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つボイノリオの聞けば聞くほど

4匹の北海道犬と家族三代の100年物語『光の犬』。

2018年03月25日(日)

カルチャー

1/11放送の『つボイノリオの聞けば聞くほど』では、2018年の「戌年」にちなんで、“犬”が重要なモチーフになっている小説を紹介しました。
おすすめ本ナビゲーターの高野史枝さんの登場です。

「純文学の中で、北海道の家族三代のお話なんですけれども。そこに明治から昭和にかかるまで4匹の北海道犬(ほっかいどういぬ)が関わってくるという話なんです」と語る高野さん。

北海道で暮らす4匹の犬と家族三代の物語、興味深いこの本を紐解いていきましょう。

ソフトバンクの「お父さん」


北海道の話ということで、4月に2泊3日のリスナー集会を控えているつボイノリオと小高直子のテンションもいやが上にも高まります。

北海道犬といえば有名なのが、ソフトバンクの白戸家のCMでおなじみのあの「お父さん」。
日本に昔からある、天然記念物に指定されている中型犬です。

元は猟犬のため手足がガッチリしており、無駄吠えせず落ち着いた、日本犬らしい犬とのこと。
高野さんによると「ずしっとして落ち着いて、人間よりも貫禄がある」んだとか。

今回ご紹介する『光の犬』は、枝留(えだる)という街に暮らす添島家三代の年代記。
ちなみに「枝留」は、いかにも北海道にありそうな地名ですが、実在しない架空の街です。
著者の松家仁之さんによる非常に落ち着いた文章で「読んでいるだけで心が落ち着く」と高野さん。

「本というのは大急ぎで読むクセがあるんですけれども、これだけは少し読んで『これは違うぞ。じっくり読まんといかん』。ここの場所に行った気持ちで、犬と戯れるような気持ちで読もうという風になりましたね」

高野さんにとって特別な本になったようです。

とだえる家系


スタートは明治34年、1901年。
おばあちゃんの時代から始まり、明治・大正・昭和。
1958年、孫の始(はじめ)が50歳になるまでの100年が北海道を舞台に描かれています。

「最初の人たちは8~9人こどもを産む、半分亡くす。次の人達は、3~4人こどもを産む。そのこどもたちは結婚しない、こどもを作らない、ということでその家系はなくなるという。いかにも日本の、今ありがちなお話ですよね」と高野さん。

主人公は添島家の全員であるものの、高野さんいわく感情移入しやすいのは、三代目の添島始とその姉の歩(あゆみ)であるとのこと。

それぞれの生きざまと死にざま


中学時代、ビートルズと出会った始。その人生は、ビートルズに大きく影響を受けます。
卒業時、とりあえずニューヨークに行ってみたい、とにかくジョンレノンが住んでいたダコタハウスを見に行きたい。
その1年後にジョンレノンは亡くなりますが、それを見たことが始の心の中に大きく残ります。

「いかにも歴史だなぁという感じがするんですね」と高野さん。

姉の歩は、結婚はしないと決心している天文学者。
最後にキリスト教の洗礼を受けて、30歳で亡くなります。

父は80歳を過ぎて、頑固で心を開かないまま亡くなっていきます。
「いかにも一族の話なんで。添島という姓を持つ一家が北海道で産まれて暮らして大きくなって恋をして、老いて死んでいくという。実感がこもってますよね」と、感慨深げな高野さん。

犬はわかってくれる


「ちょうど今、聞いててね。私が今度落語会でね、本格的疑似落語やろうという。『中沢家の人々』にオマージュした『つボイ家の人々』とよう似てますね」と、つボイ。

これには「上手に(宣伝を)さし挟んできますね」と感心する小高。

「さっきの北海道旅行と一緒で、イベント散りばめてやっておりますよ」

いついかなる時も、コマーシャルを欠かさないつボイ。

「100年の歴史が語られるということなんですが、誰でもがもう、自分が与えられた時間を精一杯生きて、その後必ず生を終えていくという。この事実がキチっと書き込まれているというところなんですね。それぞれの人生の中に、犬が全部関わってくる。悲しい時、うれしい時に傍らに犬があって。犬っていうのは全てこっちの心をよくわかってくれる」と高野さん。

感情を永遠に文章で残す


犬と心を通わす気持ちがよく描かれているというこの小説。
犬の描写になると冴えわたる著者の筆。

その素晴らしさに、読んでいて涙がどーっと溢れた文章もあったと高野さん。
「もう1回犬飼おうかな、でも今から犬飼って15年。持つかな」と、ブラックジョークを飛ばします。

先日、谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』を読んだというつボイ。
「あの谷崎さんの猫に対する表現というのと。今、この作者も犬が好きやろなと」思ったそう。

小高も「爪の色とか、ちょっと寄っかかられた時の重みとか。私たちなんとなく感覚だけでしか捉えられてなかったのが、文書で読むとそうそう、それ!ってと思う」と、その表現に共感したよう。

「文学って何のためにあるかっていうと、個人の中に大切なものとして残ってしまうんですけれども、消えていってしまうんですね。それを永遠に文章として残すっていうところが、改めて文学をいいなっていうのを感じた」と感無量の高野さん。

『光の犬』松家仁之・著(新潮社)2,000+税

高野さんいわく、値段の何倍もの価値があるというこの一冊。
戌年の始めとして、一読の価値がありそうです。
(minto)
つボイノリオの聞けば聞くほど
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2018年01月11日11時01分~抜粋
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