野球解説者の牛島和彦さんが、11月24日放送のCBCラジオ『ドラ魂キング』に出演しました。
横浜ベイスターズで監督経験があり、しかも最下位だったチームを初年度Aクラス入りさせた牛島さん。その手腕を牛島さんに聞きました。
聞き手は宮部和裕アナウンサーです。
打撃は良くても最下位
現役時代はドラゴンズとマリーンズで活躍。94年から11年間、CBC、TBS、スポニチなどの解説や評論を経て、2005年に横浜ベイスターズの監督に就任。
3年連続でリーグ最下位だったチームを、1年目からAクラスに導きました。
牛島さんが監督になる前年、2004年のベイスターズは、打撃では実績を残していたそうです。チーム打率が2割7分9厘でリーグトップ。ホームラン数2位。打撃成績の総合では1位でした。
牛島「ピッチャーが打たれる分、打たしてくれるんですよね。点取られる分、相手のピッチャーもそんなにベストピッチしてこないでしょう」
野球は単純ではない
監督就任前の球団側との会談で、打撃は良いのであとはピッチャーが良くなると上位に行ける、という話になったそうです。
牛島さんは「ピッチャーが抑えだすと打たせてもらえなくなるんですよ。だからピッチャーが良くなったからといって、上位に行けるとは限りませんよ」と答えたそうです。
実際に監督就任後、ピッチャーの防御率が1点良くなったら、チーム打率、チーム本塁打が3位や4位に下がったんだそうです。
相手もチーム事情を見て戦ってきます。単純に悪い部分を良くすれば上位に行けるというわけではないようです。
闘争心を維持する方法
牛島さんはベイスターズ初年度、チーム防御率を4.47からリーグ2位の3.68まで持っていきました。一体、何をしたのでしょうか?
牛島「僕が最初に言ったのは、カーンとホームラン打たれるじゃないですか。両膝に手を置いたピッチャーはすぐ替えるということ。
下向いて、膝に手をついたやつが、次、闘争心出せるか?って言いました」
ピッチャー出身の牛島さん、そういう時の心理もよくわかっています。
この後のベイスターズのピッチャーは、ホームランを打たれて膝に手が行きかかっても、つく前に上にあがってきたんだそうです。
牛島「膝に手をついて下を向いたら、やられたっていうことになるんで、そんなピッチャーは絶対その後のバッターは抑えられないです」
リスペクトが必要
秋季練習のある一日は、ピッチャーに野手の練習をさせて、野手にピッチャーの練習をさせたそうです。
野手には30球のピッチング練習。マウンドの傾斜で投げたことのない野手は、足腰が張ってくるそうで、どの選手も「いま何球?」と尋ねるのが、だいたい15球だったんだとか。
「君たちが一個エラーしたら、またピッチャーは、あと5球以上投げないかん。だから、そういうとこも考えてやってくれよ」と野手には言ったんだそうです。
ピッチャーにはバッティング練習。普段あまりやらないバッティング練習を続けていると手の皮が捲れてくるそうで…。
「そんな痛い思いをしてバット振ってくれてるんだぞ。だから取ってもらった点を大切に守らなきゃ」とピッチャーには言ったということです。
お互いの練習内容を取り換えてやらせたことについては、「ピッチャーは野手に対して、野手はピッチャーに対してのリスペクトがなければ、一つになれないような気がしたんです」と説明する牛島さん。
選手のケアも強化
牛島さんは選手の身体ケアも強化しました。
プロ野球は、コーチとトレーナーの立場に少し差があるそうです。
現場の中で、コーチの方が上で、医療を担当しているトレーナーがコーチに気を使うという状況だそうです。
「この選手は疲れているから、あまり使わない方がいい」とトレーナーが言っても、コーチにあまり聞いてもらえなかったりすることがあったんだとか。
それを防ぐために、牛島さんが現役時代から見てもらっている先生に来てもらって、コーチ登録したんだそうです。そうすると他のコーチと同等なので、医療の面からものが言えると言うわけです。
牛島「戦力がない分、怪我人は出せないんですよ。で、まとまらないと勝てないんですよ。それはずっと思ってましたね」
選手の適性を見抜く
伸び盛りの選手をどう育てるかにも気を使ったそうです。
牛島さんが監督になった当時、村田修一選手が6番か7番を打っていたそうです。
この時は交流戦初年度。DHで9番打たせたら、もっと上の打順で打ちたいという不満そうな顔をしたそうです。
村田選手に「9番の次、何番や?」と聞いたら「1番です」という答えが返ってきたそうです。
ここで牛島さんは「9番の次は補欠です」と答えたそうです。
その真意は?またこの時、守備が下手だと言われていた村田選手に、守備練習を勧めました。
メンタルを刺激する
「お前は打率のバッターじゃなくて、ホームランと打点のバッターなんだから、一打席でも多く立った方がいいだろう。そのためには守備を上手くなった方がいい」と村田選手に声をかけた牛島さん。
打順は選手によって適材適所があります。
村田選手を大砲と見抜いた牛島さん。DHならどこでも威力を発揮しますが、大きいのが打てなくなれば補欠行き。リーグ戦では守備が下手だと替えられてしまい、打つ機会がなくなります。
牛島「あいつ守備めっちゃくちゃ練習したから、僕は名人に頼んでグローブ作ってもらいましたよ」
そのグローブを使った村田選手は翌2006年は4番を打ったそうです。村田選手は現在、ジャイアンツの野手総合コーチを務めています。
ベイスターズの監督に就任して、選手のメンタル面を刺激した牛島さん。チームは交流戦5月からぐっと噛み合い上がっていきました。
(尾関)
ドラ魂キング
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2021年11月24日18時15分~抜粋