北野誠のズバリ

仕事中に階段で転んでケガ…会社が負う「安全配慮義務」とは?

『北野誠のズバリ』の「ズバリ法律相談室」コーナーでは、リスナーから届いた法律に関する疑問や質問に対し、オリンピア法律事務所の原武之弁護士が回答しています。

7月6日の放送では、飲食店などお店の中で発生した事故はどこまで補償されるのか、という話題を取り上げました。

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仕事中に転んで大ケガ

今回紹介したおたよりは、次のとおりです。

「先日新聞を読んでいたところ、こんな記事を見つけました。

店のサンダルを履いて階段を降りていたら転んでケガをしたとして、従業員が店を運営する会社に損害賠償を求めたというもの。
しかも実際に裁判所が約322万円もの賠償命令を出したといいます。

私は『いやいや、これって個人の責任でしょ?』と思ってしまったのですが、違うんでしょうか?
自分もアルバイトをしているので不安です」(Aさん)

この事故をもう少し具体的に説明すると、居酒屋の従業員さんが外履き用のサンダルを履いて外にある階段で降りる際に転んでしまい、右手や腰をケガして指のしびれなどが残ってしまったというものです。

1審では本人の責任という理由で損害賠償請求は棄却されましたが、2審では会社側の安全配慮義務違反により賠償命令が出されました。

会社が負う安全配慮義務とは?

なぜ、会社の責任が問われたのでしょうか?

原先生「サンダルのかかとやつま先が摩耗していて劣化していたと。

以前にも転んだ事由があって店長も目撃していたとか、そういう意味で危険性が予見できたであろうし、対策を全くしていなかったということで、安全配慮義務違反と認定されたということですね」

会社が安全に配慮すべきとして課せられている義務には、どんなものがあるのでしょうか。

原先生「会社に勤務していたら、労働者は当然、安全に働きたいですよね。

イメージしやすいのは工事現場だと思うんですけど、安全帯をつけたり安全講習を受けたり、安全なところで工事をするという意味で、会社に安全配慮義務が生まれる。

だんだん広く考えると、事務作業をしていても飲食店でもそうですし、移動中に有毒な物が置かれていないとか、いろんなものをやっぱり会社側が努力しなきゃいけないということで、配慮義務というのがあるんですね」

この義務は人を雇っていれば、企業であれ個人であれ負うことになり、もちろん正社員であれアルバイトであれ守られる対象になります。

お店の責任がないケースも

今回は働いている方に関する事故でしたが、もし店内に置いているサンダルが摩耗し、それが原因で転んだ場合はどうなるのでしょうか。

原先生「劣化したサンダルを使ってると困るし、油を使うところは滑りやすい状況を放置すると危険なので、そういうところはよけい慎重にいかないと、従業員だけではなくお客さんからも訴えられる可能性はあると思いますね」

同じように水が原因で滑って、お客さんから損害賠償が請求されたケースも。

原先生「スーパーで床に野菜の水があふれて、滑って転んだ事案では損害賠償が認められてますね。

水は掃除しやすいのでわかるでしょ?ということが前提だと思いますけど、一方で水でも雨の場合はスーパーでも対応しにくいので、賠償責任は否定されます」

雨の中お客さんがやってきた際に、常に床などをふいて雨水を完全に取るといったことはできません。

一方、雨以外でも損害賠償が認められないケースがあるそうです。

原先生「(床に落ちていた)天ぷらで滑って転んだ事案があって、天ぷらは見えやすいし広範囲に渡るわけじゃないから避けられただろうということで、賠償責任は否定されています」

お店側が安全に配慮する必要がありますが、自分でも注意する必要がありそうですね。
(岡本)
 
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2022年07月06日14時12分~抜粋

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