化する?
一刻も早い終結が望まれていますが、長期化の様相を呈しているのでしょうか。
池上さん「まだまだ時間がかかりますね。『戦争を始めるのは容易いが、終えるのは実に大変』って昔から言われるんですけど、本当にその通りですよね」
石塚「仲介役がいろいろ出てきましたけどなかなか功を奏しませんし、トルコのエルドアン大統領は怪しげですもんね」
池上さん「ロシアとの関係が悪くはない一方でNATOにも入っているし、黒海に船が出入りするようなところで言えば、門番みたいな感じですから。
そういう立場をうまく使って、なんとかトルコに利益をあげようという思惑で動いてますからね」
そうすると、トルコの動きは世界平和でのためではなく、トルコの国益のためだけに動いているように感じますが、池上さんは「もちろん、平和自体がトルコにとっても利益になることは確かですからね」とまとめました。
池上さん「まだまだ時間がかかりますね。『戦争を始めるのは容易いが、終えるのは実に大変』って昔から言われるんですけど、本当にその通りですよね」
石塚「仲介役がいろいろ出てきましたけどなかなか功を奏しませんし、トルコのエルドアン大統領は怪しげですもんね」
池上さん「ロシアとの関係が悪くはない一方でNATOにも入っているし、黒海に船が出入りするようなところで言えば、門番みたいな感じですから。
そういう立場をうまく使って、なんとかトルコに利益をあげようという思惑で動いてますからね」
そうすると、トルコの動きは世界平和でのためではなく、トルコの国益のためだけに動いているように感じますが、池上さんは「もちろん、平和自体がトルコにとっても利益になることは確かですからね」とまとめました。
中国共産党大会に注目
もう1つ池上さんが注目しているニュースは、この秋に開かれる中国共産党大会。
中国の国家主席であり中国共産党トップの総書記である習近平氏は現在69歳、この秋に去就が明らかになりますが、その動向が大きく注目されています。
日本のサラリーマンに目を向けると、60歳定年が65歳まで延長されたことで、65歳まではなんとか働こうという方は増えてきています。
65歳になれば70歳まで働くのか、ここで後進に道を譲って年金生活とするか悩みどころですが、習氏は引き続き留まるのでしょうか、それとも身を引くのでしょうか。
実は中国の国家主席は任期が2期10年までと規定されていたのですが、憲法改正により撤廃されました。
中国の国家主席であり中国共産党トップの総書記である習近平氏は現在69歳、この秋に去就が明らかになりますが、その動向が大きく注目されています。
日本のサラリーマンに目を向けると、60歳定年が65歳まで延長されたことで、65歳まではなんとか働こうという方は増えてきています。
65歳になれば70歳まで働くのか、ここで後進に道を譲って年金生活とするか悩みどころですが、習氏は引き続き留まるのでしょうか、それとも身を引くのでしょうか。
実は中国の国家主席は任期が2期10年までと規定されていたのですが、憲法改正により撤廃されました。
68歳で引退のルール
しかし、総書記については党大会の時に68歳になっていたら引退という暗黙のルールもあり、習氏はこの秋の大会では引退となります。
池上さん「国家主席の期限を撤廃したということは、まだまだ国家主席でいたい。
国家主席でいるためには、共産党トップの総書記でいなければならない。
ということは、この秋の党大会で68歳で引退のルールを破って、69歳になっているのにまだやるんじゃないかということが注目されてるんですね」
この暗黙のルールは、なぜできたのでしょうか?
池上さん「中国の建国の父といわれる毛沢東が、82歳で亡くなるまでトップの座を譲らなかったんですね。
だから終身制になっていて、それはいけないんじゃないかといって、その後鄧小平の時に、68歳になったら身を引くという暗黙のルールなんですね。
つまり明文化されていないんですが、一応これまでこのルールに従ってきたんですね。
ただ、明文化されてませんから、自分が従わないと言えばそれっきりなんですね」
池上さん「国家主席の期限を撤廃したということは、まだまだ国家主席でいたい。
国家主席でいるためには、共産党トップの総書記でいなければならない。
ということは、この秋の党大会で68歳で引退のルールを破って、69歳になっているのにまだやるんじゃないかということが注目されてるんですね」
この暗黙のルールは、なぜできたのでしょうか?
