CBCラジオ #プラス!

自治体で広がりを見せる「カスタマーハラスメント防止条例」

『CBCラジオ #プラス!』の「ニュースにプラス!」のコーナーでは、光山雄一朗アナウンサーが気になるニュースを紐解いていきます。

12月3日放送のテーマは「カスタマーハラスメント防止条例」です。客からの迷惑行為や暴言といったカスタマーハラスメント、いわゆるカスハラを防止する条例が成立し来年から施行される自治体も出てきました。お客さんとして、店の従業員として、日々身近な問題です。

光山がアディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に伺います。

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カスハラとは?

カスハラとはどんなものでしょうか?

正木「法律的な定義がはっきりあるわけではないですが、お客様からの迷惑行為、いやがらせの総称をカスハラと言っています。

一応、厚労省が定義をしていて、顧客からのクレームとか言動のうち、その内容の妥当性に照らすと手段とか対応が不相当。謝罪自体を求めることはいいが、土下座を求めるなど、やり方が不相当なものがカスハラとなってきます。
それによって働いている方の就業環境が害される、強いストレスを与えるとかすごい不快感を与えるというようなものとされています」

具体的な例

正木「例えば、謝罪を求めるにあたって、長時間にわたって怒り続ける、居座り続けるというもの、謝罪文や土下座を求める、迷惑をこうむったのだから迷惑料をよこせといった不当な金銭の要求とか、暴力行為、ネットでのさらしとか悪評を流すといったものがカスハラの例です。

もちろん迷惑行為ですが、いま大事なのが従業員の方へのメンタルヘルスへの影響です。
実際カスハラによって、労働者の方のパフォーマンスとか労働意欲が著しく低下する。結果的に、企業も業務効率が下がるとか人がやめるというさまざまな悪影響を及ぼすものとして認識化されていて、いま国や自治体が対策しようと動いている段階です」

旅館業法の改正

「法律の定義はない」というのは本当でしょうか?

正木「そうです。カスハラ全体を規制する法律は現時点ではないです。ハラスメントというのはたくさんあって、たとえばセクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、育児介護などに対するハラスメント、パワーハラスメント、さまざまな職場に関するハラスメントはあり、これに関しては法律があります。

ただ、いろんなハラスメントがありますが、例えばスメルハラスメントを一般的に規制するものは存在していません。
ただ一部の業界では対応しています。

例えば旅館業法という法律があります。旅館の人はカスハラを結構受けていて、契約上ないアーリーチェックイン(早く着いたから早く入れろ)とか、うちの部屋の上下左右うるさいから客を入れるなというような方に困っていまして、旅館業法については法律を変えました。

継続して要求するような方の宿泊を拒否できる。基本的に宿泊させないといけないという義務があるという業界だったので、宿泊拒否ができるように法律を改正しました。

あと、大手の企業はカスハラ客には対応しません、という毅然とした姿勢を示しているところもあります」

クレームかカスハラか

正木「法律がないから何もできないのかというと、対応自体は可能です。ただし、違法なレベルにならないと法的な対応は難しいというのが実情です。

例えば悪質な行為に関して損害賠償請求をするとか、殴られたら暴行罪で告訴するというような、民事、刑事両方で対応すること自体は現在の法律で可能です。

ただ、クレームは企業のサービスをよくするものでもあります。だからクレームかカスハラか現場で判断して対応しないといけないけれど、それがなかなか線引きが難しい。
実際違法行為に至らないときは警察にお願いしても対応してもらえないので、現場としては対応に苦慮しているという状況です。

企業としても従業員を守らないといけない。それは労働契約上で安全配慮義務といって、労働者の方が心身ともに安全に働ける環境を作らなくてはならないという義務が企業にはあるので、カスハラに対して従業員を守るような対応を企業としてとらないといけない。これは現在の枠組みでもできます」

自治体に広がる条例

国や自治体の取り組みはどうでしょうか?

正木「国は議論を進めているところです。カスハラを法律上定義づけて、企業に労働者を守るためにこういう対策をしなさい、と定めるような法律の改正をしようと現在議論中です。

自治体でもいろいろ条例を設けようと動いていて、実際成立したところもあります。東京とか北海道とか、まだできたばかりの条例なので来年4月の施行を目指しています。なので、具体的な内容についてはまだ議論中です。

ただ基本的には理念条例で、反したからといって何か罰則が加えられるというわけではないので、実効性は疑問視されているという問題点はあります」

カスハラに対する議論はどんどん自治体単位で広がるのでしょうか?

正木「広がっています。これから規制を設けるところも増えてきますし、これからガイドラインで具体化されてきますので、みなさんも注目して、具体的にどういう内容が定められるのか十分にチェックしていただきたいです」

正当なクレームとカスハラの線引きは難しいときがあります。まずは自分がしていることがハラスメントになっていないか気をつけましょう。
(みず)
 
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2024年12月03日07時17分~抜粋

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