北野誠のズバリ

「食後すぐ横になると牛になる」は本当?実は認知症の危険も…

『北野誠のズバリ』、健康の悩み、夫婦の悩みなどを解決する「中高年よろず相談室」のコーナー。

9月25日の放送では、「食後すぐ寝ると牛になるの?」というAさん(45歳・女性)からの質問を取り上げました。

食後すぐに横になることは、本当は身体にいいことなのか、それとも悪いことなのか。

心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生にうかがいます。

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しびれるぐらいよくできた言葉

「お休みの日の昼食後、我が家の小学5年生の息子がすぐソファでゴロンとしました。そこで『食べてからすぐ寝ると牛になるよ』と言ったら、『本当に牛になるの?うわぁー見てみたい!』とバカにされました。

『すぐに寝ると消化が悪くなって牛のように太るのよ!』と言ったところ、『パパだって食べた後すぐに横になってるけど、太ってないじゃん!』と言われました。
食後に寝ることはいいことなのか、それとも悪いことなのか。息子に言い聞かせるためにもぜひ教えてください」(Aさん)

「食後すぐに寝ると牛になる」。

これは、医者の目で見ると「しびれるぐらいよくできた言葉」と吉田先生。

もちろん牛そのものになるわけではありませんが、「人体が牛と同じ状態になる。これが健康によくない」という点では医学的に正しいといいます。
 

胃から草を戻してモゴモゴ

牛は胃が4つあります。

草を食べると1つ目の胃で発酵させ、その後口に戻してモゴモゴ。
また飲み込んだ後は2つ目の胃に入れ、再度口に戻して…を繰り返します。

これは、草を発酵させて栄養を取るための牛独自の仕組み。

横になっていると胃に入った食べ物をスムーズに口に戻すことができるため、牛は草を食べるとすぐに横になるのです。

これは人間も同じ。
食べてすぐ横になると、胃の中身が戻ってきやすくなってしまうのです。
 

「急性食道炎」から「食道がん」へ

人間の場合は食べ物が固形物で戻ってくることはさすがにありませんが、胃液が食道の途中までかなり戻ってくることになります。

胃の壁はバリアがあるため胃酸でダメージを受けることはないのですが、バリアのない食道がこれでダメージを受けてしまうのです。

これは「急性食道炎」という病気の元であり、これを繰り返すと「食道がん」になってしまうと吉田先生。

牛は3つ目の胃までは発酵させているだけなので、草が胃から口に戻ってきても食道が痛むことはありません。

最後の4つ目の胃で初めて胃酸が出ますが、その後口には戻らず小腸へ移動する仕組みです。
牛は食べてすぐ横になっても、逆流性食道炎にも食道がんにもならないのです。
 

食べたあと横になっても太らない?

それでは、食べてすぐに横になると「太る」という説は正しいのでしょうか。

これを肯定する医師は多いのですが、この説を実証するため、スペインのグラダナ大学で実験が行われました。

座っている状態で人体が消費するのは、1.19キロカロリー。
横になった状態では、1.20キロカロリー。

このように、わずかながら横になった状態の方が消費カロリーが上回るという結果が出ました。
この差は測定誤差のため、「横になった方が痩せる」というわけではありません。
立ち上がった状態でも1.32キロカロリーと、大きな差はないのです。

つまり「食べたあとすぐに横になると太る」というのは、医学的にはウソということになります。
 

無気力症候群と認知症の危険

食後すぐ横になることで、年齢によって異なる「脳への悪影響がある」と吉田先生。

こどもの場合は「無気力症候群」となり、意欲が出なくなり、不登校になったり、引きこもりになったりするといいます。

食べてエネルギーが体内に供給されると、脳の側坐核(そくざかく)という部分が刺激を受けて、意欲が湧いてきます。

しかし食べてすぐに横になると、側坐核が強制的に働きにくくなってしまうのです。

やがて24時間意欲がわかない、学校にも行かない、外出もできないということになってしまうんだそう。

20代はこども同様、無気力症候群になりやすいのですが、中高年の場合は「認知症になりやすい」ということがわかってきました。

30代以降も脳の側坐核が刺激を受けにくくなるところまでは同じですが、この部分は脳が完成しているため、無気力症候群の心配はありません。

しかし、脳が活発に働かなくなるため老化がぐっと進んでしまい、認知症になりやすくなってしまうのです。
 

食後の理想的な過ごし方

それでは中高年にとっての食後の理想的な過ごし方はどういうものなのでしょうか。

中高年になると胃の消化能力は低下しているため、食後30分は椅子に座って安静にしているのがベスト。

ただエネルギーが体内に供給されるので、「頭だけを使って脳でカロリーを消費する」というのが理想的な過ごし方なんだそう。

例えば、ラジオはただ聴き流すのではなく、集中して聴く。
新聞やスマホでニュースを読む時も、ただ読み流すのではなく、暗記をしたり感想や論評を考えてみるのがいいということです。

脳は人体の中で筋肉を超えるほどカロリーを消費するので、「しっかり頭を使うのが一番理想的」と教えてくれた吉田先生でした。

食後は「椅子に座って脳を使う」。肝に銘じます。
(minto)
 
北野誠のズバリ
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2020年09月25日14時12分~抜粋

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