池上さん「中国の建国の父といわれる毛沢東が、82歳で亡くなるまでトップの座を譲らなかったんですね。
だから終身制になっていて、それはいけないんじゃないかといって、その後鄧小平の時に、68歳になったら身を引くという暗黙のルールなんですね。
つまり明文化されていないんですが、一応これまでこのルールに従ってきたんですね。
ただ、明文化されてませんから、自分が従わないと言えばそれっきりなんですね」
主席と総書記の違い
国家主席の人気と同様に、総書記も実質的なルールを変えるかもしれませんが、別のルールの変え方もあるそうです。
池上さん「もう1つ注目されるのは、共産党のトップのことを今、総書記と呼んでいますよね。
毛沢東の時代は共産党主席だったんですね。
『主席と総書記で何が違うの?』と思う方がいらっしゃるかもしれませんけど、主席というと断トツに唯一絶対なんですね。
だから、共産党の主席だったらみんな従うしかない。
結果的に非常に毛沢東による独裁になってしまったという教訓として、現在は集団指導体制になってるんですね」
池上さん「もう1つ注目されるのは、共産党のトップのことを今、総書記と呼んでいますよね。
毛沢東の時代は共産党主席だったんですね。
『主席と総書記で何が違うの?』と思う方がいらっしゃるかもしれませんけど、主席というと断トツに唯一絶対なんですね。
だから、共産党の主席だったらみんな従うしかない。
結果的に非常に毛沢東による独裁になってしまったという教訓として、現在は集団指導体制になってるんですね」
独裁に歯止めがかかっていたが…
集団指導体制というのは、どんな制度なのでしょうか。
池上さん「当初は9人の政治局常務委員の多数決ですべてを決めるということになっていたのが、今は7人になったんですが、習近平さんはいろんなことを独裁的に決めているように見えますけれど、実際は毎週開かれる会議で多数決で決めてるんですね。
7人の取りまとめのトップが総書記でありまして、例えば7人で何か意見が分かれて4対3で習近平さんが3の側に入ったら、4人に従わなければいけないんですね。
それで、また毛沢東以来の主席の座を今回の共産党大会で復活させるんじゃないか、というのも注目の的なんですね。
主席になると多数決じゃないんですね」
民主主義は数々のルールの上に成り立っているものですが、ロシアのプーチン大統領も任期のルールを変えるなど、独裁や長期政権を狙おうとしてルールを変えると、民主主義が簡単に崩れる危険性があります。
池上さんはこれらのニュースから学ぶこととしてこうまとめました。
池上「民主主義というのは最初からルールがあって、私たちはそれを守るんだというふうになんとなく思ってた方が多いかもしれませんが、常に民主主義は新たに作り出したり、自分たちで守り続けたりしないと本当にはかないものだと思いますね。
そして、その後のルールを変えるのかどうかというのも、みんなで決めていくということですよね」
(岡本)
池上さん「当初は9人の政治局常務委員の多数決ですべてを決めるということになっていたのが、今は7人になったんですが、習近平さんはいろんなことを独裁的に決めているように見えますけれど、実際は毎週開かれる会議で多数決で決めてるんですね。
7人の取りまとめのトップが総書記でありまして、例えば7人で何か意見が分かれて4対3で習近平さんが3の側に入ったら、4人に従わなければいけないんですね。
それで、また毛沢東以来の主席の座を今回の共産党大会で復活させるんじゃないか、というのも注目の的なんですね。
主席になると多数決じゃないんですね」
民主主義は数々のルールの上に成り立っているものですが、ロシアのプーチン大統領も任期のルールを変えるなど、独裁や長期政権を狙おうとしてルールを変えると、民主主義が簡単に崩れる危険性があります。
池上さんはこれらのニュースから学ぶこととしてこうまとめました。
池上「民主主義というのは最初からルールがあって、私たちはそれを守るんだというふうになんとなく思ってた方が多いかもしれませんが、常に民主主義は新たに作り出したり、自分たちで守り続けたりしないと本当にはかないものだと思いますね。
そして、その後のルールを変えるのかどうかというのも、みんなで決めていくということですよね」
(岡本)
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