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中日・笠原と木下雄に「三振こそが最大の魅力」と期待する若き指導者

私、宮部和裕が大好きな2人の投手が、今季に勝負をかけている。
新型コロナ対策をとりながら、ある施設で一緒に自主トレを続けている。知る人ぞ知る虎の穴ともいえる場所だ。

このふたりの「球速」へのアプローチは、実に対照的だ。

1人は、魅惑のチェンジアップを武器に、一昨年、開幕投手の大役も務めた笠原祥太郎投手。主に直球とチェンジアップを緩急自在に操る男が、1キロでも速くとスピードを求めている。

もう1人は、木下雄介投手。常時150キロ近い快速球を持つストッパー候補が、スピードよりも、コントロールを求め、通い続けている。
そもそも、笠原投手こそ、より変化球の精度を!木下投手こそ、より高速スピードを!と、2人が求めるべきものは、逆ではないかと、勘違いしていた私に、明快な言葉を投げかけてくれたイケメン企業家がいる。

(文:CBCアナウンサー宮部和裕

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打球音が響かない施設

名古屋市守山区にあるピッチング専門アカデミー「Be an Elite (ビーアンエリート)」を開設した松本憲明さんだ。

松本さんは、愛工大名電高出身の25歳。投手として、四国独立リーグで木下と一緒にプレーし、共に勝利の方程式を担った。その後、渡米し、米球界トライアウト挑戦の際に出会ったロサンゼルスにあるピッチングアカデミー「ベイメルエリートアスレチックス」の元メジャーリーガー、ベイメル氏の指導法に感銘を受けた。現役引退、帰国後、今度は、自身が教わったノウハウを野球少年からプロ選手まで、幅広く、投手に伝え続けている。

したがって、この施設から打球音は響かない。乾いたミット音だけが、実に心地よく届いてくる。

その松本さんが、対照的な2人の投手に伝えているのは、いわゆる指導ではなく、スピードを上げるための練習法とフォーム作りだ。


 

松本さんが語る、笠原投手

松本さんは笠原投手について、こう語る。

「ウエイトトレなど、ほんと真面目で、フィジカルの数値は高いのに、股関節の回旋力をボールに活かしきれていない。このところの低迷からか、腕の振りが鈍くなっている。専用器具を使ったり、助走をつければ、この施設内で160キロ出せるんです。
その自分の腕の振りをもう一度、本番のマウンドに呼び起こして、今シーズンは投げてくれれば」

笠原投手本人も、

「自分の持ち味は何かを考えているからこそ、スピードが欲しいんです。やっぱり、相手打者に打席の中で判断する時間を与えないために球速は、必要。最速が何キロとか言うんじゃなくて」と、彼が描く手段と目的は、明確だ。

一方、木下雄介投手は、昨年、最高の沖縄一軍キャンプを過ごしたものの、打ち上げ日のラスト練習メニューでのアクシデントで、足を負傷。開幕延期期間中の必死のリハビリでシーズン中盤から、将来のストッパー候補の片鱗を見せた。何よりスピードボールとフォークの落差が魅力だ。
 

松本さんが語る、木下投手

松本さんは言う。

「木下さんは、もっともっとスピードが出ますよ。でも、全体の身体能力が高すぎて、負担のかかる箇所があります。肘が前に出て下に落ちてしまうリスクもあります。
今季、シーズンを通して活躍するためには、より柔軟性が必要です。もっと軸足を使って、そのパワーを上半身に伝えるフォームにしていかないと」

「スピードを出すカギは、一瞬の爆発力とフォームの連動性、そこからの脱力です。しかしそれは、怪我の原因にもなる瞬間。無駄な力みは、疲労や疲弊にもなるので、必要なところだけ、最大限に発揮できるようにするトレーニングをしています」

彼は、昨季、登板を重ねるごとに、より大事な局面での起用が増えていった。その分だけ、本人にとって無念さが残った登板もあったようだ。

それを振り返り、気になったことを木下本人に聞いてみた。
フォークボールを見極められて、ボールカウントが先行してしまった状況での、心理と打開策を。

木下投手は、相槌を打ちながら答えてくれた。

「そうなんですよ。1軍でのブルペン準備の回数が多くなるほど、正直、あまり調子が良くない日も増えてきました。そんな日の出番で、ボール球が先行しても、真っ直ぐの力で押せるよう、今、まさにやっているんです。カウントを整え直して追い込むことができれば、その次のフォークボールも活きてくるので」

ツーボールの不利なカウントから必要なのが、ストライクを取れるコントロール。結果スピードの乗ったストレートで取る三振こそが、求められるものなのかもしれない。
 

松本さんが描く、近未来の2人

そんなことを考えつつ、トレーニングに燃える2人を見ながら、最後に松本さんへ彼らの理想の姿を聞いてみた。

「木下さんのストレートが観たい!がために、お客さんが生観戦に来る選手になって欲しいです。笠原さんは、ドジャースのカーショウ(サイ・ヤング賞3度受賞の左腕)のように、どの球種でも三振が奪える投手になって欲しいです。そのために、2人に共通して言えるのが、三振が全てではないですが、三振こそが、1番安全なアウトの取り方であり、最大の魅力だということ。僕はその姿を見たいです」

仲良しでもプレイスタイルは実に対照的な2人。来月2月からの沖縄、自主練で松本さんと求めたものを手に、共に1軍北谷キャンプでのサバイバルに向かう。

そして、開幕。先発笠原からストッパー木下雄へのリレーで、バンテリンドームを沸かせてほしい。燃えよ!ドラゴンズ!!
宮部和裕
 
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