最強の中日ドラゴンズ応援番組を目指す『ドラ魂KING』。金曜日は、元ドラゴンズのエースでCBC野球解説者・川上憲伸がメインの『ドラ魂KING 川上憲伸 KK SPECIAL』と題してお送りします。
お相手のパーソナリティはタレントの戸井康成、宮部和裕アナウンサー、チアドラゴンズの小木曽志穂が務めます。
ドラゴンズについて様々な角度から、川上憲伸の魂のこもったメッセージをお伝えする「ケンシン・スピリッツ」のコーナー。
10/13は、翌14日(土)から始まる秋季練習・秋季キャンプの話題を取り上げました。
川上憲伸もカットボールを習得 秋季キャンプは野球人生を変える!
秋季キャンプの効果
ちなみに現役時代の川上憲伸投手は、秋季キャンプをどんな感じで過ごしていたのでしょう?
「自分が一気にレベルアップする、覚醒するのが秋季キャンプですよ。シーズンの近い春だとそういう訳にいかないんです。秋は投球フォームや打撃フォームなど、いろんなフォームの改造ができる。上投げを下投げにしてみたりだとか、硬球をソフトボールに変えてみたりだとか」
前回の放送での緊張による噛みまくり状態から一転、軽いジョークが出るほど口が滑らかな川上。
とにかく、秋はそれくらい大げさなことができる時期だということです。
ここで戸井が、リスナーからのおたよりを読み上げます。
「シーズンオフに入る前の練習なんて役に立つのでしょうか?例えバッティングで良い感触を掴んでも、オフにゴルフを2、3回やったら忘れてしまったりとか、走り込んでスタミナ付けても、年末年始の暴飲暴食でダレてしまうとか。そんな風になりませんか?」
確かに、野球解説者の中にはそういう意見もありますね。ただ、川上はこう答えます。
「秋季キャンプはそんな忘れてしまうようなレベルじゃないです。夜までみっちりですから。言い方は悪いですけど、コーチからちょっと“イジメられてる感”があります。
朝起きた時点で、もう寝ることしか考えてないくらい、練習漬け。いつ風呂に入ったとかいつテレビを観てたとか覚えてないくらい」
憲伸流カットボールの誕生
そして、単なるハードな練習で終わらせない、更に個人で何か課題に取り組んだ選手が、伸びていくと。それを体現したのが、川上憲伸。彼の代名詞とも言える必殺変化球「カットボール」を習得したのが、秋季キャンプだったのだそう。
カットボールは正式には「カット・ファスト・ボール」と言い、ストレートと球速がほとんど変わらず、ボール1個分ほどのわずかな変化をします。
右ピッチャーであれば左バッターに対しては食い込み、右バッターに対しては逃げていきます。
だからこそ芯でとらえにくく、バッターは詰まったり泳がされたりで凡打してしまうのです。
10月後半になってくると、アメリカのメジャーリーグでワールドシリーズが開催されます。それが、秋季キャンプ期間中の朝、練習に行く前にテレビをつけると放映されているのでした。
その年の対戦カードは、ニューヨーク・ヤンキースとアリゾナ・ダイヤモンドバックス。2001年ですね。
当時のヤンキースの抑え投手がマリアノ・リベラ。2013年に引退するまでメジャー歴代最高の通算652セーブを挙げた、世界一のクローザーです。彼のカットボールは“バットをへし折る電動ノコギリ”と言われるほど、とんでもなく鋭い切れ味で、マウンドではほぼこの1球種しか投げなかったといいます。
この映像を観ていた川上は「凄い球を投げとるなあ」と、チームメイトと話していました。
そこで川上は、当時はまだ主流だったVHSビデオデッキで録画し、練習から帰ってきた後に観て、「どういう風に球が曲がっているんだろう」と自分なりに研究したそうです。
そして翌日からの練習で、キャッチボールの時などに試行錯誤を繰り返しながら、キャンプ終了の1週間くらい前にようやく完成したのだとか。
しかし当時は投手と野手とは分かれてキャンプを行なっており、バッターとの対戦ができませんでした。
自分では好感触でも、実際にバッターを相手にしないと自信が付きません。
なので、カットボールを覚えた事は誰にも言わなかったそうです。
ただ、キャッチボール相手の正津英志投手(現中日ドラゴンズスカウト)が「お前の球、何か変な回転してるぞ。近くでキャッチボールすると捕りづらくて危ないわ」と言ってきたのだそう。
それを聞いて年下の川上は内心「しめしめ、それでいい。その答えを待ってました」とニヤリ。
「チームメイトでしかも先輩なんですから、もしケガをするといけないから、ちゃんとカットボールだって言っといてくださいよ!」とツッコむ戸井と宮部アナなのでした。
まさしく実りの秋
オフでは多少の暴飲暴食はあるものの、せっかく掴んだカットボールのコツを忘れないようにするのに必死だったという川上。春季キャンプまでの1ヵ月半くらいが長くて仕方なかったといいます。
そしてやってきました春季キャンプ。
序盤にブルペンで投げてみても、「何かちょっと新しい球やね」とキャッチャーの反応はやや薄め。
ところがキャンプ第2クール目の紅白戦。相手バッターは大西崇之選手(現読売ジャイアンツ外野守備・走塁コーチ)。
そこで投げてみたところ、理想通りちょっとバットの芯を外れてセカンドゴロに打ち取りました。
「ケン(川上憲伸)、今何投げとるんやお前?」といぶかしそうに聞く大西選手に、川上は内心「しめしめ」。
次、名前は失念してしまったものの左バッターの打球が、ドン詰まりだったそうです。それは川上の野球人生の中で経験したことのない打ち取り方だったというのです。
これで川上は確信しました。「ゴジラ松井さんに正々堂々と向かっていける!」
それまでは、巨人の松井秀喜選手に対し、「勝負しているように見せかけて、どのように四球にしようか」とばかり考えていたという川上投手。ここから不動のエースへの道を邁進していくこととなるのです。
宮部アナは「(四球を出そうという)本心は聞きたくなかった」と苦笑いしていましたけれども。
こういった、野球人生を左右するようなチャンスが作れるのが、秋季キャンプ。
ドラゴンズの選手には是非とも何かを掴んでほしいものです。
(岡戸孝宏)
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