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書評家が分析!谷崎潤一郎『細雪』は美人4姉妹が下痢に苦しむ物語!?

水曜日の『CBCラジオ #プラス!』では、書評家の大矢博子さんが小説などおすすめの書籍を紹介します。

7月31日にピックアップしたのは谷崎潤一郎『細雪』(中央公論社)。

日本文学の名作ですが、現代では高尚でわかりにくいのでは?と敬遠する人も多いでしょう。
そこで大矢さんは、「こういう視点で読んだら面白い!」というポイントを紹介しました。

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『細雪』の背景

谷崎潤一郎は1886年生まれ、明治の終わり頃から小説を書き始めました。

有名な作品に『卍』『吉野葛』『春琴抄』『痴人の愛』などがありますが、『細雪』は1943年から1948年の、戦時中から終戦後3年目にかけて作られました。

舞台は昭和11年から16年にかけての大阪。
代々続く名家である蒔岡家の4姉妹が織りなす人間模様を軸に、昭和10年代のセレブ感溢れる上流階級の生活を当時の時制を背景にして、絢爛かつ退廃的に描いた物語です。

戦時中に連載がスタートしましたが「優美な生活の描写は時局に合わない」として軍部から掲載を差し止めされていたこともありました。

そんな『細雪』を読む際のおすすめの見方を大矢さんが2つ紹介しました。

昭和10年代の婚活小説?

『細雪』は三女の幸子が中心の話です。
4姉妹の中で最も美人の幸子は山のように縁談がありましたが、代々続く名家であり美人を自覚しているため誇りが高く、来る縁談をことごとく断っていました。

気づけば独身のまま30歳を過ぎてしまい焦りを感じていたところ、四女の妙子が駆け落ち。
結果は失敗に終わりますが、名家の娘のスキャンダルということもあり、この出来事が新聞に載ってしまいます。

しかし新聞社のミスで駆け落ちしたのが幸子だと誤報。
このせいで縁談の数が一気に減ってしまい、ようやく名古屋の名家の息子との縁談が来た幸子は、見合いの後に生まれて初めて先方から断られてしまいます。
果たして幸子は結婚できるのか…。

このように昭和の婚活の実態を知ることができる、という視点で読み進めると親しみやすいかもしれません。

美人4姉妹が下痢に苦しむ?

小説の中で美人がかかる病気は大体が結核ですが、『細雪』はそんな文学的な病気になりません。
脚気になったからビタミンBを摂る、ビフテキを食べたら黄疸が出た、ホテルに泊まったら南京虫に喰われた…とにかく病気にかかります。

さらに下巻に入ると登場人物がやたらとお腹を下します。
特に四女の妙子が大変です。赤痢にかかり、妊娠するも死産。
赤痢の下痢の描写も凄まじく、さらに死産で嘔吐した際にはどんなものが出たかを克明に、大作家が持てる比喩表現を全部注ぎ込んで描写してあるそうです。

「なんなのその情熱?ていう」と大矢さんは笑って評価しました。

もともと谷崎潤一郎は変なところに情熱を傾けた描写をする傾向にあり、『痴人の愛』では女性の足の描写だけで1ページみっちり使っているそうです。

極め付けに『細雪』の最後の文章は「下痢はとうとうその日も止まらず、汽車に乗ってからもまだ続いていた」と下痢の調子で終わります。

どれだけ下痢の描写をするんだ!とツッコミながら読み進めていくのもひとつの楽しみ方かもしれません。

現代とは文化も言葉も価値観も違うのだから、当時の人と同じ感覚で読むことが困難なのは当たり前のこと。
「ただ違う視点で面白さを見つけて読んでいくと新しい発見があり、そういうやり方で馴染んでいくと、いつの間にか本来の面白さがわかってくる」と大矢さんは語りました。
小説の読み方に間違いはないのかもしれません。
(ランチョンマット先輩)
 
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2024年07月31日08時20分~抜粋

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