CBCラジオ #プラス!

売れる車を失った?ホンダと日産の経営統合が直面する課題

12月18日、ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を開始する方向で調整していることが明らかになりました。
持ち株会社を設立し、両社を傘下に置く形を検討しているとのことです。

また、将来的には三菱自動車の参加も視野に入れて交渉を進めているとされ、今月23日にも正式発表が行なわれる見込みです。

19日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員が、このニュースについて詳しく解説しました。

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ホンダが日産を支援?

ホンダと日産の経営統合が実現すれば、自動車販売台数でトヨタ自動車グループ、ドイツのフォルクスワーゲングループに次ぐ世界3位の巨大グループが誕生します。

ホンダと日産はコメントを発表し、将来的な協業に向けた検討を進めていることを認めましたが、具体的な統合の形態についてはまだ明らかにされていません。

注目すべきは株価の動きです。東京証券取引所では日産自動車と三菱自動車の株価が上昇する一方で、ホンダの株価が下落しています。

この動きは、投資家の間で「ホンダには負担が大きいが、日産には支援となる」という見解が広がっていることを反映しているといえます。

最近の動向から見ても、ホンダが日産を支援する形になる可能性が高いとの見解が出ています。

日産には売れる車がない?

日産の2024年度上期(4月~9月)の決算では、前年同期比で93%もの大幅な減益に陥りました。これを受けて全世界の従業員数を約1割にあたる9,000人削減するとともに、生産能力を2割削減する方針を示しています。

現在「日産は売れる車がない」と言われており、車好きの山本衿奈も「日産の主要な大衆車といえばこれだよね、というのがない」と指摘。

かつての日産は技術力の高さが評価され、ケンメリ(スカイライン)、ハコスカ、シーマなど象徴的な車種で成功を収めていました。

「日産リバイバルプラン」の功罪

日産の現在の状況を考える上で、1999年に実施された「日産リバイバルプラン」にも触れる必要があります。
当時フランスのルノー傘下に入り、カルロス・ゴーン氏が立案したこの計画では、工場閉鎖や大規模なリストラ、さらには下請け企業の削減といった大胆なコストカットが行なわれました。

この計画により一時的に収益が回復し、日産は復活を果たしたと評価されましたが、その背景には多くの犠牲も伴っていました。

加えて、この成功が長期的な経営戦略につながらなかった点が、現在の苦境の一因とされています。

市場変化に乗り遅れた

日産は、車を取り巻く市場の変化に対応できず、日本のメーカーの中で最も乗り遅れたとされています。この点が今回のニュースに関連する大きな背景のひとつです。

特に、中国やアメリカといった世界の主要市場での販売不振が深刻です。中国では、国が「電気自動車(EV)」に対する補助金や支援を行ない、国内メーカーが競争力を高めています。

その影響で、日本メーカー全体が厳しい状況にありますが、日産は特に苦戦しているといわれています。

トヨタやホンダは、中国市場での不振をアメリカ市場で補う戦略を取っていますが、日産はアメリカでも十分な結果を残せておらず、「全方位的な苦境」に陥っています。

ハイブリッド軽視のツケ

この状況の背景には、前述した市場動向への対応の遅れがあります。

特に指摘されているのが、EVへの対応や研究開発投資の遅れです。カルロス・ゴーン氏の時代には、EVが次世代の主力になると位置づけられ、「ハイブリッド車(HV)」の開発を軽視する方針が取られていました。

しかし、この方針が市場動向に合致しなかった結果、競争力を失う原因になったと見られています。

一方でトヨタは、EVやHVを含む多様な車種を幅広く展開し、市場での地位を確立してきました。

特にアメリカ市場では、EV人気に陰りが見える一方で、HVやガソリン車の需要が依然として高い状況です。トヨタはこうした需要に応える車種を持っていますが、日産は中国市場とアメリカ市場の両方で苦戦を強いられています。

研究開発費削減の代償

また、研究開発費の削減も大きな要因のひとつとされています。利益確保のために研究開発への投資が抑えられたことで、長期的な技術革新が遅れ、競争力を低下させる結果につながったといわれています。

これに対し、トヨタは「研究開発投資を削減しない」ことを一貫して掲げており、将来を見据えた投資を重視しています。

日産がこの開発費を抑えるのは、カルロス・ゴーン氏の時代から続いているもの。一時的にコストを抑えて利益を確保することには成功しましたが、その結果、長期的な競争力を維持するための基盤が弱まり、現状の苦しい経営状況につながったと見られています。

売れる車が作れない体質

自動車評論家の国沢光宏氏によれば、日産では技術者が新しい車を提案しても、幹部から「それは売れるのか?」と厳しく問われることが多いとのことです。
この体質が原因で、技術者に責任が押し付けられ、新車の開発が進みにくい状況に陥っていると指摘されています。

結果として「売れる車」の開発が遅れ、現状の苦境をさらに深める要因になったとされています。

さらに、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がEV分野への進出を目指しており、「元日産の幹部が鴻海の要職に就いていることから、鴻海が日産を買収するのではないか」という噂も広がっています。このような動きが、日産にとってさらなるプレッシャーとなっているとみられます。

ホンダとの経営統合の話は、こうした厳しい状況を背景に進められており、日産が体質を改善しつつ生き残りを図る試みと見ることができます。
ただし、両社の社風の違いが課題となる可能性があり、今後の動きが注目されています。
(minto)
 
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2024年12月19日07時18分~抜粋

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