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第162回直木賞受賞作  川越宗一「熱源」

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★内容紹介
・明治維新から太平洋戦争終戦までの、サハリンに生きる人々を描いた骨太な歴史小説。
・中心人物は実在の人物であるふたり。ひとりは樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で 妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。樺太アイヌの指導者として近代化や教育に尽力した人物。
・もうひとりはリトアニアに生まれたブロニスワフ・ピウスツキ。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。樺太原住民の子にロシア語や算数を教え、アイヌとも交流を持つ。
・日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
・このふたりはともに実在の人物。山辺安之助は南極探検隊の白瀬隊の一員。
★読みどころ(1)故郷を奪われた人々の描写
母国語を喋ることを禁じられたり、生まれた場所を強制的に移動させられたりして揺らぐアイデンティティを、どう守るか。異なる文化と歴史、思想を持つ者同士が、その違いをこえて共に生きる姿が感動的。今も同じようなことは起きていて、歴史を描くことでそのまま現代を描いている。
★読みどころ(2)サハリンの描写
サハリンの厳しい風土やアイヌの風俗の描写が圧巻。

まだデビュー二作目での受賞。今後に大きく期待したい作家です。

第162回直木賞受賞作 
川越宗一「熱源」
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