燃えよ!研究の志士たち

研究の志士たち!植物先生に訊く、今年の紅葉

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新栄トークジャンボリーでおなじみの小堀勝啓がアカデミックトークにチャレンジ!






研究者たちの個性が光ります

第66回 11月14日・11月21日
愛知教育大学 教育学部  教授
渡邊幹男(わたなべ・みきお)さん

「限りない愛情を注ぎ、植物の奇跡と不思議を伝え続ける、植物先生!に訊く、日本の紅葉!!」

ご専門は、植物分類学・多様性生物学
同種だとされていた愛知県の食虫植物・ナガバノイシモチソウが、
実は新種であることを電子顕微鏡および遺伝子レベルの研究で明らかにされたことは、世界で話題になりました。

”そもそもの紅葉のメカニズムとは?”

秋になって日照時間が減り,気温が低下すると光合成の効率が下がります。その結果,クロロフィル(葉緑体)の機能が低下して,紅葉し落葉します。
光合成効率が低下すると、クロロフィルの再生産能力が低下し分解される方が多くなり減少します。秋になって日照時間が短くなり気温が下がってくると、光合成の効率も低下し植物の水分を吸い上げる力は弱くなります。
水分吸収力が低下すると、水分が蒸発しやすく維持コストのかかる葉を落とすことをします。これが落葉です。
また,通常クロロフィルは常に分解・再生産されるが,その機能が低下すると,葉の色が黄色や赤になります。
黄色はカロテノイドの色(元々クロロフィルの緑が目立っていたいが,その機能が低下したため,一緒に含まれていたカロテノイドの黄色になる。)
赤色は葉の根本に離層が形成され,作られた養分が葉に蓄積され,アントシアンが形成され赤くなります。
黄色のカエデの仲間は糖分を幹にためるものもあります。サトウカエデです。日本ではイタヤカエデでメープルシロップがとれます。

”日本の紅葉の特徴は?”

 日本の紅葉は複数の色があるからきれいなのです。欧米では単色であるのに対して,赤・黄色・その中間のオレンジさらに常緑樹の緑もあり,多彩で美しく落ち葉になってもきれいなのです。
紅葉するのは落葉樹で,その分布は日本だけでなくヨーロッパや北米です。日本の紅葉がきれいなのは落葉樹の種類が多いからでもあります。欧米では15種類ぐらいですが,日本ではそれより10種類ぐらい多いのです。なぜ多いか?それは氷河期に生き延びたからです。日本は暖かい海岸線や地形の複雑さが功を奏して,生き残ることができたのです。まさに奇跡的なことなのです。

小堀 ②今年の紅葉第一弾はどのあたりから?
先生      紅葉は北から南に南下します。
北海道では10月中旬頃から始まり,関東では11月の中下旬頃,愛知では11月下旬から12月上旬が見頃でしょう。これは平野部で標高が高い山間部は数週間早くなります。
身近なところで見られる紅葉には黄色になるイチョウがあります。
赤くなるのはカエデの仲間やナナカマドです。
紅葉は日照量と水分量(雨の量)と寒暖差で美しさが決まります。関西は雨が少なかったので関東の方がきれいでしょう。

”近年の変化は?”

 温暖化によって近い将来紅葉が見られなくなるなんて話もあります。
紅葉は,日照量と水分量(雨の量)と寒暖差で美しさが決まります。温暖化やヒートアイランド現象などによって特に寒暖差が小さくなり色づきが悪くなっているのは事実です。特に沿岸部は暖かいため特に色づきが悪いです。でもその暖かい沿岸部があったためたくさんの紅葉する木が生き残ったのも事実です。





研究者たちの頭脳で生まれる、幾千億のインスピレーションの種。
やがて、その種がこの地球の未来を創る。

”生物多様性COP15がありました、愛知目標も含めて保護区の拡大などに関する先生のお考え”

昆明宣言である生物多様性の損失を逆転させ回復させる。そのために10年間で30%を生物保護区にする。
これは非常によいことですが,具体的にどうするか?
私の考えでは
生物多様性の場所の確保ですが確かに言うは易く行うは難しです。
現在私は環境関連と文化財の審議会の委員をしているので,天然記念物の指定の増加を目指しています。
対象は湿地です。愛知県には湧水湿地が多数ありますが,認識されていないものが多いのが現状です。ですからそれらを天然記念物にすること考えています。
文化財は指定と登録がありますが,国の法律の改正により無形文化財も登録が行えるようになり,例としては,日本茶や日本酒を今後登録にする動きがあります。
愛知県も県の登録文化財を作ることで動いています。指定に比べて登録の方が縛りも少ないので私としては湧水湿地をなるべくこの登録制度を使い県民に知ってもらうようにすることをやろうとしています。何かお墨付きをという話がありましたが,とりあえずこれがすぐにできるものだと思っています。そのために各地の調査を現在進めています。
とにかく環境省だけでやるのではなく,例えば文化庁と一緒にやることも重要です。でもお役所は横のつながりがないから無理かもしれませんね。

”温暖化、グローバル化による外来種など日本の、愛知の、植物の現状、課題は?”
市民による外来種の駆除。(例えばオオキンケイギク)
愛知の植物はまだまだわかっていないものばかりです。
湿地性のものは新種になるものがまだまだあります。
そのほかでは,
ススキは誰でも知っている植物ですが,ススキよりちょっと湿ったところにオギという植物が生育しています。
種に芒があるかないかで区別できるほか,地下茎が横に這うか株立ちかの違いがあります。
遺伝子を調べてわかったのですが,愛知の平地のススキはほとんどがオギと交雑してしまっていて純粋なススキはなくなっています。遺伝子汚染ですね。(私が解析したものはすべてでした)
山間部のススキはオギがないので交雑していないですが。
なぜそのようになったのか,原因も含めて今後調査しようと思います。
平地のススキに異変が起きている話でした。

生物多様性を含めた自然史研究の課題は,県立の博物館がないことです!



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