東京地裁前から、大川興業の裁判傍聴芸人、阿曽山大噴火が裁判傍聴レポートに臨みました。
東京地裁で前日行われた、ある事件の初公判の話です。
司法記者がいなかったので、阿曽山の独占報告となります。
のんきな被告人VS切れ者検察官が、まるでドラマのよう
事件の概要
東京都江戸川区の80歳の女性から、現金を騙し取ろうとしたとして、警視庁は詐欺未遂で、会社員の松野亮太容疑者を逮捕しました。
容疑は今年の5月18日、松野容疑者が仲間と一緒に江戸川区の女性に対して、金融庁の職員を名乗って嘘の電話をかけ、現金200万円を騙し取ろうとした疑い。
警視庁によると、女性は嘘の電話を信じて、5月11日と15日に、自宅に来た詐欺グループの男に300万円を渡していました。
その後、さらに追加の現金を要求されたため、女性が警視庁に相談をして騙されたふりをすることで、自宅にやってきた松野容疑者を現行犯逮捕したという経緯です。
気になるのは謎の供述
一回騙された被害者が、わざと騙された振りをして、捕まえるというパターンは結構あるそうです。
「ただ、このニュースが気になるのは、捕まった松野被告人が、犯行前日に知らない男に頼まれてやった、と謎の供述をしているところ」と阿曽山。
被告人のややこしい状況
起訴内容は、先の概要と全く同じです。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校中退後、仕事を転々としましたが、12年くらい前から妻の父親が経営している電気工事の会社で働いています。
しかし被告人は、去年から妻と別居しており、犯行時は愛人と同棲しているという、非常にややこしい状況です。
最初からすでに怪しい
被告人は取り調べに対して「犯行の前日、5月17日ですが、仕事が終わってJR千葉駅付近で買い物をしていたら、アジア系の外国人がやって来て、『何してるの?いい仕事あるよ。東京で荷物受け取るだけ』と声をかけられた」と言っています。
ちょうど仕事で東京に行く予定があり、電話番号を交換したという被告人。
そのまま被告人質問です。弁護人と被告とのやりとり。
弁護人「犯行前日、どんなことがあったんですか?」
被告「千葉駅の近くを歩いてたら、たぶん中国の人だと思うんですけど、『何やってるの?荷物受け取るだけの仕事があるんだよ』と、しつこく声をかけられました」
弁護人「で、あなたは、どうしたんですか?」
被告「いやいやいや、と断ってたんですけど、あまりにしつこいし、仕事に行くついでならいいかな、と思ってしまいました。金額は聞いてなかったんですけど、即金でもらえると言われたので、5,000円くらいもらえたらいいなと思って、電話番号の交換をしました」
なぜか、のんきな被告人
弁護人「5月17日の夜、氏名不詳者から、携帯の着信履歴が残ってますね?」
被告「荷物を受け取って欲しい、ということで、東京の住所を伝えられました」
弁護人「そこでやることなど、細かい指示はなかったんですか?」
被告「それは当日です。指定された場所に着いたら、ショートメールが届きまして、金融庁の横山という名の偽名を名乗ってくれ、と連絡が来ました」
弁護人「そのショートメール見て、どう思いましたか?」
被告「なんで偽名を使うんだろう?と、思いました」
阿曽山の再現レポートを聞いて、思わず「のんきやなあ」と笑ってしまう北野誠です。
被告人の言葉に北野誠も唸る
弁護人「80歳の被害女性と会って現金200万円です、と渡された時、どう思いましたか?」
被告「ショートメールでは、書類を受け取ると聞いてたので、なんでお金なんだろう?と思いました」
弁護人「これ、犯罪に巻き込まれてると思いませんでしたか?」
被告「かもしれないな、と思いました」
「そのセリフええわ!『かもしれないな』って。のんきやわー」と北野です。
弁護人「あなた、仕事してんのに、なんで、こんなことを引き受けたんですか?」
被告「実は、給料をもらってるんですけども、別居してる妻の方に全額行ってて、自分の方に1円も入らないんです。だから借金で生活してたので、こういうことをやってしまいました」
切れ者検察官登場
続いて検察官の登場です。
「この人、東京地裁では切れ者で、面白い人なんですけども、残り時間15分というのに『時間が足りるかどうか』って、いきなり言ってるんですよ」と阿曽山。
いろいろと聞きたいことがあるのでしょうか?
検察官「オレオレ詐欺、振り込め詐欺は、当然知ってますよね?」
被告「身内の振りをして、電話をかけるというやつですね」
検察官「他にも組織的に行われてるって、ニュースで知ってますよね?千葉駅で、話しかけてきた外国人ですけど、何を運ぶんだと言ってましたか?」
被告「ハッキリとは言ってませんでしたけど、手に持てる物だとは言ってました」
検察官「やったら、いくら報酬をくれるって言ってました?」
被告「即金だとは言ってましたけど、いくらかは聞いてないです」
検察官「そもそもなんで、あなたが東京に行かなければならないんですか?」
被告「それは、ちょっと、詳しく聞いてないです」
検察官「次の日東京で、何の荷物か分からない、しかも報酬もわからないという仕事がある。あなた、逆の立場でこれを見知らぬ人に頼みますか?」
被告「そりゃあ、頼みませんねえ」
検察官「ですよね?」
勝ち誇った顔の検察官による攻めが、ここから始まります。
みんな犯罪組織に繋がってる?
検察官「あなた、タダヒロさんって人、知ってますね?犯行の前日と犯行の直前に、タダヒロさんと電話してますけど、これ、なんですか?」
被告「今晩、メシでも食いに行こうって喋りました」
検察官「いや、その程度だったらメールでいいんじゃないですか?証拠が残らない。わざわざ電話でする。あなたにショートメールを送ってきた、指示役の男と、このタダヒロさんの通話記録が残ってるんですけど、繋がりがあるんじゃないですか?」
被告「それは知らないです」
検察官「あなたが同棲している彼女と、タダヒロさん、知り合いですよね?」
被告「面識はあるみたいですけど…」
なにやら登場人物が増えて来ました。
裁判官が放った最後の言葉
検察官「あなたの携帯に、タロウって名前で登録している人と、犯行前日に電話してますね?」
検察官のこの言葉に急に焦る被告人「いや、それは、電気工事の見積もりの電話なんですけどね」
検察官「タロウさんとのメール記録が残ってますけども、『立ってた女の人いないです』とメールを送ってますね。そしたらタロウさんが『わかりました。じゃあ今日は、なしです』と返しています。これ工事の見積もりなんですか?」
被告人の焦りはさらに高まっていきます。
検察官「『じゃあ今日は他にないですよね?』これ、どういうメールなんですか?」
被告「それは、電気工事の現場は他にないのか、ということなんですけど…」
検察官「今回と同じ、振込詐欺の受け取りを頼まれてたっていうメールじゃないですか?」
被告「いやー、あのー…」
裁判官「すいません。もう時間が過ぎたので、今日はここで終わりです」
盛り上がってきたところで、つづく
「今まで証拠がなかったけど、ガンガンガンガン攻める。ドラマみたいな検察官だった」と興奮気味にレポートする阿曽山。
裁判の展開もドラマみたいです。北野誠も気になる今後の展開。阿曽山大噴火の報告を待て。
(尾関)
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